悠季 弓仏(ゆうきひいろ)
オリジナル長編オートマティスム小説です。 それぞれの理由で人類の革新を目指す者たちが、あの手この手でその方法を探っていく物語です。 ぼんやりとした残酷描写と軽挙妄動としか言いようのない性描写があります。お気をつけください。 R-18サイト『ミッドナイトノベルズ』でも連載中です。
悠木弓仏のショートショート小説集です。 すべての作品をオートマティスムで書いているので意味不明なところがありますでしょうが、作者自身の心の奥底から湧き出た本心でもあります。 よろしくお願いします。
地球暦1089年、冬―― リゴッド皇国が、北の大地にあった小国ウィンド王国を植民地化してから六十年あまり。 いよいよリゴッド皇国陸軍による旧ウィンド王国勢の大規模な殲滅作戦が始まった。 地道な地下活動により支援者を確実に増やし続けた旧ウィンド王国の末裔たちが、一万の兵士を確保し、反抗の狼煙をあげたためだ。 旧ウィンド勢の反抗の中心となったのは、六十年前のリゴッドによる電撃的侵攻作戦に敗れた当時の王国の若き兵士たち……つまり老人たちだ。 そして、その子供と孫たち
演説を終え颯爽ときびすを返し引き揚げるエンリケ後悔皇子をよそに、大観衆の盛り上がりは最高潮に達しようとしていた。 若者たちが興奮を抑え切れずにお互いを殴り合った。戦勝記念広場に集まった五万の人は、嵐で荒れ狂う海のように入り乱れた。 その最前列にいたフェルディナンドとクリストフはしかし、冷静に腕組みをし佇んでいた。 「妙な話だぜ! “後悔”することを奨励するだって? クリストフ、お前がオレにどうしても見せたかったものがこれかよ」 フェルディナンドがあざ笑う
地球暦1121年5月15日―― 『対ウィンド戦勝記念日(Victory over Windo)』のその日、皇都ルームの戦勝記念広場では戦勝二十九周年記念式典が執り行われようとしていた。 例年ならジョアン大皇が祝辞を述べるところだが、今年は皇太子のマルコと共に長期の海外視察中とあって、代わりにエンリケ第二皇子が演説をすることになっていた。 ルームの街では、事前に漏れ聴こえて来た演説の内容――「世界をより良くする方法」――が話題になっていた。 「戦勝記念日と何の関
第一章:『黎明の大後悔』 第1悔 『その男、ボボン』 地球暦1121年、春のおわり―― 雲ひとつない、まさにリゴッド晴れの日曜の昼下がり。 東西南北、大小さまざまな四つの島からなるリゴッド皇国の皇都ルームがある東島――いわゆるリゴッド本島――その南端。 今現在、この国で唯一海外への渡航が許されている港、ポルト・フレイアでは盛大な歓送会が執り行われていた。 主役は先日行われた伝統ある『ミス・七つの海を知る女』コンテストで、急遽の飛び入り参加で
彼女は犬を飼っていた。 名前は『ブテロ』だという。 エスペラント語をヒントに名付けたらしい。 「変わった名前だね。エスペラント語って……どこで使われてるんだっけ?」 何でもいいから話をしたい一心で、僕は彼女に尋ねた。いや、実際に何のことか僕には分からないのだから問題ない。 「わたしも詳しくは知らないんだ」という事だった。 そうか、猫っぽい気まぐれな印象を他人に与える彼女が、犬を飼っているのか。 「どんな感じの犬なの? 犬種というか……」 犬に
ルゲ郎は激怒した。 必ずあの泥棒娘を爆殺しなければならないと覚悟した。 ルゲ郎のスマルトフォンを持つ手は震えていた。スピーカーからとぼけた声が聞こえる。 《 あれ? そうだったっけ? ルゲ郎にちゃんと返さなかった? 》 「言った風な事、聞くなぁーっ!!」 投げつけられたスマルトフォンが、〈バシャッ!〉と音を立て部屋の壁にぶつかった。 イライラしたルゲ郎は、頭を抱えベッドにうずくまった。大きな物音を聞きつけ、すぐに母がやって来た。 「どうしたの!? ルー!
「おい! てめぇを地獄に送ってやんよ!」 あの時は、クラス中のみんながビクッたし。だって、テスト中にケリ雄がいきなり大声出すから。しかも、担任のセンコーに向かって。 はぁーあ、何してんだか……って感じなんだけど。 ケリ雄はあたしのカレシだから。 ちょーウケるのはセンコーの蟹江。ケリ雄にビビッてキョドってんの。でも、そのあとがマジヤバかった。ホントの意味でヤベーの。 センコー、いきなりブチキレちゃって。ケリ雄に蹴り入れて教室の隅まで吹っ飛ばしたし。 「
ケロロロロ……ケロロロロ…… 事務所の電話が鳴り続けている。 パーティションで区切られただけの応接室の椅子に深く腰掛け仮眠をとっていた男が、面倒臭そうに目の前のテーブルの上のスマートフォンを取る。 「ふぁあぃ、こちら……えーと――」 ケロロロロ…… しかし、電話のベルは鳴り止まない。 男のスマートフォンではなく、事務所のデスクに設置された固定電話が鳴っているからだ。 それでも男は、寝ぼけながらスマートフォンに話し掛け続ける。
悠木 弓仏(ゆうきひいろ)と言います。 「弓へんに仏」と書いて「ひいろ」と読ませる創作漢字でいきます。 「弘(ひろ)」の間に「イ」が入って、「ひイろ」――転じて「ひいろ」というわけです。 自動書記的なやり方で趣味の小説を書いています。 元々は自作漫画の為にシナリオを描いていたのですけど、絵を描くのが極度に遅く――また根気がないため――作品を完成させたことが無く、で、あればいっその事文章のままで発表してしまえと思い立ったのが、始まりでした。 というわけで、『小