人と人ならざる者の間にある深い深い溝
青年はここ半年の出来事を振り返り、自分の行いをかえりみました。そうして、時間差で自らの犯した罪の大きさを知り、選択したルートが誤りであったことを実感したのです。それにより、青年の心は砕け散りました。
でも、この瞬間、セーフティ・デバイス(安全装置)が発動しました。心のある部分は粉々に破壊されたのに、別の領域は残されていたのです。
「人として幸せになれないなら、別の存在になればいい。人知を超えた大いなる存在に」
心の中に声が響き渡ります。
「神にも匹敵する能力を持ち、神に仇なす者。そういう存在になればいい」
青年が14歳の時より心の底から憧れていたモノがなんだった思えていますか?
そう!伝説の悪魔!
最初、それは空想の世界の存在に過ぎませんでした。単なるイメージ。物語の中の登場人物。
けれども、あまりにもあまりにも強く強く願い続けたために、その存在は現実を侵食し、大きな影響を与え始めます。
「夢はかなう。信じ続ければ!思考は現実化する!」
まさに、そういうコトなんです。
読者のみなさんには信じられませんか?
でも、実際にあるんです。そういうコトが。どんな突拍子もない夢だって、心の底から信じ続ければ現実にかなえられてしまう。世界って、そういうところなんです。
もしも…
もしも、あの時。青年が選んだ「理想の人」と結ばれていれば。「世界で一番大切な人」「お互いがお互いを信頼し、尊敬できる人」そんな人と一緒になることができていれば。その後の人生は、全く違ったものになっていたでしょう。
でも、現実は違っていました。「世界で一番大切な人」は彼を裏切り、他の男の人と去っていってしまいました。よりにもよって、一番一緒になってもらいたくなかった人と…
だから越えられたんです!決して越えることのできない「現実と空想の壁」を!
だから満たせたんです。絶対に満たせないはずの「最後の条件」を!
伝説の悪魔マディリスになる最後の条件。
「人」と「人ならざる者」の間には、絶対に越えられない深い深い溝のようなものがあって、それは人間性を捨てなければ飛び越えることができない。青年には、そういう直感がありました。
この瞬間、その条件を満たしてしまったんです。
皮肉な話ではありますが、それにより命を救われました。
「人としての幸せを諦め、絶対無敵の孤高の存在になること」で、青年はその人生を長らえられたのです。
自ら命を絶つこともなく、お酒にも薬にも頼ることなく、たったひとりで孤独に生き続け、戦い続けることができたのです。
そうして、復讐を誓います。「この世界そのものを滅ぼす」という形で。
自分も、自分の周りにいる人たちも全部含めて、何もかもを吹き飛ばすつもりでいました。それこそが、あらかじめ示唆されていた物語だったからです。
物語の中で伝説の悪魔マディリスは、口癖のように何度も何度もこう語ります。
「我と我に関わるもの全て含めて。滅ぼしてみせる!この世界そのものを!」
※次回、物語は1度、未来に飛びます
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。