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総括資料をつくる

はじめに

 会社で一週間後に総括発表をやるように言われている。部署編成が変わりたった一ヶ月で何を総括するのかという声もある。私の場合は逆に毎週アクション内容を課内で発信し続けているので、資料じたいは作成可能だと思うが、休日に資料作成に取り掛かるのはやはり面倒だし、疲れている。ちなみに「総括」という言葉の響きには、以前からどこか「赤い」匂いがする。そういう匂いを感じとっているのは私だけかもしれない。

発表資料作成時の注意点

 構想も練らずにいきなり発表資料を作るのは野暮である。そしてポイントを外したプレゼンを聞いている時ほど虚しい時間はない。そこで一人でブレストしてみる。

  • 自分なら発表内容をどう評価するか(主観)

  • どのような項目が評価ポイントになるのか(客観)

  • 何を発表することが求められているのか(TPOをわきまえる)

  • 何が(どういったメッセージが)刺さるか(バズワードや時代性を考慮に入れる)

  • 他の発表者はどのような内容を発表するのか(似たり寄ったりの発表をするのは無駄である)

  • 過去の発表者は何を発表してきたか(車輪の再発明は聞き手を飽きさせる)

  • インパクトのある発表をする必要があるか(インパクトのある発表をする/しないメリットとデメリットについて考える)

  • どのようなデータが必要か(Appendix資料)

  • 発表の内容が実績と相関しているか/していないか(それは数値分析可能か)

  • 発表の内容は、発表者自身だけでなく聞き手を含めた社内の今後の実績に寄与するか(内容の有益性)

ざっとこれぐらいのことは考慮にいれなければならないだろうが、それはあくまで理想論であって、そこまで考えた上で資料を作成できるかどうかというのは別問題である。

目次を考える

 スライド資料を社内では「アジェンダ」と表記している。私は「コンテンツ」で良いのではないかと思うが、聞き手に違和感を覚えさせないことも大事なので「アジェンダ」と表記する。スライドの順番はだいたいこんな感じだ。

  • タイトルページ

  • アジェンダ(目次)

  • 自己紹介(導入)

  • 内容(本編)

  • Appendix(添付資料)

  • End of File(終了)

スライドにも論文と同じで形式がある。フォントの使い方にも作法がある。私は先輩から教わったが、そういうところは少しずつ学んでいくしかない。

何が(どういったメッセージが)刺さるか(バズワードや時代性を考慮に入れる)

 バズワードといえば、一年前であれば「メタバース」であった。ここ最近聞かれるようになった言葉といえば、「人的資本経営」だとか「リスキリング」などであろうか。
 直近で最もビジネス界を賑わせているのは「ChatGPT」である。ChatGPTとは、自然言語でどんな質問に答えてくれるツールである。ただし、ChatGPTのポイントは、「自然言語」を使いこなしているという点にあり、「回答内容の信頼性」にあるのではない。というのは、周知の通り、ChatGPTの回答には虚偽の内容もよく散見されるのだが、「虚偽の回答をする場合がある」という本来ネガティヴに捉えられるべきその仕様が、ChatGPTの影響力やその存在そのものを否定するほどのことではなかったからである。ChatGPTはマッチングアプリに最適なツールではないかと思う。釣られるのが男性か女性かはわからないが、ChatGPTにジェンダー役割を持たせ、実在しない人物の男性または女性のチャットボットとしてなりすましてもらう。ChatGPTの自然言語がすでに男性または女性になりすますことができるという点が驚異的であり、ある程度定型的な質問にはChatGPTで対応できるだろう。

GPTの仕組みを活用する

 このようにChatGPTへの熱が非常に高まっているのだが、この時代状況を正確に言い直すならば、単に「GPT」すなわち生成AIへの機運が高まっているというべきであろう。文章を介したサービスが「ChatGPT」であり、一方で画像生成AIの影響力も顕著になっている。
 私のような営業職がGPTの仕組みを活用するとしたらどうなるだろうか。まずChatGPTのネックとなるのは、最新の情報は未学習であるので回答され得ないという点である。営業で重要なのは情報格差であり、情報格差の利鞘で儲けているようなものである。その点では、最新の情報が反映されていないChatGPTよりも臨機応変に学習可能な人間の方にまだ分がある。
 ここでひとつ発想を変えよう。GPTをそのままサービスに組み込んで提供するのではなく、GPTの背後でその驚異的なサービスの質を高めている仕組みそのものをリバースエンジニアリングするのである。どういうことか。
 まずGPTの学習には四つの類型がある。「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」「深層学習」である(古川・酒井2023:71)。

  • 教師あり学習:大量の答えをAIに学習させること。

  • 教師なし学習:答えを予め与えずにAI自身に判別させること。

  • 強化学習:一定のルールに沿ってアウトプットに対するプラスとマイナスの報酬(スコア)を学習させること。ここには人間の手が介在している。

  • 深層学習:インプットに対して中間層がその特徴量を判断してアウトプットすること。

GPTのような生成AIが高い水準で人間のように振る舞うことができるのは、人間の脳を模した学習モデルを採用しているからである。であれば、この学習方法を逆に人間に応用すればいいのではないか、というのが私の言い分である。しかもそれが優れたマネジメントを行っているところではすでになされている可能性がある。  「教師あり学習」は、われわれ人間の場合で言えば、授業や研修を通じて学び、問題を解くなどして学習させること、いわば座学である。
 「教師なし学習」とは、現場で実践を通じて学ぶこと、いわばOJTである。「強化学習」は、上司から部下へのフィードバックのようなものである。つまりアウトプットに対して適切なフィードバックを行うことであり、良い点を褒め、出来ていない点を言語化して伝えることである。では「深層学習」はどうだろうか。人間の場合にも「深層学習」の中間層にあたるものを仕組み化すれば良いのだ。これはどうやってやるのか。私の中では答えがもう出ていて、一橋大学院のゼミ形式にヒントを得ている。要するに、教官が答えを言わずに、ゼミ生たち同士で内容を判断させるのである。その際に「中間層」に該当するのがゼミ生たちであり、彼らが説明不可能なシナプスを形成し始める時、アウトプットの質の水準が向上するのである。

文献

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