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地獄の地区ハーレム

ニューヨークってのは、何しててもおもしろい街なんですよ。

もちろん、初めての海外だったってコトもあったんでしょうけど…毎日毎日、何かしら新しい出来事や貴重な経験に出会うんです。

道に迷うこともよくあったんですけど。そのたびに、大変な目にあっちゃうんですよ。

何しろ、ホテルにたどりつけないと命の危機なんですッ!死んじゃうかもしえない!日本と全然違う国なので!

だから、ヘトヘトに疲れちゃうんです。と同時に、ムチャクチャ能力が上ががるんです。英語力もそうなんですけど、「生存本能」みたいなモノがどんどん研ぎ澄まされていきます。


ニューヨークには、ハーレムって地域があって…

「ハーレムには、絶対に近づくな!」って言われてたんです。名前からすると、「かわいい女の子がいっぱいいて、天国みたいなとこ」みたいなイメージを持たれるかもしれませんが、全く逆なんですよ!この世の地獄!

ハーレムは、主に黒人が住んでる地域だったんですけど。日本人どころか現地の人でもよく犯罪にまきこまれてて、しかも軽犯罪じゃないんです。カバン1つ盗るために、ナイフでメッタ刺しにして人が殺されたりしてるんです。月曜日から土曜日まで!

唯一、日曜日だけ安全なんですよ。なんでかっていうと、みんな教会に行くから!みんな敬虔なキリスト教信者なので、日曜日は朝から教会に通って「今日だけは悪いコトしないようにしようね♪」って気分になるんです。でも、月曜日になったら、また同じコトの繰り返し!殺人の嵐!

ただ、これって黒人の人たちが悪いわけじゃないんですよ。貧困とか環境の問題で…

みんな貧乏が悪いんや!


アメリカって、日本人が考えてる以上に、差別が激しい国で。もちろん全員が全員、差別主義者ってわけじゃないんですけど…

「レイシスト」って呼ばれる差別主義者の人たちがいて、この人たちは、もうほんと酷いんですよ。相手によっては人間扱いしないんです。

アメリカも、キング牧師とかマルコムXなんかのおかげで、「人種差別はなくなった」なんて言われてますけど、大嘘ですよ!いまだに根強く残ってるんです。

有名な「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」ってのがあって、あまりにも黒人差別が酷かったものだから、みんながバスに乗らなくなっちゃったんですよ。

おかげで、裁判上では「みんな差別はよくないです。やめましょうね♪」って判決が下ってるんですけど、実際はいまだにやってるんです。こんなの60年以上前の事件ですよ!でも、全然なくならないんです。

そんなコトもあって、当時のハーレムは地獄化してたんですよね。それでも、ジュリアーニ市長のおかげで徐々に安全になりつつある時代でした。


で、この物語の主人公の青年は、例のごとくハーレムに迷い込んじゃうんですよ。もちろん、わざとじゃないですよ。不可抗力!

その日は、1人で地下鉄に乗ってたんですけど、間違えて反対方向に乗っちゃって、125番地くらいまで行っちゃったんですよ。で、当時のニューヨークって「100番地を越えたら危険!」って言われてたんです。なのに25番地も行き過ぎちゃって、地獄の25丁目ですよ!

で、即座に「帰ろう~」と思ったんですけど。もう、明らかにヤバイ雰囲気で、すぐに立ち去らないとマズいんですよ。なので、反対方向の地下鉄に乗ることもできず、しょうがないから歩いて帰ることにしたんです。

方向はわかるんです。「こっち行けば、絶対ホテルに帰れる!」って確実にわかってるので。だから、歩くだけでいい。でも、その「ただ歩くだけ」が大変なんですよね~

なにしろ周りは黒人だらけで、見たら全員黒人なんですよ。白人すら近づかない地域!黒人同士でも血みどろの争いがよく起こってる場所!そこにひ弱な日本人が1人で歩いてるんです。だから、目立つんですよね。

しかも、悪いコトにその日は、おぼっちゃまみたいな服着てたんですよ。新宿で買った新品の明るい服。「パーティーにでも行くの?」みたいな格好。

みんなくすんだほこりっぽい服着てるのに、1人だけ明るくて新品の服着てるんです。「いかにも襲ってください!」って姿でしょう?

もちろん、いい人もいっぱいいるんですよ。たとえば、ある黒人と目が合って「ヤベッ!」と思った青年は、とっさにカメラを取り出して、その辺を歩いてるハトを撮影したんです。

「いや、僕チン悪いコトしてませんよ。ただ、かわいいハトちゃんを撮影してるだけですからね~」みたいに口笛でも吹きながら。

そしたら、ヒョロヒョロに痩せて前歯の抜けた黒人男性が近寄ってきて「アレ~?ハトちゃん撮ってんの?かわいいよね~」みたいに話しかけてくるんです。

誤魔化そうとしたら、余計に目立っちゃうんです。だから「ヤベベッ!」と思って、「アハハ、そうなんっすよ」みたいに愛想笑いしつつ後ろ足でズルズルと進んでその場を立ち去りました(たぶん、あの人はいい人だったはず)

「こりゃ、ヤバいな。余計なコトせず、さっさと歩いて帰ろう…」と思って、そそくさと歩いて進んでたんですけど。そしたら、今度はもっとヤバイのに遭遇しちゃったんです!

20メートルくらいあったかな?反対側の通りから、誰か叫んでるんです。見たら、ケバいお化粧した黒人女性なんですよ。

「アレ?誰に声かけてるのかな?」ってふと目をやったら、明らかにこっちに向けて叫んでるんですよ!

「Hey!Boy!」「Hey!Boy!」つってんです。

しかも、なんか周りの仲間たちに声かけてて、「オイ!通りの反対側にカモがいるぜ!襲ってやろうぜ!」(ここ早口の英語なのでなんて言ってるかわからない)みたいなコト言ってるわけですよ。

その間も「Hey!Boy!」「Hey!Boy!」「待てよ!(ここ、英語)」みたいに繰り返し叫ぶんです。仲間に声かけつつ。

「やっべええええええええええええ!!」と思って、危険度MAXですよ!でも、走って逃げるわけにいかないでしょ?「逃げる人間は追いかけたくなる法則」があるので。

なので、走りはしなかったんですけど、歩くスピードを超上げたんです!競歩の選手みたいに!手と足は歩く時の格好なのに、速さだけはフツーにジョギングしてるよりも速いんです!

チラッと見ると、さっきの黒人女性がムッチャ説明してるんですよ。「だから、あそこにカモがネギしょって歩いてるだろうが!オメーら目には入んねぇのかよ!」みたいに。でも、周りの黒人男性たちはポカ~ンとしてて、「ハァ」みたいな感じなんです。恐竜みたいに認識速度が遅かったんですね。

それで、「あ、ほんとだ~」みたいに周りの仲間たちが気づいた時には、かなりの距離を取ってました。

そのまま競歩の選手の格好でスッ!スッ!スッ!スッ!スッ!って超スピードで歩き続けて、15分くらい歩いたとこで明らかな安全地帯に到達し、事なきを得ました。


あの時は、ほんと生きた心地がしませんでしたね…

皆さん、ニューヨーク行く時はくれぐれも注意してください。ハーレムは危険地帯なので。

※インターネットで検索してみたら、現在のハーレムはムッチャ発展してて、アメリカでもかなり安全な地域に様変わりしたそうです。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。