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だから僕はAmazon Primeをやめた

タイトルは釣りだ。これは俺のこれからの人生に対する、嘘偽りない決意表明だ。

釣られた人の想像よりやや斜め上を行く、とある男の確固たる意志の表明だ。

私事を臆面もなく書くのがもうひとつのテーマなのであっけらかんと言うが、実は久々に、とある女性に近々告白しようかと考えていた。

彼女要らないなと思った矢先に何故か彼女が出来てしまう、恒例のパターンがついぞや来たかと思われた。

そう思われたので、これまた当然のように恒例の妄想をしていた。問題無く付き合え、お似合いバカップルとして歩を進めていく都合の良い妄想を。

自分で言うのは何だけど、少ない経験則によるとこれが意外や結構当たる。勿論実際にはそれから思いもよらない障害が二人を阻んでからが正念場となる、凡庸な起承転結までがワンセットなのだが。

正直、今回もそれで問題無いかのように見えた。精神衛生上にも、一度こうなったら実際にアタックしなければどうにもならない事が分かっていた。

砕けたって、好きなのだからしょうがないと割り切れるのは知っていた。

が、


やめた。

好きなのをやめたんじゃない。そんなに器用ではない。

ただ唐突に、今そうするべきじゃないと悟った。

安寧の地に縋るべきじゃない。

お前は孤独を這って行く時なんだと言われた。

満身創痍でないお前がそれで得られるのはどのみち、付き合えた事への安堵と気休めか、付き合えなくてもしゃあないと諦められる程度の、そんな薄っぺらい上に成り立っていた関係性の揺らぎだと。

そう自分が言っていた。

ああ俺様よ、お前は分かったような事を言うが、大切な人と人というのは、限り有る時間を少しでも長く一緒に居るべき同士なんじゃなかったか?俺が孤独を感じたところで、誰が得をするのだ…

そうは言いつつも、もう分かってしまっていた。俺は純粋に、俺の認める俺でなければいけない。後5年という歳月を考えた。月にしてぎょっとした。

60ヶ月。

俺はあと60ヶ月で、俺の認める何者かに成らなくてはならない。そう思って彼女や、俺の将来を訝る友人、そして志を伴にする親友の顔が浮かんだ、

…が、

関係ない…

関係なかった。最初から。他人に、親に、譲歩し、説得し、気を利かせ、それでいい、規範であれ、そう生きてきたつもりだったが、そんなことなど構うことなく、誰もが自分の人生を生きるべきだった。

俺が何をしたかで、幸福度が右往左往するような人間は、自分の人生を生きていないだけだった。全く余計なお世話だった。

だから僕はAmazonプライムをやめるのだ。なんてコスパの良い、素晴らしいサービスだと三日三晩、万歳三唱する程度には好きだった。こんな愚かな決断には誰もが後ろ指を指すし、両親もなんてバカな息子を持ったものだとさぞや肩身の狭い思いをすることだろう。

強いて言えばついぞまでNetflixで彼女とだらだらする休日を思い浮かべていた程に、動画は日々の癒やしだったし理想の暮らしだった。

でもやっぱ俺、間違ってたよ。キラキラした誰かを見て、何となく充実した気持ちを手に入れるのは無駄とは言わないが、そんなものはインプットですらなかった。少なくとも俺にとっては。頑張ろうと背中を押された気になってただけだった。

結局、大事な物は自分の中にしか無かった。聞こうとしてなかった。誰の為にだの、周りがとやかく言うやりがいだの、そんなものは自分の声を遮るノイズでしかなかった。

なあ、やれよ。お前はやれるヤツだという証明のためにやれ。俺が認める俺になるまでやれ。彼女?バカか。そんで合コンなんかは一次会で帰れ。他人の予定に振らされるな。梯子酒も、話すこと話したら周りに合わさず帰れ。お前にはお前にしかやれない事がある。お前にはお前の人生がある。それを必ずしも理解される必要はないし、されようとするな。甘えるな。

お前が甘えて良いものは、少なくとも後5年は何も無いよ。あるように見えるのは錯覚だ。愚痴を肴に一杯呑んだら充分だ。何度でも言うぞ?お前は誰かに認められる事では満たされないよ。俺が俺を見てるからね。

やれよ。もうフワフワしたポエムは充分だ。お前は充分悟っただろ。命に感謝だの今が大事だの言ってきただろ。これだけべらべら御託を垂れて何もしませんでしたとなればお前の人生、まるでバカそのものだと唾吐いてやるさ。

血反吐吐いてやれ。ここまで良くもまあのうのうと生きてられたな。いけしゃあしゃあとのらりくらりと躱してな。


知らせがある。

良い知らせと悪い知らせの両方がある。

悪い知らせは、お前はひとつ失恋したってことだよ。まあ分かってるだろうけど。

これをバネに頑張りやがれ。口だけのヤツに言いたい放題言われてんじゃねえよ。お前がお前の夢を掴むんだ。それだけだ。それ以外無いよ。ぼけっと次のヤツ等にバトン渡すな。お前がくたばる迄お前がやれよ。黙ってやれ。黙々とやれ。お前はお前が思ってるよりやれるやつだとお前自身が痛い程、窒息寸前まで後悔する程やってやれ。辛くてもやれ。どうせ5年だ。


良い知らせは、これが人生で最後の失恋だってことだ。

これは多分だけどな。

読んでくれてうれしいです。