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非行少年の性と薬物…

今夜、大事なセミナーがあります。

一人で企画し、運営しているもの。

当然、テーマも自分で決めた。毎月1回セミナーやって、その中で3〜4ヶ月に1回は少年院の話をしようと思って今回がその一回目。

元法務教官が語る少年院の話(仮)

から

非行少年の性と薬物

へと正式にテーマを決めたのも当然、僕。

明確な意図や狙いがあったわけではなく、これまであまり語ってこなかった部分で、ここを知りたい人はいるんじゃないかな…と思いついて決めた。

僕には「 」でくくれるようなわかりやすい売り物がない。だから講演や研修のご依頼をいただくと、いつもテーマを決めてから中身を組み立てていくのだけれど…

今回もまぁ…自分で難問を課してしまったなと思っている。

むずい。
まとまらん。

ということでまとめるためにnoteに書く。読者の中にはセミナー参加者もいるが、ネタバレ兼未公開部分の共有…という感じになると思います。

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とりあえず思い浮かんだことをそのまま文章化していきます。

非行少年は減っている。

子どもの数が減っているから当然ではあるが、それ以上に非行少年の人口比率も減っている。

当然、逮捕される子の数も、少年院に送られる子どもの数も減っていて、今では全国の法務教官の数より年間の少年院送致の数のほうが少ないくらいだ。

ところが

そんな減少傾向の中でも減っていない非行がある。

薬物…特に大麻だ。

近年、薬物関連で検挙される子たちの大半が大麻取締法違反。年々増加していて、今後もしばらく増えるだろう。

その一方で、性犯罪は全体の傾向に沿うようにして減っている。平成29年に「強姦」から「強制性交等」へ罪名が変わり、それにともなって同性間での行為や膣以外の部位による行為も対象となった。

罪に問われる行為の範囲が広がったということが、普通に考えれば捕まる人の数も増えるはずだが、実際には横ばいもしくは微減だ。

ここまではただの事実。
僕はその向こう側を知っている。

薬物も性も…

逮捕された案件とは別に、多くの非行少年が抱えている問題なんだ。

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犯罪白書等に表れる罪名はあくまでも少年院送致のきっかけとなった事件のもの。

令和3年版犯罪白書より

窃盗や傷害で入ってきた子が違法薬物の常習者であるケースも少なくないし、性的な被害・加害の経験を持つ者も少なくない。

また

非行・犯罪に該当しないまでも、安全性の低いセックスに傾倒している子は本当に多いし、恋愛観、結婚観などを見ればもはや一般的な10代のそれとはまったく別物だ。

データの正確性には疑問の余地もあるが、この国のセックスの経験率は

中学生〜5%
高校生〜20%弱
大学生〜50%程度

だそう。

ちなみに都内の高校生は全国平均に比べて経験者の割合が高いというデータもいろんなところで報告されている。

大学生でも50%程度らしいが…僕が少年院で接してきた子たちはほぼ100%が経験者だ。もちろん中には童貞であることを隠していた子もいるだろうが基本的に「全員セックス経験済み」という認識で話をしていて問題ない。

そして…

その大半がジャンクなセックスに傾倒しているし、5〜10%くらいの子が相手を妊娠させた経験を持っている。少年院在院中に彼女(嫁)が出産しているケースも何人も見てきた。

セックスはやって当然。セックスしない日常の方が考えられない。相手なんかすぐに見つかる。

そんな子も多いし、その中には「生でして中で出すのがセックス」という感覚の子も多いのだ。

それが非行少年の性。

ステータスであり、趣味であり、日常。異性と会えばするのが当然。

だからこそ僕は、同期とともに塀の中での性教育の必要性を強く認識して試行錯誤してきた。

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薬物はもっと闇が深い。

大麻の検挙数が爆発的に増えている背景は2つの側面から考える必要がある。

①使用者の増加

大麻は「使用」では捕まらない。つまり検査によって体内から大麻の成分が検出されても、その瞬間に持っていなければ逮捕されることはない。

その一方で大麻草は普通の植物であるため、栽培・乾燥・販売が容易で、メルカリなどの隆盛によって流通・入手が簡単になった。

売り手は当然、使用へのハードルを下げるため「海外では合法」「依存性はアルコールより低い」などを謳い文句にする。それらは必ずしも嘘ではないためタチが悪い。

ついでに…

ラッパーを筆頭にストリートカルチャーの実力者が使用を隠していない状況もまた、ファッションとしての大麻使用を促進している。

実際、少年院に入ってきた「僕ラップできるんです」と口にする子はほぼ100%大麻常習者だった。例外は「大麻よりMDMAがいい」と言っていた子くらいで、要するに薬物使用という点では100%だ。

(日本のラッパーが全員薬物を使っているわけで断じてないし、クラブやスケボーパークが薬物の温床になっているとも言い切れない。僕はクラブもラップもダンスも大好き。)

②麻取がターゲットにしている

10年前、世の中では危険ドラッグの規制が強化され、検挙者も多かった。麻薬取締官(通称:麻取・マトリ)も必死に検挙してた。

度重なる規制強化などの影響もあり、危険ドラッグの検挙は年々減少。入れ替わるようにして大麻の検挙数が急増している。彼らとすれば、自分たちの存在証明でもあるため、覚醒剤とともに大麻の取締には非常に熱心だ。

違法薬物なのでターゲットにするのは当然ではあるのだが、より精力的に動く背景には危険ドラッグ検挙数の減少という背景はある。

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人が狂う原因は性・権力・カネ。

それは歴史を見ても明らかなこと。
そして人があこがれるのも性・権力・カネだ。

薬物はこれらすべてを満たすことができる。

それがほかの非行とは違うところだ。

大麻にしろ覚せい剤にしろ、それを使用している者たちはコミュニティを持っている。常習者同士で繋がり、薬物を入手するルートから安心して使用できる場所、捕まらないための工夫など、薬物をめぐるあらゆるものが共有される。

人が集まればそこに権威性が生まれ、組織的になれば集団内やその周囲に対して権力を持つことにもなる。

自分たちが使うための薬物ではなく、売りさばきカネを得るための薬物がそこにはある。

薬物を欲しがる人はすぐに見つかる。当然、常習者になれば上顧客になるわけだが、その中から性的欲求の対象も調達することになる。

カネがなければセックスを対価にして少量を渡すこともできるし、顧客としてきちんと取引したのち、より楽しく使用するためにいわゆるキメセクをするケースもある。

薬物使用者は、売り手にまわることで性欲も金銭も地位も得ることができる。まわりには捕まってないか、捕まって戻ってきてよろしくやってる先輩がいる。

そんな状況で「薬物をやめよう…」なんて思うわけがない。

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放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。