世界最高の作家になるための条件をそろえつつ、人々の能力を身につける

「世界を変えよう!」と宣言したのはいいけれど、実際に何をやればいいのかは全くわかりませんでした。全ては白紙の状態。何もないところに基礎から順番に組み立てていかなければならないのです。

それはまるで物語を生み出すのに似ていました。世界観を創造し、登場人物を決め、ストーリーを考えていく。

実を言うと、青年は現実の世界で考えたり感じたり恋をしたり行動したり悩んだり迷ったりしながら、物語を紡ぎ出していたのです。

それは何万冊の本やマンガを読むよりも、何千本の映画を見るよりも、いきなり机の前に座って小説を書き始めるよりも、よっぽど貴重な体験でした。

意識的・無意識的にかかわらず、青年は作家への道を着々と歩み続け、「史上最高の作家になるための条件」を着実にこなしつつあったのです。

※この時の条件


そうとは知らない人々は、表面上の出来事に目を奪われていました。

たとえば、「高校もまともに卒業できず、仕事もしない人生の落後者の烙印を押す人」もいたでしょう。ある職場の人から見れば「瞬く間に作業を覚え、職務に忠実な仕事熱心な若者」に見えたかもしれません。別の人からすれば「自己中心的でケンカっぱやい、人を論破するだけの輩」に思えたかも?

そして、ある1人の女性からすれば、「自分がボランティアで困っている時にある日突然現れたスーパーマンのような人」であったかもしれないのです。そんな人のコトを神様みたいに信奉したっておかしくないのでは?

その神様みたいな人に「一緒に世界を変えよう!」と誘われたら?迷わずついていくに決まっています。「自分は役割を与えられた!」と心の底から喜び、全力で尽くそうとするのでは?何もかもを犠牲にし、身を粉にしてでも…

これはそういう物語。青年が意図して生み出したストーリーではないけれども、結果的にはそうなってしまいました。

         *

青年とあの人と浜田君の3人は、それから毎日のように青年の家に集合するようになります。時として他のボランティアのメンバーや青年の知り合いがやって来ることもありました。

「世界を変える」というコトがどういうコトかはわかりませんでしたが、「とりあえず人が大勢集まれば、そこから何かが生まれるだろう」と青年は考えたのです。

なので、片っ端から手帳にメモしてある連絡先の人物に声をかけ、呼び出しました。これは、あのセミナー講師のシノハラさんの教えであり、キザオ君のやり方でもありました。

ほんの2年半前まで、受験勉強と家の中に引きこもってゲームをすることしか知らなかった人間が、世界に飛び出し、様々な人々と出会い、接触した人たちの能力を身につけていったのです。まるでスポンジが水を吸収するかのごとく。

そう!これこそが青年に与えられた最大の才能とも言えました!

条件がそろった瞬間、「相手の能力や性格を自分のモノにしてしまう!」

条件とは…

「長時間、人と接触する」「触れた相手の心の底に降りていって、心と心のつながりを作る」といったものです。

必ずしも良好な関係でなくとも構いません。たとえば、青春ドラマに登場するような「拳(こぶし)と拳で殴り合う」といったようなものも条件に一致します。キザオ君を騙していた城山君と対決した時のように。

青年は知りませんでした。あの対決で、意図せず相手の能力を吸収してしまっていたコトを…

そして、無意識の内に自ら同じ歴史を繰り返してしまうコトも。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。