見出し画像

【積読er必見】メルカリ読書法で800ページ超の大書「世界標準の経済理論」を2時間でまとめたかった

無理じゃね?

今17時過ぎです。昨日売れた積読書のひとつである「世界標準の経済理論」をまとめていきたい。出来れば今日中に発送したいので、今日中に読みたい。

しかし!

"""800ページOVER!!!!"""

画像1

ちなみに面白がっている場合ではない。


前置きはこれくらいにして、みんなが気になっている世界標準の経営理論を幼稚園児でもわかるくらいに噛み砕いて「そういう感じね」くらいにしていこう。

以下、読み始める。

前置き

経営学って学者だけのものじゃないよね?経営者がわかるように体系的にするべきなんじゃないのって思ったから本書は生まれたよ。本書は大学生には教科書になるし、他分野の研究者にとっては「ガイドブック」に、経営者にとっては考え方の「軸」となるだろうね。こんな叡智の結集たる本書は世界に初めて生まれたと言えると思っているよ。ありがたく読んでね。さっき軸といったけど、この世界に「正解」というものはないんだ。だけど、「羅針盤」を持っておいて損はないはずだよね。本書はくどいようだけどそんな感じだよ。

そして本書は理論だけを言いっぱなしにするだけじゃなく、ちゃんと実証も行って確からしさを保証しているよ。過去の有力な実験をリスト化しているから、とても参考になるだろうね。

経営学というけれども、それらは人がおりなす因果に基づくものだよ。だから一口に言っても、経済学、心理学、社会学という学問が密接に関連しているんだ。これらを応用して人がどのような考えに基づき行動するのかを「理論ディシプリン」という言葉で説明しているよ。頻出ワードだから覚えておくこと。

この本はめちゃ分厚くなっちゃったけど、どこから読んでもいいという特徴があるんだ。教科書だからね。著者的にはマトリクスを描いたから、感心があるものから見るのがおすすめだよ。

さて、この本は様々な社会的立場にある人にも伝わるように書いたから、沢山の人に届くといいな。

序章はそもそも経営理論て何?ってとこから説明していこう。更にいえば「いまこそビジネスに経営理論が必要な理由」を説明するところからだね。準備はいいかい?

序章(2P~)

理論とはHow,When,Whyに応えることだ。理論=theoryって何?っていうと、明確な定義は決まっていないんだけど、かいつまんでいうとこういうことなんだ。深い問題で、首を突っ込むと長くなるからHow、When、Whyってことにしよう。わかりやすく説明するよ。

HowはX→Yって関係のことだよ。

X(企業の経営資源に価値があって希少)→(ならば)Y(上手く行く!)ってことだ。

これはXがプラスになればなるほどYもプラスになるっていうことで、そのまんまの意味だね。こんな関係をHowと言うよ。

Whenは、Howが適用される範囲を明確にすることだ。Howの説明で、そんなかんたんな話じゃないって言いたくなっただろう?Whenはこれに条件を付けることで、精度を高めるという役割を担うんだ。

How,When,Whyという普遍的な条件式を人は求めるんだ。結果が分かればそれに向かって行動するだけだから、そんな嬉しいことはないよね。経営においてそれを求めるのが経営学ということになる。わかってもらえたかな?

P4~

さあ、ここでようやく「どうして経営理論が必要なの?」の問に対する答えを出すことができそうだね。経営者は行動による結果を予め予想してから行動したいんだ。それが一番効率的だからね。

Whyの説明をしていなかったね。理論にWhyがある理由は、Why【なぜ?】が無いと人は行動を起こさないからだ。

でも本当に、そんな上手くいくかな?実際はもっと複雑で困難な問題のはずだよね。それでも意思決定をしていかないといけない。M&A、投資判断、人を雇うということ・・・ちょっと考えただけで頭が痛くなりそうだけど、経営者は永遠に考え続けなければいけない。

だからこそ、「軸」という拠り所が必要だ。そう、本書なんだ。

色々な新しい問題が出てくる。そういう時代だ。ダイバーシティ、SDGs、ガバナンス改革etc・・これらをすべてちゃんと腹落ちしないままやったりしてないかい?「他社がやってるから」といっても、人はなかなか納得いかないんだ。でも本書というWhyに対する答え、軸があれば、事実やデータに基づいて人々を説得させて、行動に変えることが出来ると思わない?

そろそろありがたさが分かってきたかな?

なぜ本書が大事なのか分かれば、本書を読む気になるよね?そういうこと。

P6~

理論ドリブンと現象ドリブンって考え方がある。どちらを元にして考え始めるか?ということをドリブンっていうよ。学者はこの2つの派閥に分かれていると言っていい。それぞれに著名な学者がいるよ。

本書では、MBAとかで用いられる現象ドリブンよりも、理論ドリブンの方がいいんじゃない?と思うから、そっちでやっていこうと思うよ。

どうして?に対する例をあげよう。買収プレミアムという言葉がある。これはM&Aをする企業が買収される企業に、市場価値にプレミアを付けて購入する状態を指す。これは一般的に行われるんだけど、プレミアを付けすぎてしまっては高値づかみになってしまうよね。出来ればそれは皆避けたいはずだ。

どうしてそんなことになるんだろう?って思うよね。これには様々な理由がある。複数の理論で説明するよ。

P8~

1. 「情報の経済学」から、合理的な買収企業は、高値づかみのリスクを避けるため、支払額を抑えがちにするはず

2. 「エージェンシー理論」から、経営者は株主と違う動機で、高値を付けてでも買収したい理由がある場合に注目する。例えば、「成長速度を上げたい」という思惑により暴走しているかもしれない。

3. そもそも経営者自身が、「高値づかみしやすい心理状況の人」かもしれない。自身への評価が高いほど、M&Aの買収額が大きくなる傾向があるというデータがある。

4. 「ソーシャル・ネットワーク理論」経営者が周囲の人から影響を受ける。M&Aは厳しいという先入観を持っている場合、結果として慎重に安いプレミアムを付ける。

こんなふうに、ひとつの事象をとっても複数の理論で説明できる。これに限らず、ビジネスの様々な事柄はひとつの理論だけでは説明できないことがほとんどだ。

結果として、現象ドリブンでは理論に対しての説明が広く浅くなってしまう。それではWhyについても薄くなってしまい、なぜそうするべきなのかという大事なところが見えてこない。だから本書は理論ドリブンで考えようとする。

(18時を過ぎ、ここで夕飯の麻婆豆腐を作る。以下、食べながら)

わかってもらえただろうか?

一つの理論を腹落ち出来れば、様々な事柄に応用できる。だから効率的だ。

そして、理論に対しての説明は、人に対しての説明と重なるから、時代の変化に対しても不変的だ。これも現象を学ぶことより、理論を学ぶべきだということの裏付けとなる。

今私達が直面している様々な新しい課題も、実は多くが90年代に提唱された理論に基づいていたりする。

経営学は後追いの学問であるという考えを持つことは、つまり理論ドリブンに基づいた考え方が出来ていないということだ。

理論は古びない。だから価値がある。

P13~

理論ディシプリンを思い出してほしい。これはどういう仮定を持つかによって3つに分けられる。

経済学ディシプリン…人は合理的な意思決定をする

心理学ディシプリン…人は(他の学問で言うほどには)合理的な判断を取らない

社会学ディシプリン…社会的な関係性に関心を持つ

なぜ、本書のようなこれらを併せ持つ本が存在しなかったのか?それは研究者は各々のディシプリンに精通しなければキャリアを形成出来なかったからだ。

結果的に言えばたまたまの偶然で、筆者は3つのディシプリンを跨いで学問を形成してきた。だからこれらに跨って体系的に説明出来る本書が生まれた。ありがたく読んでね。

ひとくちメモ「フレームワークは理論じゃないよ」。

How,When,Whyが揃わないものは理論とは言えないよ。存在するだけのデータ、引用の羅列、図表、命題や仮説だけのものは理論じゃないよ。

フレームワークはWhyに応えないものだから、どうしてそのフレームワークを使うかに理論を使うんだ。ここはMBAの教科書でもごっちゃになっているところだ。盲目的にフレームワークを使ってはいけないと自戒しよう。

P27 ~ 第一部 経済学ディシプリン

これは「合理的な考えに基づき行動する」仮説に基づくということだったね。例えばAとBの店があってAの店のピザがBより安ければ、人々はAに行くはずだということだ。

経済学ディシプリンはその性質上、自然言語的に表されるので比較的理解しやすい。

SCP理論

ビジネスに需要予測はつきものだ。でも成長している市場だからといって、企業の利益率も高いとは言えない。むしろ、その産業が儲かる構造になっているかが重要だ。そのメカニズムをSCP理論は体系化した。

完全競争という考え方がある。これは市場が以下の条件に基づいていると仮定した状態のことだ。

1. 市場のどの企業も市場価格に影響を与えない

2. 参入コストがなく、撤退コストもない

3. どの製品も同じ(差別化されていない)

4. 経営資源を他の企業にゼロコストで移譲できる。例えば、ある人材がAからBに移動することに障壁がない。

5. 情報が完全に共有されている。(特許など)

要するに、出来るだけ経済市場を極限まで単純化したベンチマークである。「こんなことはありえない」というくらいまで極端にするからこそ、ベンチマークにできる。

条件1~3の帰結は、「すべての企業の利潤はゼロになる」ということだ。要するに、こんな状況化では価格を下げる以外に競争する手段がないので、トントンのところまで落ちていく未来しかない。

これを現実世界に当てはめると、航空業界の利益率が低い理由がわかる。顧客は様々な企業の同一条件のフライトを比較検索できるので、条件1~3に近い状況が起こる。差別化が必要というのはこういう理屈なのがわかるね。

そして、条件1~3の対極にあるのが「完全独占」だ。完全競争では何もかもをコントロール出来なかったが、完全独占ではそれも逆になる。

一社しかなければ、市場価格を自由にコントロール出来、差別化も存在しない。現実には多くの国で禁止されているので、こういう状況はほぼあり得ないとは言える。

さて、2つの極端な考え方からこれをどう応用するかということになるが、例えば競争と独占という2点を一本の線で結んで、自らの業界の立ち位置はどのあたりにいるか?という物差しを作ることが出来る。

OS業界などは完全独占に近いところに位置しているし、先程例に上げた航空業界は完全競争に近いところに位置していると言える。

完全独占に近ければ近いほど、業界の利益率も高く、利潤を追求しやすいと言える。

寡占に近い業界では、これを熟知して、例えばコカ・コーラとペプシのような関係は、敢えてお互いが価格競争を仕掛けない暗黙のルールが出来上がっている。これによって業界全体が高い利益率を保てるからだ。

さて、完全独占に近い業界の特徴とは何か。

これは、参入障壁が高いという点が挙げられる。例えば先程の飲料業界に参入したいと思っても、既に大量生産によって抑えられた市場価格に対抗するリスクを負わなければならず、これが障壁となる。

(P47~ ここですでに約束の2時間が経過したので、飛ばしていく)

SCPというのは完全競争を避け、利潤を求めるにはどうしたらいいの的な理論体系で、いくつかの有名なフレームワークがある。

ファイブフォース、戦略グループ、ジェネリック戦略。

どの産業にいるかで利益率が決まるよというのが通説だったけど、そうでもないんじゃない?って言われるようになってきた。今では産業属性が影響を及ぼすのは間違いないけど、利益率の7割は企業効果によるものだという学説が有力になっている。

SCPフレームワークは「安定」と「予見性」を元にしているので、不確実性が高い世界では適応が難しいところもある。そのあたりがSCPの限界といえるのではないかと思っている。

P65 ~ RBV(リソース・ベースト・ビュー)

(ここで麻婆豆腐を完食し、器を片付ける)

RBVは日本語で資源ベース理論とも呼ばれる。よくSCPと並んで紹介されるもので、RBVももともとはSCPと同様に経済学ディシプリンに基づく理論のひとつだ。

RBVは企業リソースに着目する。人材や技術、知識、ブランドなどだ。

RBVはなにも目新しいことを言ったわけじゃないけど、これの元になったバーニーという学者の論文は6万件以上も引用された。世界で最も読まれている論文といっても過言ではないほどの数字だ。なぜそれほどまでに?というのは論文が登場する91年以前を考察しなくてはならないと筆者は思う。ペンローズやワーナーフェルトや86年のバーニーの論文、ディエリックス=クールの論文はRBVの起源となるけど割愛する。そんな流れで登場した91年のバーニーの論文はこんな感じ。

競争優位を実現する企業リソースとは、価値があって希少であること。かつ、模倣不可能、代替不可能で持続可能であるとき、企業は持続可能な競争優位を実現する。

RBVの考え方はこの時点でほぼ完成していて、このあとはバーニーの理論を裏付けるような実証研究がなされていった。

しかし現代においてRBVは批判の的に晒されている。それはRBVが持つ問題を反映している。

例えば、同義反復でないのかという点。上の「競争優位を実現する~」を読むと、主語と述語の両方に「価値があって希少」という意味をもたせているので、論理命題として成り立っていない!というものらしい。多分これはまだ決着がついていないところだ。たぶん。

加えて、アウトプットの部分を無視しすぎているという部分。これは例えばグローバル市場において、その国々で希少で価値を持つものが変わってしまうため使い物にならないということを言いたいらしい。

最後に、RBVはブラックボックスであるという点。どのようにその希少で価値のある企業リソースを生み出すのかというところに主眼をおいていないので、多くの企業が悩んでいる問題を解決出来ない。

著者主観的にRBVは、フレームワークとメッセージ性が弱く、実務で使いづらいものだと考えられている。

RBVと親和性の高いフレームワークにアクティビティシステムというものがある。これはある企業においての行動の繋がりを図示するもので、いかにそのビジネスモデルを模倣できないかを可視化する。

これは単体のRBVとは違ってメッセージ性、処方性が高い。なぜなら、模倣を困難にするには、複雑で一貫性のあるアクティビティシステムを築くべきだ、と明快に言えるからだ。

これを考案したのはマイケル・ポーターである。SCPの立役者でもあるポーターである。ポーターすごい。

(ここで20時を回る)

P85~ 重要なのはSCPかRBVか?

両方とも重要である。そもそも決着の型が異なるからである。

型というのは3つに分類される。

IO型、チェンバレン型、シュンペーター型。

それぞれ、完全競争/独占、独占的競争、イノベーション等 をモデルとした競争の型で、IO型ならSCP、チェンバレン型ならRBV、シュンペーター型ならダイナミックケイパビリティ・知の探索・知の深化 という経営理論がそれぞれフィットすると考えられる。

これは、例えばシュンペーター型から考えれば「(ステレオタイプ的な)日本企業には戦略がない」「RBV的な考え方だ」などと言うことが出来ることを表す。更に言えば、SCP的、RBV的問題に嵌っているということはその経済が革新性、イノベーション性に欠けているという問題を浮き彫りにする。

その産業の競争型が、どこに推移しているのかを考え、整合性を高く保つ必要がある。多くのIT企業はシュンペーター型と言え、そこに自動車産業が肉薄するならばチェンバレン型からの移行は必至ということが言えるのだ。

ここで、自分の産業はどの型の競争が優位なのか?を考えることだろう。そんな時に必要なのは「鷹の目」だ。大規模な統計に基づいて分析しよう。

P105 ~ 情報の経済学

ここからは組織の経済学に入る。これは現代の経営学では必須の重要ポイントだ。軸となる部分だ。

前回まで主に市場に焦点を当ててきた。一方で、市場を形成する組織や人について、深く洞察してこなかったことに気付くだろう。

SCP,RBVでは触れてこなかった深い問題に切り込んでいくのが組織の経済学である。

ゲーム理論、情報の経済学、エージェンシー理論、取引費用理論など。

今回はこれまでと同様、完全競争を出発点にしつつ、新たな第5の条件に着目する。企業同士は互いに情報を共有しているというものだった。これも完全競争に必要な条件だ。

実際はやはりこんなことはありえないのだが、現実に落とし込んだ例を見てみよう。アカロフのレモン市場という有名な例だ。

ここでいうレモンとは俗語で、中古の車を示す。新車と違い、顧客は(売り手と違って)レモンの本当の価値(品質、市場価格など)がわからない。このような状態を「情報の非対称性」といい、営業マンだけが知っている本当の情報を「私的情報」と呼ぶ。

買手が合理的な考えをするならば、「中古車の本当の価値は提示されているよりも安い可能性がある」と思い、値引きを要求する。

この時、生じるやっかいな問題は、100万円のものを100万円という正直な営業マンと50万円のものを100万円という営業マンがいた場合、どちらにせよ顧客は値下げを要求する他なく、結果として嘘つきの営業マンが市場に残りがちになる。この現象をアドバース・セレクション(逆選択・逆淘汰)という。

これは(ユーザー・プレーヤー)どちらにとっても深刻な問題だ。

アドバースセレクションを引き起こす似たような市場は以下のような例がある。

・就職市場(紹介する側だけが私的情報を持つ)

・保険市場(買手が私的情報を持つ)

・融資・投資(企業は私的情報の塊)

・企業買収(企業価値はその企業にしかわからない)

アドバースセレクション問題は、2000年代になってその重要度を増している。いかにアドバースセレクションを解消するかは企業に託された命題だ。例えばメルカリなどの企業は、お互いの顔が見えないというアドバースセレクションの典型をうまく解消している。

M&Aに関しても、買収するのではなく合弁会社としてリスクを軽減させるなどの戦術や、吸収企業のパフォーマンスに応じて支払う「アーン・アウト方式」、IPO待ちなどがある。

(先述した保険会社では、「事故の保障が厚いが高い保険」「保障は薄いが安い保険」の2つを用意するという単純な方法でこの問題に対処している。(私的情報を持たないプレーヤーの対処法=スクリーニングという)

ファストフードなどのクーポン券も、混在する「少しでも安く食べたい客層」と、「価格にこだわらない客層」のどちらも逃さないというアドバースセレクション対策の一種と言える←これは言い得て妙で、目からうろこでした。面白い。。)

スクリーニングに対して、「私的情報を持っているプレーヤー:自分が正しいということを信じてもらいたい」という対処法をシグナリングといい、近年研究が進んでいる。例えば真面目に学業に取り組んできたことのシグナルとして、学歴を使う、という形である。

企業であれば、会計上での「情報開示=コーポレートディスクロージャ」がそれにあたる。

なんにせよ、シグナルには「裏付け」が必要となる。学歴であれば、「その大学は頭が良くないと入れない」のような証拠のことである。

情報の非対称性を味方に付けよ、という考え方がある。例えば、様々な情報が開示されている上場企業(=希少な情報ではない)に対して非上場企業は通常、私的情報を多く含んでいるため敬遠されるべきと考えるが、上場企業よりも非上場企業を買収したほうがパフォーマンスが高かったという統計がある。これはもし、非上場企業が持つ情報を仮に自分だけが持っていたとしたら、このM&Aは寡占市場での取引であると言え、そのような場合は買収側に有利な状況が生まれる。これが情報の非対称性が持つチャンスと言える。

このように、アドバースセレクション問題を独自の方法で乗り越えられるか否かがビジネスの生死を分ける一因となりうる。

(ここで21時になる。ここからはもう今日中に読み終えることを優先するため、基本的にメモ書きみたいになっていくと思いますがご了承ください)

P114~ エージェンシー理論

モラルハザード問題。保険に入ったら「今までほど気をつけて運転しなくていい」と考えることはある種「合理的」だ。でも保険会社としては困る。そういう問題。別名エージェンシー問題。

この対処法をエージェンシー理論は考える。

プリンシパル(保険会社側)とエージェント(顧客)とする。

こんな特徴がある。

・利害・関心が異なる。

・プリンシパルはエージェントを監視できない。

似たような関係・・・上司と部下、株主と経営者 など


こんな事象もモラルハザード問題で説明できる。

・大胆な戦略を取れない経営者(自身の失職を恐れ、チャレンジしない)

・利益より規模を優先する経営陣(見た目の派手さで印象付けたい)

・企業スキャンダル etc....

どう解決するか。精神論ではだめ。

1. モニタリングで解決する(例:ドライブレコーダーを付ける)

2. インセンティブ(=誘因=やる気を起こさせるもの)の導入

でも、上手く機能しない場合も多い。(モニタリングのコスト問題や、飾りだけの社外取締役、ストックオプションは粉飾のインセンティブを誘発する場合がある…etc...)

じゃあどうする?

→とにかく、プリンシパルとエージェントの目的の不一致を解消する方法を考える。

エージェンシー理論は、「婿養子経営」の強さを説明する。

(21:15)

P113 ~ 取引費用理論 TCE

組織の経済学の締めとして紹介されるTCEはめっちゃ大事。色々応用出来るから覚えておくこと。

情報の経済学、エージェンシー理論が情報の非対称性を元にしたのに対し、TCEは「限定された合理性」を取り入れる。限定されたというのは、合理的判断を行うことは前提として、見通せる将来に限度があり、その都度合理的な判断を行うということを指す。

ビジネスの世界では将来を充分に予見出来ず、不測の事態に陥ることが往々にしてある。それによってある時点では不当と思っていなかった専売契約などが尾を引き、「足元を見られる」状況が発生する場合がある。これを経営学では「ホールドアップ問題」という。

原因は以下となる。

1. 不測事態の予見困難性(産業革新の中にある時期など)

2. 取引の複雑性(契約の取りこぼしの発生)

3. 資産特殊性(パワーバランスが生じる)

4. 機会主義(足元を見るような会社であるということが大前提)

どう防ぐ?

→内製、買収

TCEとは取引における最適なガバナンスを見出すことだ。

様々な要因を勘案する中で、内製か外注かなど、取引のコストを踏まえた最適な判断をする必要がある。

どこを内製すべきかを考えるということは、企業として何をすべきか=企業そのものという解釈ができる。つまりTCEとは、企業それ自体を説明する範囲となると言える。

TCE観点から、企業の存在とは、「市場における取引コストが高い部分を内部的に取り込んだもの」となる。

完全競争を元にした古典的な経済学では、無数の生産者がいると仮定されており、すなわち概念上企業の大きさはゼロであり、企業の存在意義を説明できない。

それに対してTCEは、市場の対極にいるのが企業である、という概念を主張するものである。この「対極」という概念をハイラーキー(ヒエラルキー)と呼ぶ。

(21:40 P142)

「実証」と「規範」

2つの違いを理解しておくことは重要だ。

実証はメカニズムを説明しており、規範は「~すべき」と言っている。

つまり、規範は理想であり、実証は現実である。

経営学では規範となるTCEを実証する研究が大量に蓄積されており、おおむね肯定的な結果が得られている。

ハイブリッドガバナンスは市場とハイラーキーの中間である。

代表例がアライアンスだ。市場取引の側面を持ち、組織として共同作業をするハイラーキーの側面も持つ。

このように実際のビジネスでは他にも多様なビジネス取引ガバナンスがあり、それをTCEに含めた論文がある。

これはグローバル経営においてよく応用される。ライセンシングやフランチャイズは完全なハイラーキーへの進化段階と言える。100%子会社となれば完全なハイラーキーと言えるだろう。

TCEの取引コストが高いと言えるのは新興国である可能性が高い。司法制度が整っていないなどの障壁がある場合が多いからだ。インドなどは不正裁判に似たような判決で進出企業が割を食うことが頻繁にある。

ただし、全体的に見て世界的には取引コストは低下していると見るべきで、それを前提として戦略を立てるべきだ。

ボーングローバルの台頭、コングロマリットへの解体圧力など、TCEが説明できる範囲は膨大だ。思考の軸として重要という意味が理解いただけただろうか。

(22:00)

P151 ~ ゲーム理論

有名なやつ。紹介してきた経済学ディシプリンの理論のほとんどの背景にはゲーム理論があると言っても良い。これもやはり「思考の軸」と言ってしまう。

簡単に言えば、「自分がこの行動を取ったら、相手はどのような行動をするのか?」あるいはその逆について合理的に予想し、相互依存とメカニズム、その帰結を分析するものだ。

2社で寡占する「複占」での競争戦略に絞って解説していく。


・クルーノー競争

1. AとBがあり、お互い今年は15億ドルの利益がある。

2. 来年、「増産」と「現状維持」2つの選択がある

3. 相手がどちらかはその年にならないとわからない

4.お互いが増産した場合、値崩れが起きて17億ドルに留まる

5. 自分だけが増産した場合、25億ドルとなり相手は15億ドルとなる

取られる選択肢によって、4つのシナリオが考えられる。これはお互いが合理的判断に基づいて行動した場合、ナッシュ均衡に収束する。

この場合、「相手の状況とか関係なく、増産した方が良い」となること。


・ベルトラン競争

クルーノー競争では取り上げられなかった価格戦略が重要である場合を想定する。同時ゲーム且つ価格ゲームである競争をベルトラン競争という。

・2社とも現状維持なら利益は15億ドル

・B社だけが値下げした場合、A社の顧客の多くを奪うことが出来、20億ドルの利益となる。A社の利益は3億ドルまで低下する。

・2社とも値下げをする場合、顧客数は変わらないが利益が下がるので、それぞれ5億ドルと7億ドルとなる。

この場合も、両社が合理的考えに則った場合、2社とも値下げせざるを得ないというシナリオがナッシュ均衡となる。

このように両者とも非協力的な競争をした結果、両社とも利益を失う状態をベルトランパラドックスという。

しかし結託して価格を維持するというシナリオは現実では競争法違反であるので、この場合はやはり値下げせざるを得ないという問題がある。

どうしたら避けられるのだろうか。いくつかの視点がある。

1. 差別化

2. ビジネスの特性

3. ?


・エスカレーターで立つのは右か左か

AさんBさんがエスカレーターに乗ろうとしている。2人共「いかに周りに迷惑をかけずに立つか」を考えている。

このような場合、次のような結果になる。

・Aさんが右に立つならBさんも右に立つ

Bさんの意思決定はAさんに依存しているので、Bさんに支配戦略はないということになる。Aさんもまた同じである。

この場合、ナッシュ均衡は右と右、左と左、2つ存在している。

これは非協力の同時ゲームで決まるナッシュ均衡といえる。

東京や大阪のエスカレーターに立つ側が各々右と左で変わらないのは偶然であり、変わる必要がないから変わらないナッシュ均衡の例といえる。

同様に、なぜキーボードがQWERTY配列なのかも、ナッシュ均衡だからなのだと経済学では主張されている。社会的で合理的な多くの物事はゲーム理論で説明がつくと言っても言い過ぎではないのかもしれない。

(22:30)

P167 ~ ゲーム理論②

同時ゲームに加え、順番に意思決定をする状況を「逐次ゲーム」と呼ぶ。

同時ゲームはじゃんけん、逐次ゲームはチェスだ。

逐次ゲームには以下の性質がある。

・後手は先手の動きを知った上でコマを動かせる

・先手は自分の動きを踏まえて後手がどう行動するか予測を立てられる

詳しくはあれするが、先手を打って「再来年に増産する!」と敢えて宣言することで、後手のシナリオは狭められ、先手の有利に働くなどの場面が想定される。ゲームチェンジャーになりうるのだ。このような場合、先手はリーダー、後手はフォロワーと表現される。

ビジネスにおいてこれを成り立たせるには、その宣言が不退転の決意であることを相手に理解してもらう必要がある。銀行に多額の借り入れをするなど、出任せではなく信頼に足る発言だと分かってもらわなければいけない。

数量を軸にしたゲームの場合、リーダーは「増産」という強気の戦略を取ることが利益に繋がりやすいといえる。一方で価格を軸にした場合は「補完的(同じ選択を取る)」になりやすいので、弱気の戦略が有効になるといえる。

(22:45 ここでしばらく放心状態となる)

P180 ~ リアル・オプション理論

紹介してきた経済学ディシプリンの最後として、リアル・オプション理論を紹介するよ。

オプション理論は70年代からファイナンスの分野で発展してきたよ。リアルオプションの歴史は①金融工学→②事業評価・計画法→③経営理論というふうに発展してきたよ。②を軽く触れた上で③を紹介するよ。

・事業評価法・計画法としてのリアルオプション

現在でも事業評価の定番手法はDCF法だが、リアルオプションが革命だったのはDCF法では不十分だった「事業環境の不確実性」を評価に活かす術を提示したことである。

DCF法を簡単に言うと、「将来その事業が生み出すキャッシュフローを現在価値に換算して合計し、初期費用を差し引く」というもので、結果プラスなら投資すべきだし、マイナスならすべきでないということになる。

しかし実際には将来のことには不確実性があり、参入する市場の成長率を予想し、大コケを恐れて低めに設定したりする。結果、「やらない」ということが往々にしてある。

対してリアル・オプションでは、その不確実性を活かすという発想をする。考え方は至ってシンプルだ。それは「当初計画よりも小さい費用で工場をつくって、とりあえず事業を始める」ことを考えるのだ。

最初の3年間は当初構想よりも4割程度ではじめ、成長性が高いと判断すれば6割を投資するという考え方だ。悪ければ撤退すればよいし、このままでいいと判断すればそのまま続ければいい。

これにはいくつかのメリットが有る。

1. ダウンサイドの幅を抑える

2. アップサイドのチャンスを逃さない

3. 不確実性が高いほど、オプション価値は増大する。

企業にとって権利はあるが、義務ではないという柔軟性の価値の総称をオプション価値と呼ぶ。

人間は不確実性をネガティブに捉えがちだが、逆に言えばそのような時とは「上ブレ(アップサイド)の可能性が高い」ということであり、オプション価値が上昇する。

そして、

4. 学習効果 というメリットも外せない。

新しい事業を始めれば、様々なデータ、知識を蓄積でき、経験を通じて、事業環境への不確実性も下がってくる。はじめなければ不確実性は下がらない。

以上が、事業評価・計画法の骨子である。

これを応用した経営理論のリアル・オプションとは何か?

根本の原理は先のものと変わらないが、特に代表的な3つのオプションがある。

1. コール・オプション(先述のような、まずはお試しでやってみようというスタンスの戦略)

2. スイッチング・オプション(複数の不確実性の高い市場に身を置き、全体のリスクヘッジをしながらアップサイドを取る)

3. 撤退オプション(不確実性が高い時に、撤退しやすくしておくオプション。事前にそういったデザインを組み込んでおく)

日本国内においてリアル・オプションの重要性は高くなっていくだろうと考えている。グローバル化、規制緩和、技術革新のスピード化により、事業環境の不確実性が一層高まる可能性が高いからだ。実際この背景を受けてそのようなビジネス思考への注目は高まっている。

ここまで、リアル・オプションの有用性について解説してきたが、これらは万能薬では決して無い。応用範囲は一定の条件を満たした場合に限られる。

1. 投資の不可逆性が高いこと(いったん投下すると撤退できない性質の投資であること=リアル・オプションの有用性が高い)

2. オプション行使コストが低いこと(コストを下げるスキームを事前に組み込む)

3. 事業環境の不確実性が高いこと(オプション価値が上昇するような場面であること)

不確実性とはそもそも一体なんだろうか?

内生的か、外生的かの2種類に分けられる。

外生的な不確実性とは、企業が自助努力ではどうしようもないタイプの不確実性を指す。M&Aにおいて、買収する側の企業が相手企業のいる市場の成長性や、価格の将来動向などを自分たちの力で下げることは難しい。

一方で、直面する不確実性がターゲット企業の技術レベルだとしたらどうだろうか。こういう場合にはオプション的戦略は必ずしも有効ではないと言える。(人を送り込んでデューデリジェンスを行うなどを講じる必要があるだろう)

もうひとつ、有用な不確実性の種類分けに「4つのレベル」というものがある。

・レベル1 確実に見通せる未来

・レベル2 他の可能性もある未来

・レベル3 可能性の範囲が見えている

・レベル4 全く読めない未来

これらレベルに事業環境の不確実性を当てはめると、分析ツールの選定などが出来ていく。

しかし、「事業環境の不確実性を見抜く力」はここまでで学んできた「経済学ディシプリン」の理論で身につくのだろうか?否、身につかない(反語)。なぜなら「事業環境を見抜く力」は、人や組織がいかに事業環境を「正確に認知できるか」にかかっているからだ。すなわりこれは経済学ではなく、認知心理学の領域といえるのだ。(な、なんだって―!!!)

経済学ディシプリンを思考の「軸」とするには、心理学ディシプリンの補完が不可欠だ。つまり、俺たちの冒険はこれからだ。

(0時16分、ギブアップです!)

以上、今回はP198まで。久しぶりの読書だったんだけど、めちゃめちゃ頑張ったなって感じです。途中、麻婆豆腐食ったりとかはしたけど、6時間通しで本読むことある?僕はないです。義務感ってこわいですね。計画的に読むべきだわ。

結局、P800とかには全然届かなかったけど、全力尽くしたんで、後悔は無いっス。

それにしても、心理学ディシプリン、気になる~~っ!!って人(ここまで読んでくれた人が一人でもいるのか甚だ疑問だけど)は、Amazonで買って読んでくださ~~~~~~い(投げやり)

ちなみにこの本を読んでる間に、メルカリで3冊売れてました。

ちなみに、こんな稚拙なレビューを読まなくてもダイヤモンド・オンラインとかハーバード・ビジネス・レビューとかが本書のレビューを書いてます。今知りました。はは~~ん

(一気読みしようとしなければ)良書です。

読んでくれてうれしいです。