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アネモネ

8年越しに見かけた姿は
ほんの少し縒れていて
軽く挨拶、久しぶり
変わらないねと嘘をつく

短くなった暗い髪色
随分切ったとあなたは一息
長い髪ひとつ纏めた
たなびく尻尾を思い出す

不死鳥なんてものじゃなく
ゾンビと呼ぶのが妥当でしょう
こんな想いは制服と
一緒に死んだはずなのに

最近どうとグラスを交わし
娘と笑う写真を見せた
元気そうで良かったと
私は上手く誤魔化せたかな

結婚式なら呼んでよと
ふざけたつもりで言えばいいのに
指輪がないのは論より証拠
見切りがいいのも変わらない

不死鳥なんてものじゃなく
ゾンビと呼ぶのが妥当なら
生きているふりをしてるだけ
私よりいっそマトモかな

もう男には疲れたの
そうあなたはいうけれど
諦め悪いあなたには
不死鳥こそがお似合いね

泣きたい夜には逢えるけれど
楽しい日には音信不通
そんなものだと、ため息ひとつ
またねと言って別れた朝は
虚しいほどにきれいな青で
私はようやく花を供えた

万が一集まったら製本してコミティアで頒布します