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カブの旅 第40話「かわまちてらす閖上」

 何だかカブのエンジン音がうるさいなと思ったら、そういえばネックウォーマーをつけていなかった。寒い時は隙間風を防ぐために、ネックウォーマーで耳を覆い、その上からジェットヘルメットをかぶっていた。それがないために周囲の音がよく聴こえていた。つまり、春が来たというわけだ。

(久しぶりだな)
「え?」
 穏やかな天気の下で気持ちよく僕が走らせている、スーパーカブ110から声がした。ような気がした。
(久しぶりじゃないか。主がツーリングするのは。そしてこのカブの旅マガジンの本編更新も。前回は実に3年近くも前になるぞ)
「え? なんだって?」
 だから走行音と風切り音がうるさくて聞こえないんだよな。
(……まあよい)
 何だかカブはふてくされているような感じだった。
 ……だいぶ散歩に連れていっていなかったからだろうか。
 日常の足としてはいつも使っていたが、こうして郊外の見晴らしのいい道を走らせるのは久しぶりだった。近隣の目につくスポットは大体行き切ったというのもあるし、それ以上遠くだとカブのスペックだときつい(億劫)という理由もあった(例の東京とかね)。

(だからダックス125に乗り換えようとしてるのか)
「……おまえ、Twitter見たな」
 そう、先日発表されたダックス125はなかなか魅力的だった。なんでかっていうと……長くなるのでここでは割愛するけど。よければ別記事にあげているのでリンクからどうぞ。

「……乗り換えられるのは、やっぱり嫌か?」
(別に構わぬ。乗り物というのはそういうものだからな。早いか遅いかの違いでしかない)
「ドライなんだな」
 まあ機械だからな。(僕にしか聞こえないのかもしれないけど)喋っているとはいえ。
(それに、奴も遠心クラッチだから、兄弟みたいなものだしな。安心して任せられる)
「そんなもんなのかねえ」
 もし買い替えて、こいつと別れたら、僕は寂しさを覚えるだろうか。

(ところで、今日はどこに行くのだ?)
「そう、それが本題。今日はかわまちてらす閖上ってとこが目的地」
 かわまちてらす閖上とは、仙台港から南に下って、仙台空港のやや手前、名取川の堤防沿いにあるショッピングセンターだ。

 川沿いかつ海の近くにあるので、景色が良さそうなこともあり、行ってみることにした。
「ほんとは空港に行こうと思ったんだけどね」
(空港? 飛行機でどこか行くのか)
「と思ってたんだけど。暇だし。でも例のウイルスがなかなか収まらないから、人の多い観光地に行くのは気が引けてね」
(それでまた私でぶらぶらし出したってわけか)
「まあそんなとこ」
 どこか遠出するにしても、人の少ないとこがいいだろう。となればバイクで移動できた方がいい。
「それに、考えてみたら、飛行機で行ってしまうと、現地で歩いたり電車で移動しないといけないからめんどいんだよね」
(主、旅行向いてないだろ)
「それは自覚してる」
 多少危なく多少疲れようが、バイクの方がよっぽどマシだった。

  *

 相変わらず風の強い国道10号線を南下し、名取川を渡ったらすぐ左折する。すると間もなく『かわまちてらす閖上』が見えてくる。

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 野菜や魚、飲食店が立ち並んでいる施設だ。飲食店は堤防沿いにもあり、名取川の河口の開けた景色を眺めながら食事ができる。テイクアウトできるお店が多いので屋外でも楽しめる。

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 食事はラーメン、軽食、スイーツ系といろいろあり、中でも海鮮系のおにぎりと迷ったが、せっかく海辺に来たので海鮮丼でいくことにした。

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 選んだのは釜揚げしらす丼。かに汁がおいしかった。
(しらす丼の方は?)
「おいしかったっちゃあおいしかったんだけど、タレとガリと大根おろしとしょうがの味がほとんどで、あれしらすどこいったんだろってなっちゃって」
(この味音痴め)
 それも知ってる。

 堤防は海まで続いているので、せっかくなので歩いてみる。

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 やや薄曇りだったが、青々とした風景で視界を満たすのはやはり心地良い。今度は夕暮れ時にでも来てみたい(残念ながら『かわまちてらす閖上』は夜はやっていない)。

その分活字を取り込んで吐き出します。