あるかパーラー

この世界のどこかにあるという伝説のパーラー

わたくしはその伝説のパーラーを求めて旅に出たのでございます

列車を乗り継ぎ、馬にまたがり、時に歩き通し

雨に降られ、雪に積もられ、時に大風に吹き飛ばされそうになりながら

長い長い滝や、巨大な都市や、貧しき人々、大金持ちの側を通り過ぎ

幾日も、幾週間も、幾年も旅を続け

旅の果て、世界の果てについに目的のパーラーへとたどり着いたのでございます


カランカランと鳴る仕掛けの施された扉を開き

店内へと足を踏み入れたわたくしは

さっそくマスターにフルーツパフェを注文いたしました


注文したパフェを待つ間、グルリと店内を見渡したわたくし

他にも客が居るのに気がつきました

店の隅のテーブルでは何やら会合が行われておりまして

6人の客が「ああでもない」「こうでもない」と議論を戦わせているのでございます

どうやら「六同」という会合でありまして

月曜日から土曜日まで6人の男が頭を突き合わせて話をしているのです

ちなみに、この世界に日曜日はございません


さて、

「これが当店自慢のオリジナルフルーツパフェですぞ」

マスターの言葉と共に運ばれてきた品を見てビックリ仰天!

わたくしの想像をはるかに超えたその産物は、

まさに至高のスイーツ!

その味もさることながら、その大きさ、巨大さに圧倒されまする

食しても食してもなくなりませぬ

それもそのはず

食せば食すほど、パフェの容器の下からホイップクリームが湧いて出てくるのでございます

容器とテーブルが連動し、ホイップやらフルーツやらフーレクやらが永遠に湧き上がってくるのでございます


満腹になったわたくしは

「ああ、おなかがいっぱい。もう食べられませぬ」と申し上げたところ

パーラーのマスターは、

「そうはいかぬぞ」と脅しをかけてまいりました

全てたいらげろと言うのであります

それでも、腹がはち切れそうになっておるわたくしは、

「これ以上は匙1杯も入りませぬ」と返答いたしました

そこで店のマスターは、

「では、この店で働くか?それともお前も巨大パフェの一部となるか?選ぶがよい」

と、問われたので…

わたくしは迷わずパフェの一部となり、現在にいたるのでありました


そんな店あるか?パーラー



※今回の詩は、天才詩人ナスカーチャさんの「アルカパーラー」というシリーズを模し、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」の文体を取り入れ、エッセンスに安部公房を振りかけて作ってみました。

ヘイヨーさんが「ナスカーチャさんのアルカパーラーと同じタイトルで書いたらどうなるかな?」という実験作にございます。

「六同」という単語は元の一連の詩にも登場します。

ぜひ、原典もご確認ください。



noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。