ミッドナイトスワン

 ネットフリックスで「ミッドナイトスワン」を見ました。草彅剛がトランスジェンダー役を演じ、大きな賞を獲得した映画です。トランスジェンダーの実際はわかりませんが、見違えた姿に動揺する母親に言った「母さん、あたし病気じゃないの。だから治らないの」というセリフに響くものがありました。その会話を交わした親子が根岸季衣と草彅剛というつか組だったからというわけではありませんが、社会的弱者が少女に希望を見出し夢の実現のために献身的なサポートをする話ということで、つかこうへいの「ストリッパー物語」を思い出しました。「ミッドナイトスワン」の凪沙と一果も、「ストリッパー物語」の明美と美智子も、ふたり並んで踊るシーンがとても美しかったです。

 最後の海辺のシーン。衰弱した凪沙は女の子の幻に手を伸ばしながら、冒頭のバーのシーンで冗談めかして語った小学校の時の思い出話をつぶやきます。それを見て、凪沙のことをなんとなくわかったつもりでいたけれどもまったくそうでなかったことに気づかされました。ガツンと食らった感覚。そして。一果は動きを止めた凪沙に泣いて駆け寄ることをせず、口を真一文字に結んで海へと入っていきました。波に足を取られながらもしっかりと、振り向きもせず。それは強くなることを決意した姿でした。

 「うちらみたいなんは、ずっとひとりで生きていかんといけんのんじゃ。つよならんといかんで」(凪沙)

 場面変わってニューヨーク。そこには強くなった一果がいて、いいエンディングでした。


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