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Dare#13+インタビュー|Erv100 x Andres Cocoについて

SNSやインターネットの恩恵による、ボーダーレスなコラボや新たな才能の発掘は、アーティスト同士の関係構築やローカルなアーティストへの可能性を確実に広げてきました。

その中で、言語による隔たりが無く、純粋に音楽性で勝負できる利点もあって、日本人のビートメイカーと海外アーティストのコラボは促進され、海外のマーケットで高評価を受ける事例も続々と増えていますよね。

今回は、アメリカ南部バージニア州のMC、Erv100と、東京を拠点にDJ、プロデューサーとしても活動中のAndres Cocoの日米タッグをピックアップします。

また、いつもの「DARE Issue」のデラックス版として、アーティストのバイオグラフィに加え、Andres Cocoのエクスクルーシブなインタビューを組み込んだ企画にしてみましたので、ぜひ最後まで読んでください。

Erv100のバイオグラフィ

Erv100(本名:Ervin Price)は、バージニア州アレクサンドリア出身の37歳のMCです。現在、「Smokers Circle」というインディペンデント・レーベルを立ち上げて活動しています。

MC名の由来は、"Erv"が本名から、"100"は自分らしさやリアルであるという意味からきています。同郷のエンジニアから名付けられ、当初は、E.Pと名乗っていたそうです。

影響を受けたアーティストには、Scarface、Devin The Dude、UGK、Ice Cube、Biggie、No Limit、Cash Money等、西海岸や南部出身のベテランアーティストを中心に挙げています。

Ervの音楽は一聴すれば分かる通り、サマーヴァイブとストーナーチューン、そしてレイドバックしたユル煙たい空気感を随所に漂わせます。

日本でも人気の高い、Curren$yを筆頭とする「Jet Life Recordings」関連の音源を好むリスナーであれば、彼の作品に共感することは間違いないでしょう。

また、彼はJet Life所属のFendi P、Fiend(元No Limit)、現在は脱退した、Young Roddyらとも共演しています。

Erv100と親交のあるプロデューサー

近年のErv100の作品を手掛けたプロデューサーは、DMVエリアを拠点とするDianaRo、Jet Lifeのインハウス・プロデューサーでもある、サウスカロライナ州チャールストン出身のEyezc Haze、そして、東京都出身のCedar Law$等が挙げられます。

彼、彼女らは共通して、ネタ感のあるムーディでメロウなサウンドを提供し、Ervのスモーキーで心地の良いフロウと溶け込み、抜群の相性を示しています。

日本人プロデューサーのCedar Law$は、既に多数のUSアーティストとのコラボでも注目を集め、自身の手掛けた楽曲が、US Hip HopチャンネルShade 45でもプレイリストに入る等、着実にそのキャリアを積み上げています。

Ervとはこれまでに、2019年作の「FarSide」、2020年に「Elevated Stars」、翌年には、続編となる「Elevated Stars 2」の3作をコラボリリースしています(次項、参照)。

また、今年の春頃には、4作目となる「Elevated Stars 3」のリリースも控えているそうです。

Cedar Law$の概要はこちらの記事でも紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

Erv100のディスコグラフィ

Erv100は、リストをご覧頂ければ分かる通りの非常に多作なMCです。2011年以降から近年にかけては、特に活発なリリースを行っています。

過去のアルバムやEP、Mixtape作品を中心に把握できた範囲で掲載します。

一貫性を感じつつも曲調の幅感もあり、どれも煙を燻らしながら聴きたくなる作品ばかりです。

Andres Cocoのバイオグラフィ

先日、Erv100とのコラボシングル「Independent」をリリースした、日本人プロデューサーのAndres Cocoについて、これまでの活動や経歴を紹介します。

Andres Cocoは現在、東京を拠点に精力的な活動を行っている、DJ兼プロデューサーです。

主に、アンダーグラウンドなHip Hop、Dubstepを軸に、フレキシブルなDJプレイが注目され、都内のクラブを中心に活動中です。

"音楽"に対する彼女の純粋な探究心は、時にエモーショナル、時にハードで重低音が唸るサウンドを求め漫遊しています。

それは、彼女のプレイリストやビートメイキングにも顕著に表れており、私たちを、Andres Cocoの"好奇心のライブラリー"へと招待してくれます。

Andres Cocoの経歴

21歳で初めて、アメリカ・ニューヨークの地に足を踏み入れた彼女は、小学生の頃から夢中だった、"ナマ"のブラックカルチャーに触れ、その憧れが確かなものと再認識します。

23歳の時に経験したカナダへの移住は、DJとしてのキャリアの出発点でもあり、音楽を通じた人々との関わりや、文化に対する彼女自身の理解を深めることを助け、大きな成長のきっかけとなりました。

帰国後は、大阪・京都を中心に、関西エリアで活動を継続し、2018年頃から拠点を東京に移します。

その他にも、音楽イベントの企画やキュレーターを務め、イギリスのROMderful、韓国のWYBH、BRLLNT、MIGNON、フランスのONRAといった、ワールドワイドなアーティスト達の来日イベントの開催に大きく貢献しました。

また、Pete Rock&CL Smooth、The Beatnuts、Shingo02、Stones Throwの所属アーティスト等を始めとした、来日ツアーの際の前座としても活躍しています。

最近では、ランニングイベントへのMIX提供や、マレーシアのレーベル、AbstractNatureのラジオMIXの提供等、その活動領域は多岐に渡ります。

彼女のベースはHip Hopでありながらも、一般にカテゴライズされたジャンルの枠組みには収まらず、今後も様々なフィールドにおける活躍が期待できます。

これまでの人生経験で培ったクリエイティブな感性を武器に、アグレッシブに活動の場を拡大するアップカミングなアーティスト、それがAndres Cocoです。

Andres Cocoのエクスクルーシブ・インタビュー

今年は、ビートメイカー、プロデューサーとしての飛躍も一段と期待される、Andres Coco本人に直接インタビューさせてもらいました。

彼女は本当に感性が豊かで、めっちゃフリーキーなフライガール(笑)!音楽やカルチャーに対するリスペクトや情熱もすごく感じます。

勉強熱心で、外部からインスパイアされた物事も柔軟に受容しつつ、自己流にアウトプットする"巧妙さ"を持ち合わせています。

気取らず、フラットに自己表現ができる彼女の人柄も含め、読んでくれた人に伝わって欲しいです。

Erv100との制作に至った背景やCedar Law$君との出会い、ビートメイクにおける、彼女自身のHip Hopとの向き合い方をパーソナルな部分と共に語ってくれました。

それでは、どうぞ!

―シングルリリースおめでとうございます。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

Andres Coco(以下、Coco):Andres Cocoです。出身は奈良県で、街に出るには1時間に3本程しか出ていない単線が最寄駅になる、田んぼと雑木林が多い所で育ちました。

小学生の頃はお母さんにお願いして、少し遠い町にあるTSUTAYAに、CDを借りるために連れて行ってもらうのが楽しみでした(笑)。

現在は、奈良から東京へ拠点を変えて活動しています。

―今回、Erv100と一緒に制作することになった、きっかけや経緯を教えてもらえますか?

Coco:確か、2019年に中野「heavy sick ZERO」でDJしていた時に偶然、Cedar Law$が遊びに来ていて、フロアで軽く話している時にErv100の事を教えてもらったと思います。

Cedarとはその日に初めて会ったのですが、丁度その頃、彼とErv100で「FarSide」というEPをリリースしたタイミングだったんです。

そのEPがかっこよすぎて、CedarとErv100の大ファンになって、その日を境にErv100の作品を買ったり、新作を逐一チェックしてDJでかけまくっているうちに、Erv100から直接連絡が来るようになりました。

今回リリースに至ったビートは、ビートメイキングをスタートしてから初期の頃に作ったものなんですが、自分的にはかなり気に入ったので、何十回も聴いてるうちに、これにラップが乗ったらどうなるのかなと思ってきて。

今自分が一番気に入ってるビートを送るなら、今一番好きなアーティストに送ろうと思ったのが最初のきっかけですね。

―Erv100は、日本ではまだ馴染みの薄いアーティストだけど、彼についてはどんな印象を持ってます?彼のラップの魅力についても教えて欲しいです。

Coco:彼は早いスパンでコンスタントに制作を続けていて、割と様々な曲調の作品を出してるんですが、どんなビートに対しても余裕を持って自分のラップを乗せているイメージですね。

低音の太い声質で、ビートにまとわりつくような気怠さに滑らかなフローが、どんな曲調でもErvにしかない独特な雰囲気になる気がします。

個人的には、サビ/展開の作り方やラップのフローが超かっこいいと思いますね。

―パーソナルな部分について聞きます。DJとしてのキャリアは長いみたいだけど、ビートメイクは割と最近始めたそうですね。具体的にはいつ頃から?始めようと思ったきっかけについても教えてください。

Coco:2021年5月に、正式に「Ableton Live 11」を買ってから本格的に始めました。それまでにも「GarageBand」を使用し、何度かトライしたこともあったんですけど、今振り返ると全然使い方をわかってなかったなと思います(笑)。

ビートメイクを始めようと思ったきっかけは色々あるんですけど、一番大きなきっかけは、Dayzeroっていうダブステップの日本人プロデューサーがいるんですが、彼の影響が大きいですね。

Dayzeroの作品を聴き込んでる時に、彼がショーで自分の楽曲でDJをしてて、お客さんが盛り上がっているのを見て感動しました。

彼は、名古屋のKarnageというプロデューサーと一緒に、Vomitspitというインディペンデント・レーベルを運営しています。

あと、DJの時にダブステップとラップをブレンドしてかけてる時に、こういう曲欲しいな〜って思って、「自分でこういう曲作ってみよう」ってハッとしたのもあります(笑)。

―DJしかり、ビートメイクの引き出しの広さは感じるんだけど、メンフィス系統のトラップとかPhonkの影響も凄く感じます。それこそ、"Lil Ugly Women"とか(笑)。南部産のHip Hopからもインスパイアされた部分は大きいんですか?

Coco:東京に来てから知り合ったG-Rapオタクの友人がいるんですけど、彼に大量のオススメ作品を教えてもらって、その中でDJ SCREWにハマったのがきっかけですね。

以前はそんなに聴いてなかったんですけど、突然DJ SCREWのミックステープを聴きながら散歩するのに一時期ハマって、毎回、何時間もどこまでも歩いてました(笑)。

その延長で色々なアーティストの"Screwed&Chopped"されたテープをよく聴いてて、その中でも、Three Six MafiaのScrewed & Choppedされたテープを聞いて、カッケー!!ってなって原曲を漁りだしたと思います。

Phonkの声ネタが、Three Six Mafiaが多いっていうのは後から知ったんですが、そういう経緯が今の自分のビートメイクにも表れてるのかなと思います。

―Hip Hop以外でも、ダブステップやDUBとかも好きって話を前にしてくれたけど、Hip Hop自体がそもそも別ジャンルや様々なカルチャーを吸収して、昇華する事によって、サブジャンルに派生したり進化してきたわけだけど、自身のビートメイクにおけるこだわりもそういったところは意識してるんですか?

Coco:ビートメイクを始める前の話になるんですが、中目黒を拠点にしている、"中目黒の父"と呼ばれてる石井さんという方がオーガナイズしている、「90BPM TAKEOVER」というイベントでのDJを誘ってもらいました。

「90BPM TAKEOVER」は、【2013年に代官山AIRで発足した、LAの伝説的パーティ「Low End Theory」への想いと憧れを胸に、重低音&プログレッシヴBEAT至上主義を体現すべく都内で不定期ながらも開催を続けているパーティ。ヒップホップをルーツに進化を続けるビートミュージックをフィーチャーし、ヘヴィーエレクトロミュージックとヒップホップの融合を目指す】っていうコンセプトのパーティなんですが、このセオリーには良いタイミングで影響を受けたと思います。

今まで自分が聞いてきた色んな音楽を振り返ると、そういうセオリーが「ビートメイクにおけるこだわり」の一つになったのは自然な流れだったなと、今思います。

―本当に色んな所から影響を受けてきたんですね。このコラムは東海岸メインで書いてるので、ニューヨークや東海岸出身のアーティストで、フェイバリットな人がいれば教えてください。それ以外でもOK(笑)。

Coco:最近だと、The Doppelgangaz、Monday Night、Big Kahuna OG、KA。

若干地域が逸れますけど・・・(笑)、Freddie Gibbs、Statik Selektah、Cardoも。

―カナダのトロントに一時的住んでいた時にDJを始めたそうですけど、海外でDJを経験した中での印象深いエピソードとかありますか?

Coco:一番印象に残っているのは、帰国前に「Coco chan Night」という自分のイベントをした事かな(笑)。

当時、「Natural Wednesday」というオープンマイクのイベントに遊びに行っていた時、その箱のスタッフと仲良くなってオーガナイズする事になりました。

外の看板にこんな風に書いてくれて、面白いんですけどめっちゃ嬉しかったですね(笑)。

イベントに行くと、10代の若い子から恐らく30代後半までサイファーに参加してるのは印象深かったですね。その頃知り合ったMCやDJとは、今でも連絡取り合ってます。

他にも、毎週火曜日に行われているパーティーに毎回遊びに行ったり、DJをしていたんですが、ダンサーやラッパーがクラブの中でも外でもサイファーしていましたね。

―今後、コラボしてみたいと思うアーティストを教えてください。

Coco:Curren$y、LE$、NEME$1$、Young Gully、Big Kahuna OG、Bukkha、Subtle Mind

―最後に、これからのビジョンや既に進行中のプロジェクト等あれば、ぜひ聞かせてください。

Coco:直近での予定としては、「THE ANTHEM」からリリース予定のEVEE(写真:左)のファーストEPに楽曲提供で参加しています。

他のプロジェクトは、時期が明確に定まっていないので、リリースが決まったタイミングで発表をしていければと思っています。

あとがき

1/31にErv100とリリースしたシングル、「Independent」は、Apple Music、Spotifyを始め、各社ストリーミングサービスで配信していますので、ぜひ聴いてみてください。

また、Apple Musicの公開プレイリスト、「PLAYLIST OF ERV100」では、Andres Cocoのリコメンドする彼の楽曲が聴けますので、そちらもあわせてどうぞ!

※本記事は、BIOの情報提供・インタビュー等含め、Andres Cocoにも全面的に協力してもらい執筆しました。今後の2人の活躍についても、引き続き注目していきたいです!

Erv100 Instagram
Erv100 Twitter
Andres Coco Instagram
Andres Coco Soundcloud
◆DJ Booking:andrescoco02@gmail.com

peace LAWD.

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