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カブの旅 第16話「気温3度の佐世保バーガー」

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Q:本日の最高気温は3度です。あなたはバイクに乗りますか?
A:いいえ、乗りません。
カブ:いいや、乗れ。

 とカブにせっつかれたこともあり、寒波に見舞われていた連休の最終日、僕はようやく重い腰をカブに乗せ、凍てつく街へと繰り出した。
 まあ、言うまでもなく、普通に寒かった。
 が、きれいに晴れていて、風もなかったし、覚悟して着込んできたこともあってか、体の方は耐えがたいほどに凍えはしなかった。
 ただ手だけはほんと冷たくなった。ダイソーの300円の手袋と軍手を重ねただけの装備だったせいもあるかもしれないが、もうちょっとで凍るんじゃないかと思った。やはりちゃんとした防寒グローブは買っておこう。
 しかし、雪が降らないだけマシなのかもしれない。
 仙台は基本的に雪が少ない。今年は1、2回うっすらと積もったくらいだ。それも日中にはほとんど溶けてなくなった。地形の関係で(主に奥羽山脈のおかげで)、仙台は他の東北地方と比べて雪が降らないらしい。
 ただ三月一杯までは大雪の可能性は十分あるし、一度積もってしまえばバイクはしばらく走れない。なので寒いとはいえ、走れる時に走って風を切る欲求を解消させておきたい気持ちは僕にもあった。
 それと……
 カブのミラーに、ちらりとカーブから脱出するライダーが映る。
 八木山の坂道を駆け上がるフルカウル。
 新型のninjaに乗ったT氏だ。
 T氏が最近バイクを買い替えたので、その拝見もかねて、この寒空の中カブつくことにした。
 とはいえ日中の比較的暖かい時間帯だけだ。
 というわけでランチをしようと、僕達は仙台市太白区西多賀にある、佐世保バーガーを食べにいくことにした。

  *

 佐世保と称しているだけに何か長崎的な特徴があるハンバーガーなのかと思いきや、ネットでざっと調べた限りでは特にそういうわけではないようで、しかも「こうでないと佐世保バーガーとは言えないよ」といった縛りもないらしい。何だか謎のハンバーガーだ。
 仙台では以前は国分町辺りに路面店としてあったが、現在は移転して、仙台駅近くの錦町と、今回行く西多賀に店を構えている。
 構えているといっても、なぜか2店とも生協のテナントに入っていた。その方が単独で店を構えるより安く、買い物客のついで買いの需要も見込めていいのかもしれない。
「ハンバーガーは好きなの?」
 たとえ嫌いでも食べるのだけど、僕の味覚と同期しているらしいので、一応カブに訊ねておく。
(カブは何でも食べるぞ。主はどうなんだ?)
「好きだよ。片手で食べられるからね」
(普通こういう場合味が好きかどうかを訊いているのだと思うがな)
「そうなの? いいじゃん、片手で食べられるの。もう片手で何かできるし」
(もしやカロリーメイトもそんな理由で好きなのではあるまいな……主は食を楽しむことも覚えた方がいいのではないか)
「え? 楽しいよ?」
 片手で何かできるし。

 などとカブと道中話しながら、みやぎ生協西多賀店にやってきた。
 佐世保バーガーは1Fの端のほうにあった。

 まさかこうもイートインの売店的に営業しているとは思わなかった。

 メニューはこんな感じ。

 ランチがお得だったのでそれにした。
 T氏も珍しくメインの佐世保バーガーを選んでいた。

 佐世保生まれの東京育ちで仙台のハンバーガー……?

 で、やってきたハンバーガーセットがこちら。

 ほぼほぼモスバーガーだった。

(単にトマトが入っているからってモスバーガーみたいと言っているわけじゃないだろうな?)
「はは、まさか」
 もう少し詳しく言うと、モスバーガーよりも幾分優しい味、主張の強いソースがないせいか、素材の味がよくした。あと何気に付け合わせのサラダがおいしかった。

 しかし、生協のイートインがこうも居心地がいいとは知らなかった。

 店内で買ったものを食べられるし、無料のお茶も飲めるし、ドトールの紙コップコーヒーは100円だし、電源もある。もちろん駐車場もあるので、ツーリング時の休憩所としてもいいかもしれない。

 そんなこんなでT氏と食後にまったりしていたら、3月末に東京にバイクで行かないかという話になった。一応東京モーターサイクルショー2019に行くのが名目上の目的だけど、実際は二人とも単にいっぱい走りたいだけな気がした。
(ロングツーリングか。腕が鳴るな)
 聞き耳を立てていたらしく、カブが言う。
 カブの腕とは一体……やっぱりハンドルなのだろうか。
 そりゃあホーンがあるから鳴るだろうよ。
「ninjaについていけるの?」
(向こうは新車だからまだ慣らし中だろ。大丈夫だ)
「まあ僕らは下道しか走れないしね……」
 福島辺りの4号線はだいぶ流れが速いというけど、果たしてカブでも大丈夫なのだろうか。猛然と走るライオンや象の群れの中に放り込まれたうさぎみたいになりはしないだろうか。
 是非ともお手柔らかにお願いしたいところだ。

その分活字を取り込んで吐き出します。