リベンジ

久しぶりに携帯を見てみるとHOSTの従業員とお客さんからの着信でいっぱいになっていた。
誰から連絡を返せばいいのか分からなかったから、お客さんを連れてとりあえずHOSTに向かった。
 
HOSTに着くと、表に
 
「ただいま改装中につき六本木支店で営業中」
 
の張り紙が。
 
その時直感で気付いた。
 
お店にもガサ入って営停をくらったんだ。と。
 
だとしたら損害はでかい。
 
営停分の損害費用を請求されてもしょうがない。
 
そんな中にんにくから電話があった。
 
「ジゴ朗さーん、ずっと電話繋がらなかったけど大丈夫なんすか?」
 
「ごめん、警察のお世話になってたよ。」
 
「やっぱ入ってたんすか。今六本木で営業してるんですけど、皆ジゴ朗のこと心配してましたよ。」
 
「まじかー。ガングロさんとかなんか言ってなかった?」
 
「ガングロさんはジゴ朗に限っては飛ぶことはないから連絡くるまで待ってるって言ってましたよ。」
 
なんだか嬉しかった。

ジゴ朗にとってガングロは雲の上のような存在。
 
そんな人に信頼してもらえていることが何より幸せだった。
 
お客さんを連れてにんにくから聞いた住所に向かうと「リベンジ」と書いてあるお店が。
 
リベンジの前まで着くと与太郎が出てきて
 
「なんだお前」
 
と一言。
 
与太郎にそのまま案内され店内に入ると店長が険しい顔で近付いてきた。
 
「おいジゴ朗、少し話があるからこっち来い。」
 
内心ヒヤヒヤしながらお店の奥に行くと、
 
「なんで連絡着かなかった?」
 
「すいません。パクられてました。」
 
「知ってるよ。うちにもガサ入ったよ。」
 
「援交子の件だろ?」
 
「はい。」
 
「警察は今どんな動きしてるか分かるか?」
 
「いや、分かりません。」
 
「まあいいか。今こっちで営業だから毎日来いよ。」
 
「はい。分かりました。」
 
「んじゃ、自分のお客さんのとこ戻れ。」
 
おおごとだけど、思ったよりおおごとにならなくて良かった。
 
なによりHOSTの寛大な処遇に感謝感謝。
 
それにしてもなんでリベンジなんだろう。
 
「すいません。なんでリベンジなんですか?」
 
「社長はこの場所で歌舞伎町での借りをリベンジするらしいんだ。」
 

誰に?

 
はてなマークが頭の中いっぱいになりながら席に戻った。
 
席に戻ると皆、六本木で仕事するのが楽しそうでイキイキしていた。
 
少し心が救われた瞬間だった。
 
しかし、新宿から六本木に流れてきたことに元々六本木で商売していた人間達は面白くなかった。

リベンジは同業からの通報などで週に3、4のペースでガサが入っていたらしい。
 
1時~日の出までの時間帯は入り口のカギは常に締められてお店のBGMも消され、警察が来たらお客さんは裏口から逃げるという荒業をこなしながら営業していた。
 
そのドキドキ感が女の子にはたまらないのかリベンジは混んでいた。
 
その日も運悪く通報をされたらしく、お客さん達は流れるように裏口から去って行った。
 
ジゴ朗もどさくさに紛れその日はお客さんと共に裏口からお店を去ってクラブで昼まで踊り明かした。
 

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