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いきなりマンガを描いたら、描けちゃった

さて、マンガの学校に通い始めた青年でありましたが…

学校に通ってくる生徒達には2種類いました。1つは「すでにマンガを描いた経験があって、技術をより極めていきたいタイプ」であり、もう1つは「生まれてこの方マンガなんて描いたことはないけど、ゼロから学びたいタイプ」

青年はもちろん後者の「全くの未経験者」でした。前者である「経験者」は、ある程度の技術やアイデアがあり、中にはファミ通で4コママンガを連載しているプロのマンガ家までいました。


青年には、絵やイラストに関して、2つの思い出がありました。

1つ目。小学校の時、部活を決める際に「イラスト部」に入りたかったのに、シャイな性格な為、自分から勇気を出して手をあげることができなかった思い出。

この時は最後の2人まで残り、「イラスト部」「音楽部」どちらかに決めなければなりませんでした。結局、勇気を出せなかったため、イラスト部には転校してきたばかりの男の子が入部することになり、残った音楽部の方に強制加入させられてしまいました。

もしも、あの時、ほんのちょっぴりでも勇気を出していれば、マンガの学校に通い始めてから役に立ったかもしれませんし、逆に小学校の時に満足してしまって「マンガを描こう!」なんて思い立ちもしなかったかもしれません。


もう1つの思い出は、高校の美術の授業。

高校の時は、選択科目になっていて「書道」「音楽」「美術」の3つから1つを選ぶことになっていました。青年(当時は少年)は、迷わず美術を選びました。これは大正解でした!

おかでげ油絵の勉強をすることができ、油絵の道具を買ってもらって、わずか数枚ですがキャンバスに絵を描くこともできたからです。

そんな高校の美術の授業でのこと。ある時、何週かかけて「静物画を描く」という課題が出されました。一生懸命にがんばって8割方完成しましたが、どうにも納得がいきません。

そうして、かなりの有余をもらっていたにもかかわらず、最後の1時間になって納得のいかない絵を真っ黒に塗りつぶしてしまったのです!

「もうこうなったら、『闇夜のカラスを描きました!』と一休さんのようなコトを言って提出しよう」かと思いましたが「さすがに、それはマズイか…」と思い直し、急いで真っ暗な闇の上にリンゴが2つ入ったバスケットを描き入れました。

すると…

これが美術の先生とお手伝いのスタッフに大好評!なにしろ、このような絵を描いてきた生徒は他に誰もいないのです。他のみんなは、普通に物体を模写して提出しています。

2人して顔を突き合わせ「この子は天才ではなかろうか…?」などと相談しているのです。おかげで、その時の美術の評価は必要に高いモノになりました。こんなとこでも、イノベーターの能力が発揮されていたのですね。

青年には、こういった経験が数多く存在していました。何か「他の人と並んで素直に行動している時には全然目立たない」のに「どうしようもないくらいのピンチや窮地に陥った時、人並み外れたとんでもない力が出せる」のです。

         *

話がそれてしまったので、ストーリーを「マンガの学校」に戻しましょう。

マンガの学校では、まず基本的な道具の使い方を教えてくれました。専用のマンガ用紙があって、緑の線で「この枠の中に絵を描くように」と指示がされています。緑の線は印刷すると消えてしまうようにできていました。

必ずしもマンガ専用紙を使う必要はなく、画用紙やケント紙などに自分で枠線を引いて描くこともできます。


マンガの描き方をご存知ない方のために、簡単に説明しておくと…

「適当な紙に、ネームを切る(ネームというのは、大体のコマ割りと人物・セリフを雑に描いたモノ)」

    ↓

「マンガ専用紙にシャーペンやエンピツで下描きを入れていく(これは、かなり丁寧な絵で)」

    ↓

「均一の線が引けるペン(ロットリングなど)で、枠線を引いていく」

    ↓

「Gペン・丸ペンなどで、人物にペン入れ」
「『吹き出し』にもペン入れ」
「必要なコマに背景を描いていく」

    ↓

「原稿が乾いたら、消しゴムをかけていき、下描きの線を消していく」

    ↓

「ベタ(黒く塗る部分)を塗っていく」
「必要な部分にスクリーントーンを貼る」

…と、大体こんな感じです。


「ね?簡単でしょ?」

…と言いたいところですが、これが結構時間がかかる作業なのです。

4コママンガ1本ならば、1時間くらいで完成までもっていくことも可能ですが、週刊マンガで連載されているような作品を16ページとか24ページも描こうと思ったら、最低でも1週間。人や作品によっては1ヶ月以上かかってしまいます。


もっとも、先ほどの説明は古代のやり方なので、現在では紙にペンやインクで描くのではなく、デジタル作画が主流になってきています。

デジタル作画というのは、ペンダブレットや液晶タブレットを使い、パソコンの画面に絵を描いていくやり方です。

これならば、下描きの線を消しゴムで消す必要はありません。ベタやトーンもクリックするだけで簡単に終わらせられます。枠線や吹き出しも、最初から用意してあるものをクリックして選んでいき、大きさだけ自分で変更するということもできます。

もちろん、細かい修正は必要ですが、それでも紙にペンで描いていた時代に比べれば、随分と楽に(かつ安上がりに)マンガを描けるようになりました。

さらに、時代は進歩し、CG(コンピューターグラフィックス)を使い、絵を描かずにマンガ制作を行える時代に突入します(それはそれでまた別の技術が必要になるので、詳しい説明はまたの機会に♪)


いずれにしろ、この時の青年はいきなりマンガを描くことに挑戦したのです。簡単な説明だけ受けて、直に紙とペンでガシガシ絵を描いていきます。

そうして不思議なことに、それっぽいモノが完成したのでした!

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。