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エッセイ 鮎と列車とお嬢さんたち(鮎料理列車に乗ったはなし)

岐阜県にある長良川鉄道の鮎料理列車(車両は「ながら」という名前です)に乗ってきました。
具体的には

これです!(かっこよ)

 この写真は、鮎料理列車に乗り込む関駅での、車庫見学の時に撮った写真です。乗車の前に長良川鉄道の車庫を見学させていただきました。因みに、車体の下の部分についているシャベルみたいに曲がった赤い板は、雪や動物をブロックするためのものだそう。山使用なんだなあ、と感心しきりです。
 車庫見学でこういうのも見せていただきました。

 これは電車のブレーキだそうです。車輪を両側からはさんで摩擦でとめるんだとか。部品の厚みにご注目です。新しい時の厚みはこのくらい。そしてこちらが使い込んだ部品です。

 薄くなっているの、分かりますか。金属同士が擦りあってここまで薄くなるんだそうです。他にも電車用の洗車の機械や新しくラッピング中の車両なんかを見せてもらいました。

 関駅には「食品サンプル列車」も停まっていました。中に食品サンプルが一緒にのっている列車です。写真も撮りましたよ。

 長良川鉄道の通る郡上八幡駅(鮎列車の到着駅でもあります)は食品サンプルで有名なんです。名古屋の喫茶店にある食品サンプルもこの辺で作ってるんでしょうね。

 さて、鮎料理列車に戻りましょう。冒頭にご紹介した赤い車両、中では豪華な鮎料理がまっております。どん。

 二段重! 開けちゃいましょう。


 一の段です。鮎の甘露煮、おさしみ、右隅は鮎味噌です。二の段にうつりましょう。


 鮎の揚げ物に南蛮漬け。左上はデザートのヨーグルトですが、右下の緑色のものは後で使う蓼酢です。

 お釜のやつはもちろん、鮎ご飯!

 ネギと胡麻をちらして、鮎のお出汁をかけていただきます。これはおいしかったですねえ。生臭ささも全然ないの。

 食事をとるので、2人で来た方は向かい合わせのテーブル席、私みたいに一人で来た人は窓を向いたカウンターのような席で過ごしました。

 窓からは線路の横を走る長良川と岐阜の山々が見えます。

 電車にの乗る前、関の駅で電車が来るのをベンチに座って待っていると
「今日は、あっついねえ」
と隣に座った初老の女性が、遠くの電車に目を向けたまま話しかけてきたので
「そうですね」
と答えると、こちらを向いてすごく恥ずかしそうな顔をなさいました。
なんだろう、と思って、「列車の動画をとったんですよ」と画面をお見せすると、口を押さえてやっぱり恥ずかしそうな顔をする。
 やがて電車が来て私もその方もベンチを離れてしまったんですが、川を見るのにふと反対側の窓を見たら、その方がすぐ後の席に座っていました。顔のよく似た若い女性と楽しそうにおしゃべりしています。娘さんなんだな、と思ってなんだか嬉しかったです。
 私と娘さんを間違えて話かけちゃったんですね。上手に対処できなくて恥ずかしいさせてしまってごめんさい。

 窓の外の景色を堪能しながら列車は大矢駅という駅で一旦止まります。ここでいよいよ席に配られるのが、これ!

 満を持しての鮎の塩焼き。大矢駅で焼いた、焼きたてです。
 さっきのお重の蓼酢をかけていただきます。うまし。
 私は海の方の出身なので「川魚は食べにくい」というのを迷信みたいに思い込んでいたんですが、おいしいですね、鮎。臭みもないし、油も乗ってるし。骨もやさしくて串焼きでも小骨を気にせず食べられます。たっぷり食べたなあ。

 一人旅で贅沢をすると「家族をつれてきてあげたかったなあ」と泣きそうになることが多かったりするんですが、鮎列車に乗る前に乗った電車で、向かいに座った、これもひとり旅らしい女性が、ものすごく楽しそうに窓の外を見ながら、カメラを出して景色を撮ったり、スタンプラリーの台紙確認したり、大きなクリームサンドを頬張ったりして、なんだかいいな、と思いました。窓の外を眺める横顔のこめかみのあたりに白髪が見えて、自分よりほんの少し年上の方なのかな、と想像します。未来の自分が、ああだといいなと思います。だから、なんだか、この人が嬉しそうだと私も嬉しい。ひとりでも、自分はきっと楽しくやっていける。

 さて、鮎でお腹いっぱいになった頃に列車は郡上八幡駅に到着です。
 この列車は片道だけで、復路は別の列車にのらなければいけません。
 随分長く書いてしまったので、復路の話は、また別の日に。

エッセイ No.070

岐阜県長良川鉄道の鮎料理列車「ながら」についてはこちらをどうぞ。