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PL責任を持っているとかあつかましいにも程がある事この上(略

とある理由でPL責任というものを考えているのですが、いわゆる「ファイナンス職でのPL責任」というものを少し整理してみたいと思います。マーケティングや事業責任者の文脈では売上を創ってコストをうまくコントロールして利益を出すというのはイメージしやすいですね。しかしながらファインナンス職の人が売上や利益を達成することに責任があるとか言ってる記事を読むと何言ってんのこいつってなるのは私だけでしょうか。

ファイナンスのPL責任()

まだファイナンシャルアナリストをやってた時に、中国人のGMとあれこれ四半期の数字をどうやって達成しようかと議論してた時にボソッと「自分の仕事はお願いして営業やマーケティングにやってもらうことだ」みたいなことを話していたのをよく覚えています。その人は飛ぶ鳥を落とす勢いで米国本社からも持ち上げられていた人で日本のビジネスにテコ入れするために来たような人だったのですけど随分と弱気なのだなと思いました。実際のところ彼は日本語が出来ませんし、メディカル業界だったので有名な医者と話す機会を設けてもコミュニケーションが上手く取れるわけでもなく評判が悪かったとのことでした。GMというのは色々なバックグラウンドの人がいるので営業出身なら自分でトップセールスできるでしょうが彼には直接的に数字を作ることはできなかった。じゃあどうしたかというと組織を変え、営業インセンティブ制度を変え、本国と交渉して新製品を導入するなどしてそれなりに数字を作り、例によって2年くらいで別の事業部を担当することになったようです。まあ短期的に数字を作るための焼き畑農業で後任は後始末に苦労したはずですが、それはそれでGMの仕事をやりきったと言える。

会社は変わってコントローラー(経理部長みたいなもん)をしていた時ですが、マトリックス組織にありがちな製品事業部(開発)とアカウント事業部(営業)との間で責任の擦り付け合いのようなことが起きていました。製品の初期不良でお客の側にいるアカウントがWarranty期間中ということで無尽蔵に費用をかけてしまい、数億円の費用をどこのPLでコスト負担するかみたいな(実にくだらない)話です。実際にお金は使った後で会社としてはどこが負担しようが何も変わらないのだが。結論が出せないままエスカレーションが続いて本社のコントローラーが登場し大岡裁きみたいなトップダウンで決めるんだろうと思ってたのですけど、エグゼクティブ曰く責任者同士で話し合って合意しろと。え??お前いる意味なくね?ってなったのですが、「ファイナンスの仕事は問題がどこにあるのかを指摘して当事者間でコミュニケーションさせることだ」(キリッ)と言ってました。これも10年以上経っても覚えている話です。ちなみに当時の私はなんだファイナンスつまんねえ仕事だと思ったものです。

さて意識が高いファイナンスの仕事について書いている記事にあるような事業部にファイナンス面からアドバイスをする仕事というのは当然あります。やや単純化するとファイナンスという共通言語を使ってビジネスの青写真を描いて、経営課題を抽出するといったところでしょうか。これらを行うためにはビジネスの理解とパートナーとの信頼関係が不可欠ではあります。まあそれらをまとめてPL責任(笑)と呼びたいなら好きにしたらいいと思いますが、あつかましいにも程があることこの上ないったらありゃしねーな。

しかしながら、計画を実行するという観点でファイナンスに一体何ができるというのか。特にトップラインという売上を伸ばすということに関して言えば目標設定こそできても実際にできることなんかはせいぜい進捗管理とリスクのアセスメントくらいでしょう。ましてや事業部としての目標未達だった時にファイナンスマンが責任を取るって非現実的でバカな目標設定をしたことにごめんなさいでもするのでしょうか。まあ気の利いた人なら契約書のReviewやらで別の面から力を発揮できますが。

ちなみに多くの場合はファイナンス担当者が事業部にとって最も役に立つのはエレガントな言い訳をステークホルダーにする時だと思います。


これまでに様々な会社のファイナンスの責任者と話す機会があり、ファイナンスの役割やらについて意見交換をするのですが、こと実行ということに関してはファイナンス職にやれることはかなり限定的です。

1)ルールをつくる、2)ルールを人に守らせる、3)コミットメントしたことを人にやらせる

繰り返しますが、基本的にビジネスを実際にドライブするのは営業なりマーケティング、開発といったその道のプロたちがやることです。俗にいうビジネスパートナーとしてのファイナンスの役割は全体像を描いて課題の抽出と優先順位づけです。必要であればお金や人員というリソースを予算として確保するところまでができることです。実行面に関してはそれぞれの部門の人たちに「お願い」をして危機感を持ってもらいながら進捗を見守ることくらいしかできません。もちろん目論見通りにいかない場合には早い段階でどのようなリスクがあるのか関係者と共有するのも大事です。

そういうわけでビジネスの結果に対して責任を持つという意味ではファイナンス職というのはあくまでも黒子であり、実行の矢面に立つような当事者にはなることはないのです。例外があるとしたらコンプラ的な話やリストラなどのコスト削減の旗振りをする場合くらいでそれはまた別の話。

私は最近はどうしたら危機感を共有したり関係者の意識を変えられるのか考える機会が増えたのですが、それはやはり人に動いてもらうしかないからでリーダーシップとは何なのかについてはもっと掘り下げて考える必要があるようです。

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