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質問する前に考えたいこと。

先日,わが家でこんなことがあった。

妻と娘がひとしきり一緒に遊んで,これから布団に入ろうというところ。

おもちゃの片付けを促しても,いやだと言って聞かない娘に妻が「じゃ,これゴミなの?」と訊いたのだ。

ひとあし先に寝室にいた僕は,正直,この一言を聞いた時点で,まずいなぁ…と思ったのです。

おもちゃをゴミかと聞かれた娘は…
「うん」と応えました。

妻は「じゃ捨てるね」と言いながらゴミ箱に捨てました。娘は途端に泣き出して,片付けると言いました。娘,すでに泣いている。

こちらとしたら,おもちゃを片付けてほしかったわけで,それは結果として達成されたのですが…このやりとりの結果,妻はショックを受けたのです。娘が,買ってあげたおもちゃをゴミと言ったことに。

…妻と娘の名誉のために,先にひとことお伝えしておくと,このあとちゃんと娘は片付けをしたし,妻は娘に絵本を読んで寝かしつけてくれました。

ただ,あの質問は,やっぱりまずかったなぁと思うのです。

「…じゃ,このおもちゃはゴミなの?」

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で,ふと思ったんです。
こういうことって,職場でもよくあるなぁって。

だから今日は,少しそれについて書いてみようと思います。

テーマは…「やってはいけない質問」の話。

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先に結論を書きます。

やってはいけない質問…
それは…

「こちらに負の感情が生まれる質問」…

その代表格が…

「お前,やる気あんの?」です。

きっと,結構な人が,言われたことも言ったこともあるんじゃないかな。もちろん僕もある。言ったことも,言われたことも。

言われる側の状態はこうだ。

心情はどうあれ…
少なくとも相手から見て…
やる気がないように見える。

言う側からすると,それは由々しき事態。しゃきしゃき動いてほしいところでダラダラ動いている(ように見える)わけだから。

でも

やっぱりこの質問はだめだ。
ほぼうまくいかない。
ほぼ確実に,言った側の不満が増幅する。

少しシュミレーションしてみる。

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ver.1 <Yesの場合>

「お前やる気あんの?」
「…あります。」
「やる気あんのにそんなダラダラ動いてんのかよ,ふざけんな!」

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ver.2 <Noの場合>

「お前やる気あんの?」
「…ありません。」
「はぁ?金もらって働いてんのにやる気ない…? ふざけんな!」

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これは完全に質問した側が悪い。

…いやもちろん,社会人として任された仕事をダラダラやってるのは,いいことではないんですよ。だけどね,ダラダラ動いているという目に見える現象に対して,目に見えない「やる気」なんてものを論点にして質問した結果…

この質問者は,YesでもNoでも腹を立ててるわけです。

「いい質問とは何か」という問いには,様々な答えがあるでしょう。それは目的によっても変わる。

「いい質問」についてもまた改めて考えたいところではあるけれど,今回は「やってはいけない質問」という角度で進めます。

「やる気あんのか」という質問は,YesでもNoでも,確実に自分の神経を逆なでする。もちろん問われた相手だって困惑したり,威圧感を感じたりもするけれど…相手はともかく,質問した本人が,自分の質問によっておかしなことになってるわけ。

質問というのは,相手に結論をゆだねるコミュニケーション。

だから

質問する人には,相手がどんな答えを出してきてもそれを受け止める責任がある。

(時々,質問しておいて自分の納得する回答しか認めないたちの悪い人もいますが…それはまた別の話)

Yes/Noで回答できるような質問をするなら,どちらになっても受け止められる必要があると僕は思うのです。

自分から質問しておいて,相手の回答に負の感情を溜め込むなんてあほらしいじゃないですか。自分が先頭で相手を地雷原に導くような話。それ,確実に自分が先に爆死するよって。

Yes/No どちらでもポジティブに返せるならいい。

Yesなら…
そうかやる気はあるんだな。
今日の動きはいまいちだけど調子悪いのか?

Noなら…
そうか,やる気が出ない時もあるよな。
ちょっと一緒にコーヒーでも飲むか?

とかね。

何が返ってきても腹を立てずに応じられるなら「やってはいけない質問」にはならない。

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冒頭の妻と娘のやり取りの場合,そこがまずかった。

なかなか片付けない娘に対して,おもちゃを指して「これはゴミなの?」と尋ねる…

そこには「ゴミじゃないから大切にしてほしい。だから今片付けてほしい」という願望があった。それ自体はまったくもってそのとおりだし,妻がわざわざメルカリで探し出して買ったものなのだから,その想いは十分にわかる。

ただ…

質問するなら,Noの場合も想定しておくべきだった。

「Noだったら捨てる」でも別に構わない。それで娘が泣いても構わない。そういうやり取りから娘が学ぶこともきっとあるだろう。

だけど…

そのやり取りの結果,自分が悲しむなんてもったいない。

だって娘のために片付けを促したんじゃないか。娘のためにおもちゃを買ったんじゃないか。娘が喜ぶ顔を想像しながら,夜な夜なメルカリで探したんじゃないか…

自分が悲しむ結論が生まれるような質問は,しないほうがいい。

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こういうことって,職場でも家庭でもよくあると思うんです。だから改めて頭の片隅に置いておきたい。そして質問する前に自分に問いかけたい。


「…その質問は,Yes/No どちらでも受け止められますか?」


みなさんもぜひ一度,

質問する前に問いかけてみてください。

放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。