140字小説集 遠くに匂う梅の花(2月のまねきねこ座)
Twitterで毎月開催されている140字小説コンテスト「月々の星々」に参加しています。2月の文字は「分」。本文のどこかに「分」の漢字をいれます。応募数はひとり5本まで。2月の星々の参加記録です。
No.1
「夜分すいません」
近所の方が夜に訪ねてくるとき、いつもそう玄関で言いました。文章で書くと「夜に訪ねてくる」「遅くにすいません」そんな風になる。でも、記憶の中のご近所さんはいつも「夜分すいません」って、すまなそうに頭を下げます。もしかしたら方言なのかもしれないなと思って辞書で調べてみるとどうにかこうにかありました。冬のお題だったので、吹雪の村に。たぬきは、ちょっと毛が生えすぎているくらいがかわいいです。
No.2
「血を分けた兄弟」
例えば蟻とか、蜂とか、集団行動する生物は、コロニーの犠牲になっても悲しくはない、というような文章をたまに見かけます。どうだろう。本当なんだろうか。『悲しいか』なんて個々にインタビューなんてとれないのに。個体で生活する生物だってもしかしたら悲しくないかもしれないし、集団行動しない生物も表現しないだけでものすごく悲しいかもしれない。ひょっとしたら「悲しい」という感情を定義しているのが人間だけ、ということも十分あり得ます。
大きな群れの一部になるってどう言う感じなんだろう。ということで書いてみました。イワシの群れは本当に、本当に大きな一匹の魚なのかもしれない。
No.3
「枝分かれ」
この頃、朝の散歩のときよる神社では梅が咲き始めていました。同時に、ふと、Twitterでしばらく交流のなかった方が賞をとったのをお見かけしました。ずっと前に枝分かれした花の香りがふわりと香るみたいだ、そんなことを思った朝でした。
No.4
「分葱(わけぎ)」
実家の裏ではわけぎがとれました。学校で習わないし、子供用の図鑑にも載っていないこの謎の野菜を私は忌み嫌っていました。「わきげ」と名前がちょっと似ていたからかもしれません。あと、ぬめるのもマイナスポイントです。あやしい気がする。
ネギの仲間です。ぬたで出るので、ちょっと辛みがあります。子供心にさらにマイナスポイント。つくしの卵とじの方が好き。
実家を出てみるとほとんど見かけなくなりました。お題の「分」の字で久しぶりにみたくらい。ちょっと寂しい。あんなに文句を言っていたくせに、おかしいですね。
No.5
「自分のお勧め」
もしかしたらバレているかもしれませんが、実話ですね。ちょっと前にnoteに書いたおはなし会の喫茶店です。
私も喫茶店にはひとりで入る方です。美味しいお茶と、とっておきの本。思いの外、楽しいひとときなんですよ。
「2月の星々」受賞作はnoteでも読むことができます。素敵な作品揃いです。
3月はお休みして、4月から、三か月ごとの「季節の星々」としてリニューアルするそう。楽しみにしております!