「厳しさ」とはなにか。 | R6.6.28
メンバーシップの会員さんから、こんな質問をいただきました。
少年院は規律が大事。そういう意味で特に関係性を作る段階においては「厳しく接する」が大事なようにも思います。へいなかさんはどうしてましたか?(へいなか意訳)
法務教官になるべく勉強している方でしたので、誠心誠意DMで返信させていただきました。回答の要点はこちら⇩
魅力で惹きつけ、毅然とした冷静な振る舞いで規律を育む。
ここだけ抜き取ると、わかるようでわからない回答ですね。DMではもちろん実例をあげながら回答したのですが、せっかくなのでちょっと掘り下げてみます。
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1)へいなか流関係づくり@少年院
僕は、新入生との最初の面接でよくオセロをしていました。(集団寮に入る前に一度、自己紹介だけの短い面接をする場合も多いのですが、それでも2回目はオセロです。)
・オセロ自体の強さ
・手の進め方
・対局中の言動
これらのことからその子のいろんな情報をつかめるので、上級生たちはみんな「安部のオセロはただの遊びじゃねぇ…」と理解してます。
が
当然、新入生はそんなこと知りません。普通に対局して終了後にちょこっと雑談です。きっと多くの子が「少年院」という極めて特殊な状況で意表をつかれたことだろうと思います。
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2)関係づくりその2
僕の務めていたところでは、就寝前に「一日の反省」という集会がありました。ホームルームみたいなもんです。最後は当直教官の講話。
僕はその時間に笑いを取ることが多かったです。
本来20時までに終わりにしなければならない時間。超えると彼らの大事なテレビ視聴の時間が減る。
にもかかわらず、僕の当直日は彼ら(非行少年たち)の希望で時間を延長することが多かった。たのしく、わかりやすく、そして勉強になるからです。テレビより楽しかったんだと思います。
新入生が来ると、初回の当直日では自己紹介をすることが多かった。経歴をホワイトボードに書いて、とりあえず自己紹介。
その上で上級生に質問を募集して、おもしろおかしくエピソードトーク。
これもまた、新入生にとってはよくわからない時間だったろうと思います。教官が院生から質問受けて、基本的にNGなしでおもしろトークしてるんですから。
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3)規律はどこでつくるか
ということで僕は、一般的な意味での「厳しさ」はほとんどない教官だったと思います。
表情はやわらかいし、自由時間には小説片手に談笑してるし、なんなら時にイジられたりもする。
でも僕は「厳しい」先生だったと思います。上級生たちはその意味をわかってた。
僕の厳しさ…
それは、「基準の明確さ」「判断の早さ」「基準を満たさない人への合理的なハンデ」によって生み出されていたと思います。
つまり…
声色や表情などの見た目の恐さではなく、「こいつに認められるには半端じゃダメだ」というハードルの高さによって生み出していたのです。
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4)へいなか的厳しさ(実例)
僕は司馬遼太郎や吉川英治の小説を読んでいることが多かったです。寮にいる時にはつねに本を片手に歩いていた。
自由時間になると、おなじ小説を読んでいる上級生が話に来ます。感動した場面などを語らうためです。その様子を見た新入生が会話に入り込んできます。
先生、それ僕も読んでみたいです。
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放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。