朝を待ちながら

ある朝目覚めると僕の祖父は見ることを失った
病気の妻と幼い子供と共に生まれた地を離れ
病院を転々とした後、微かに光を取り戻したが
それでもその殆どを失ったまま寝床から
起き上がることのなくなった祖母の跡を追った

ある朝目覚めると僕の父は聴くことを失った
妻と子供達を負った頑健な身体は病み衰え
病室に座り込んだ後、僅かに音を取り戻したが
それでもその殆どを失ったまま自らの
かつての姿を忘れられずに母を置いて年老いた

やがて訪れる朝に失われるのはひとつの世界
明かりが消え静けさに揺らぐこの夜の中で
ついにはひとつの家族になるために
眠ることなく朝を待ちながら
僕は手放すことを学び続ける

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?