ショートショート 焼きそば大増殖
昔、善良な兄と性悪な弟がいました。
なんだかんだあって、性悪な弟は不思議な石臼を手に入れました。呪文を唱えてまわすと、欲しいものが出てくるのです。
まじかよと性悪な弟は思いましたが、やってみることにしました。
焼きそばが食べたい。キャベツと豚肉たっぷりの、味の濃いやつ。
石臼を回すと、なんということでしょう。焼きそばが、でるわでるわ。ずるずるとすきまから溢れ出て、あたり一面湯気でほかほかになりました。
匂いを嗅ぎつけた村人が顔を出します。「おいしそうな焼きそばだね。」でも弟は知らん顔、性悪だからです。夢中で石臼を回します。村が焼きそばで溢れかえり、国を埋めつくし……。
「『欲しい』って言えよ。」
目の前にパックに入った焼きそばが突き出された。弟の食いかけ。
「『欲しい』。新しいやつが。」
「買ってこいよ、まだ屋台出てるんだから。」
文句を言いながら性悪な弟は買い物に出かけました。善良な兄は奢ってあげるつもりです。
ショートショートNo.135
ショートショートnote杯参加作です。
※複数回参加予定です。現在7作目です。
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