物語上のチェックポイントを通過する人生
22歳の4月になって、あの人はフリースクールの先生になり、青年は相変わらずフラフラと暮らし続けていました。
ただし、来年の2月に行われる演劇の内容を決め、完成まで持っていくという大きな目標はあります。
キザオ君と立ち上げた劇団は、キャパ150人程度の小劇場でしたが、次は500人以上は入れる大きなホールなのです。
それとは別にボランティアに参加することになってしまいました。なんと、あの母子寮のボランティアです!
ボランティアのメンバーが集まる会合にひょっこり参加した際に、流れでまんまと新年度のボランティアリーダーに抜擢されてしまったのでした。
「あの人に会えるかな~」と思って、フラフラ会合に行っちゃったんです。それが失敗でした!
事実、会えはしたんですけど…あの人は4月からフリースクールで働くので、当然、毎週木曜日のボランティアには参加できません。なのに、やりたくもない青年の方が母子寮の子供たちの遊び相手をまかされてしまったのです。
完全に矛盾してます!矛盾しているのだけど、それこそが青年の人生そのものでした。
小学校の時、好きだった女の子。彼女はクラスで嫌な役があると、決まって一番最後にそっと手をあげるような子でした。そんな性格だったからこそ、好きになったとも言えます。10年以上の時を経て、今度は青年がその役回りを演じてしまったのです。
※この時に登場したエピソード
…とはいえ、仕方がありません。いざやるとなれば、全力を尽くすタイプ。「マスター・オブ・ザ・ゲーム」の能力が働いていることもあり、毎週木曜は再び母子寮に通うことに決めました。元々、子供たちを遊ぶこと時代は好きでしたし。
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母子寮のボランティアには、千葉県の短大から大学生の女の子たちが参加していました。その内の1人に「美浜さん」という子がいました。
他の女の子たちが休んでいる日も、美浜さんだけは欠かさず子供の遊び相手のボランティアに参加してくれて、結構助かっていたのを覚えています。なので、青年と美浜さんとは、なんとなく仲良くなっていきます。
ちょっとここで、またややこしいお話になるのですが…
青年には奇妙なクセがありました。「生存戦略」と表現してもいいかもしれません。現実の生活がつまらなくなると、空想世界に逃げ込み、さらに「空想世界の物語」と「現実世界の出来事」を重ね合わせてしまうのです!
そうやって、退屈な日常をまぎらわせていたんですね。
この時の青年は、その行為を「チェックポイントを通過する」と表現していました。頭の中に浮かんだ「物語上のエピソード」を現実世界で探し当て、実際に経験する。すると、チェックポイント通過です。新たなチェックポイントを探して、人生という名の旅は続きます。
この時、青年の頭の中には「例の空想世界の物語」が展開していました。
伝説の悪魔マディリスは、魔界に暮らす闇の住人です。
ところが、ある時期、天界に通い天女たちと暮らしていたことがありました。なぜ、そうなったのかはよくわかりません。明らかに矛盾した行為でしたから。
けれども、この時の経験が、新たな能力を発現させます。元々、闇の魔法を極める人生を歩んでいたのに、全く逆の「光の魔法」すら身につけてしまったのです。
こうして、闇と光、相矛盾する両方の能力を同時に扱えるようになってしまいました。それにより、さらに高度な呪文の数々も開発できるようになっていきます…
そう!この瞬間、青年はチェックポイントを通過したのです!
ちなみに、美浜さんのコトは心の中で「メリッサ」と呼んでいました。メリッサは、物語上でも少し特殊な状況に位置しています。
魔界には、何人もの魔界の住人や魔女たちが住んでいました。
魔女の中でも特に飛び抜けた個性を持った3人は「3人の魔女」と呼ばれています。「3人の魔女」は、歴史上何度が登場しますが、そのたびにメンバーが入れ替わっていました。
メリッサは「3人の魔女」の1人に入っていません。そもそも、魔界に属していたかどうかも怪しいところ。魔界に出入りしながらも、別の世界からやって来ていたふしがあるのです。
美浜さんは、この条件に一致してしまったのです!
ちなみにこの時に存在していた3人の魔女はそれぞれ「ボリジ」「マジョラム」「ローズマリー」という名前でした。(「3人の魔女」に関しては、いずれ詳しく語ります)
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。