Ami Ⅲ 第9章 キア星の秘密基地
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僕たちの船は、キアの山間部に向かっていました。
その間中、アミは、マイクでずっと誰かと話していたのです。
すると、彼は、大きな山に向かって直進するコースをとりました。
凄まじいスピードで、石の塊が僕たちに降り注いできましたが、それでも、アミはスピードを落とそうとしないのです...。
「墜落してしまうわ。」
とビンカが心配そうに叫びました。
クラトも同じ気持ちでした。
「こんな地獄みたいな運転はやめてくれ...こんな若さで死にたくない...ホー、ホー、ホー!」
「怖がらないで、何も起きません。
あの山の内部に入るつもりです。」
災難はもう避けられないところまで来ました。
数秒後には、岩の斜面に激突するでしょう。
僕たち3人は目を閉じ、片方の腕を顔の前に出して無駄に身を守りました......。
しかし、何も起こらなかったのです。
しかも窓の向こうに見えたものは。。。
驚きで言葉を失ってしまいました。
「シャヤサリムの街に着きました。」
アミが意気揚々と語りました。
僕たちの船は、今、大きな滑走路に穏やかに停車していたのです。
そこには、さまざまな宇宙船が停まっていました。
遠くには、僕が以前旅した進化した世界で見たのと同じような、未来的な大きな建造物も見えたのです。
上空には、透明な小さな船が何隻もゆっくりと四方八方に飛んでいます。
しばらく何が起こっているのかすら理解できませんでした。
ここは、未進化の世界であるキアにある、高度な文明の都市なのでした。
「ここはキアじゃないわ!ここはキアじゃない!」
ビンカが驚いて叫びました。
「そうじゃな、ここは、キアじゃない。」とクラトも。
「山との衝突で体外離脱して、あの世に行ってしまったのかの...。ほ、ほ、ほ!」
老人は死んでもユーモアを失わなかったようです。
「何にもぶつかっていません、クラト、ここはキアです。
あの岩を抜けて、はるか山の下に隠されたこの基地に入ったのです。
これは内部基地というか、キア内基地なのです。
私たちは、公認のポイントから入りましたが、もちろん、振動数の低い固体を通過するために、この船の振動数を上げて入ったのです。」
山の下にいるのだから、上には空ではなく黒い岩があるはずだと思っていたのですが、そうではありませんでした。
まるで屋外にいるような美しい水色の空と、素晴らしい太陽がそこにあったのです。
「それは空じゃありません、ペドロ。
外の空の映像が映し出された人工のドームなのです。
外が曇っていれば、ここに雲が見えます。
晴れいたら、ここにも晴れた空が見えるのです。
そして、夜もまったく同じです。
でも、ここは外のように露出しているわけではなく、厚い岩盤の下に守られているのです。」
重い岩の 「空 」が、僕たちに降り注いでくるかもしれないと思うと......心配になってきました。
「守られてるの?」
と、ビンカは不安げに言いました。
クラトも落ち着かない様子で、恐る恐る顔を上げています。
一方、アミは僕たちのことを面白がっていたのです。
「また怖がってますね。
もちろん、山に埋もれると思っているのでしょうが。
でも、崩れるのを防いだり、空を映したりするためにドームとして使われている素材は、数キロの面積があり、厚さは1メートルもあるのです。
落ち着きましたか?」
「1メートルなんて、壊れちゃうよ!」
と、僕たち3人が言うと、アミはただ笑っていました。
「でも、そんなに心配することはないのです。
原始的な、粗悪で有害な原子爆弾でも、あの素材には1ミリも入ることは出来ませんでした。
一方、卵型ドームは自然界で最も強い構造の一つなのです。
卵の両端を絞って割ろうとしたことがありますか?」
僕は「やったけど、できなかったよ。」と言いました。
ここでは、嵐や雹(ひょう)の影響を受けることもなく、気温も自動的に調整されます。
太陽の光の有害な部分や、その他の放射線も、この基地には届かないのです。
危険な隕石もこの基地には届かない。
隕石は、破壊的であると同時に、他の世界から細菌を運んでくることがありますが、それらもこの基地には入ってこないのです。
さらに、テリは、この基地が存在することすら疑っていないのです。」
落ち着きを取り戻したビンカは、僕たち3人の好奇心を刺激する質問をしました。
「ここは何なの? 私の星に異世界の宇宙船がたくさんある都市があるなんて、どういうことなの?」
「このような基地や小都市は、『進化した世界のフェローシップ』に属し、知的生命体が存在します。
まだ進化していないすべての惑星に存在しているのです。
私たちは、そのような場所に知的生命体を送り込むために、まさに、そこにいるのです。」
「地球にもこのような都市があるってこと?」
僕は好奇心で尋ねました。
「ペドロ、1つじゃなくて、いくつもあります。」
アミが説明を始める前に、ガラスの向こうに恐ろしいものが現れました。
僕たちの船の前の滑走路に、2人の巨大なテリが立っていて、僕たちを見ていたのです。
その姿を見て、ビンカは思わず声を上げました。
「テリよ、アミ、テリがいるわ!」
一方、クラトは頭をかいていたのですがね。
アミは穏やかで、とても上機嫌でした。
「そうです、ビンカ、彼らはテリだけど、友達です。
私たちが抱えている問題を解決するために、彼らに助けを求めたのです。
彼らは私たちを助けるために来てくれています。
さあ、外に出て彼らに挨拶をしましょう。」
僕は、あの怪物たちにはあまり近づきたくなかったので、「ここで待ってるよ。」と言いました。
彼らは親切に微笑んでいるように見えたのですがね。
しかし、キアの領土に隠された高度な進化を遂げた異星人の都市に、原始的なテリがいるのは、どうも納得がいかなかったのです。
席から立ちあがると、アミは、「前の旅行で、テリの中にも700以上の レベルを持つ者もいる、と言ったのを覚えていますか?
そのうちの数名がここにいるのです。」
それを聞いてやっと僕たちは安心しました。
そして、ビンカ、クラト、僕の3人を「バスルーム」に行かせ、アミも同じようにに入りました。
準備が整ったところで、僕たちは毛に覆われた仲間に会いに行きました。
小柄なアミが、巨人たちに元気よく挨拶する姿はとても印象的で、巨人たちもこの出会いをとても喜んでいるように見えました。
テリは、この小さな友だちに特別な愛情を注いでいたのです。
翻訳用ヘッドセットを装着し、僕たちが何者で、何をしに来たのかを説明したましが、握手はしてくれませんでした。
彼らは、右手を肩の高さに伸ばし、手のひらをこちらに向け、そしてその手をハートにあてたのです。
「彼らは、テリ政府の惑星外研究のアドバイザーです。
彼らは恐ろしいPPに属していますが、私たちの味方なのです。」
とアミは笑いながら説明しました。
彼らはとても不思議な存在でした。
特に、彼らの容姿や笑顔は優しさや知恵、喜びを放っていましたが、同時に、あの剛毛や大きな歯はとても危険で、動物的にも見えました。
何かが一致しないのです、彼らの目には「良い波動」がありすぎる、そしてPPの中では、まさにそのために疑惑を呼び起こすのでは、と僕には思えたました...。
「ペドロ、君は気づいているかもしれないが、普通のテリには君のような感性はないのです。
彼らは、視線の奥に知恵や善意を見ることはありません。
彼らは、単に目だけを見るので、あなたが思っているほど危険でははないのです。」
「そんなに簡単じゃないのです。」
と、そのうちの一人が微笑みながらアミに説明しました。
「そこにいるのは簡単じゃないから、私たちの笑顔や愛情表現を見ることはないのです。
一般的なテリは、突然の怒りの爆発に悩まされ、被害妄想が強いので、高官が迫害されていると感じ、格下の容疑者を殺しに送り込むことがよくあるのはご存じでしょう...。
特にVEP(惑星外生命体研究)の領域で働く場合、このサービスは簡単ではないのです。
毒蛇の巣のようなものなのです..。
でも、私たちにとっては、この仕事は美しく、興味深い挑戦です。」
僕たちが子供っぽく口を開け、恐怖に満ちた表情をしていると、もう一人が前に出て、「私たちは恐ろしい 潜入スパイだぞ~。」と悪戯っぽく言い、僕たちを脅すような顔をして、笑い出しました。
僕は、彼らの勇気に深い尊敬と称賛の念を抱きました。
どうしてこんな危険な仕事をユーモアたっぷりにこなせるのだろう!
そこで僕は、僕やビンカの仕事、本の執筆は、彼らがやっていることに比べれば、ほとんど子供じみた、簡単で快適な子供の遊びだと思ったのです。
彼らは、暴力と危険の中心である政治警察で、罠だらけの仕事のリスクを引き受けながら奉仕することを決めたのですから。
「そして、最も低い、最も濃い精神的、感情的波動に囲まれているのです。」
と、僕の考えを察したアミが言いました。
「でも、自分の仕事を過小評価しないで欲しいのです。
まだ、天使や聖人として生きている訳ではないのですから。
あなたたちの本は、光り輝く友愛の世界、物質的なものよりも精神的なものを重視する世界、あらゆる種類の分裂のない世界を作るのに役立っています。
暴君は、このような考えが広まるのを嫌がるのです。」
その言葉に、ビンカと僕は恐怖を覚えました。
「ってことは、僕たちはドラキュラのブラックリストに載ってしまったということなの?」
僕は恐る恐る尋ねました。
アミとテリ達は僕の話を聞いて笑いました。
「人類にとって本当に良いこと、世の中の幸福度を上げるようなことをしようとする人は、当然、暴君のブラックリストに載るのです。
もし奉仕にリスクがなかったとしたら、奉仕を提供する奉仕者は溢れるほどいるはずですが、残念ながらそうではありません。」
アミの言う通りだと思いました。
たとえその流れが断崖絶壁に通じていたとしても、流れに逆らおうとする人はあまりいません...。
「しかし、恐れることはありません。
暴君は、あなた方の中の微妙な平面上のネガティブな力であることは事実です。
しかし、そこには闇だけでなく、光の力、愛の力もあるのです。
宇宙で最も偉大な力は何か、知ってますよね?」
「ああ、そうだった。ありがたいことだね。」
「だから、君たちは常に守られているのです。
一方、暴君にとっては、あなたたちは『迷惑な蚊のような存在』に過ぎず、大金や大麻の大量委託、戦争や革命、反乱、分裂や対立の煽り、当局の腐敗の試み、大勢の人間部隊の大規模な欺瞞、等々で手一杯なのです。
この2人の友人は危険の真っ只中にいますが、自分たちがどんな保護を受けているか、よく知っているので、何の不安もないのです。」
「お前さんらはチャンピオンじゃよ。」
と、クラトは熱っぽく彼らに語りかけました。
「それに、わしは、マダニア戦争のとき、ロスタの中にいたマルムボ軍のスパイだったから、同僚でもあるんじゃ。
この出会いを祝って、おいしいお酒を飲みながら、みんな、戦争中の逸話を交換しようじゃないか。」
「戦争にスワマがいたのか?」
と、巨人の一人が信じられないように言いました。
「今はスワマだが、昔はテリだったんじゃ。
わしはお前より背が高くてデカかったんじゃよ。
『マダニアの恐怖』と呼ばれとったんじゃからな。ホー、ホー、ホー!
それに、お前さんらの偉大な功績により、わしはこの世界で最初の生きた変身者なんじゃよ。
祝おうじゃないか。」
「クラト、マダニア戦争に参加したの?」とビンカ。
「もちろんじゃよ、王女様。
わしは、『荒地のケンタウルス』と呼ばれとった。
わしの前を横切った者は、敬意をもって身を引くのが良識であった。
しかし、一部の無謀な者たちはそうしなかったんじゃ。
地獄はそんな奴らでいっぱいじゃよ!」
「じゃあ、あなたはひどく年をとっているわよね。
マダニア戦争は古代史だもの。
その戦争から生きている人が残ってるなんて知らなかったわ。」
「わしは、まだ少年で、軍隊の最年少だったんじゃ。
デンジャー・ボーイ と呼ばれとった。 ホー、ホー、ホー。」
アミは焦っているようでした。
「嘘をつくのはやめなさい、クラト、あなたの曾祖父ですら、その戦争が起こった時、若かったのです。」
「あの戦争は何世紀も続いたんじゃよ、アミ、4世代も。
わしは最後の世代だから、子供だったんじゃ。」
「くだらないことを言っている暇はありません。
ビンカのおじさんたちがPPに捕まっていて、助けなきゃいけないのです。
早く行動しないと、大変なことになるかもしれません。
突然、透明な乗り物が飛んできて、僕たちの前に停車しました。
誰も運転していませんが、高度な技術とオートメーションがそこにあることを実感しました。
ドアのひとつが勝手に開き、まるで僕たちを招き入れるかのように上に上がりました。
クラトは、その車の見えない運転手を探しに行きました。
「隠れるな、そこにいるのは分かっとるんじゃ...。」
「くだらないこと言ってないで、乗り込みましょう。
さあ、ビンカ、ペドロ、中に入ってください。
適切な場所へ行き、親切な友人たちと話し合いましょう。」
「もちろん、おいしいお酒と一緒じゃな。」
クラトは期待に胸を膨らませて言いました。
すると「シャヤサリムにはアルコールはありません。」と、微笑んだテリの一人が車に乗り込みながら言ったのです。
「アルコールがないのかい?
ここはキアの中で最も退屈な場所なのか?
彼らはどうやって心を幸せにするんじゃろう?」
「私たちは常に幸せですが、時には宇宙が私たちの魂を完璧にするためにテストするので、私たちは魂を強化するために他の方法を使います。
呼吸法、瞑想、そしてそれぞれの存在の中に宿るものとの接触です。」と説明すると、車両は始動して静かにリフトアップされました。
クラトは、「そうじゃな、この人はこんなに毛むくじゃらだけど、普通のテリではないことがわかる。」と感銘を受けたようです。
透明な乗り物は低空低速で、惑星キアの内陸部にある進化した文明である、シャヤサリムという小さな地下都市の中心に向かって飛んでいきました。
上空から見ると、その場所は平和に見えました。
オフィルによく似ていましたが、より狭い空間です。
他の進化した場所と同様、この場所を移動する乗り物のほとんどは空中を移動しています。
上空から見ると、スワマと、テリも数名いました。
また、他の種族の人も数人いて、みんな仲良くしていたのです。
このことから、より高い進化レベルの特徴のひとつは、分断、分離、偏見、境界、不信、恐怖、攻撃性の減少だと思ったのです。
アミは、「その通りです、ペドロ。」と注意深く言いました。
「私たちの意識が成長し、人生をよりよく理解するにつれて、私たちは外側の違いをあまり気にしなくなり、内面、つまり私たちを結びつけるものを見ることができるようになるのです。
だから、外見はそれほど似ていない人たちに心を開くという、美しい芸術を少しずつ学んでいるのです。」
僕は、隣に座っている巨大なテリに目をやりました。
そのテリは、かつて訪れた動物園の熊に似た、かなり奇妙な臭いを放っていましたが、本能的な恐怖を引き起こすその筋肉、歯、毛の塊の向こう側を見ようとしました。
そして、僕がまるで親友のように、彼を違う目で見ようと小さな努力をすると、それは、数秒間で成功してしまったのです。
彼の匂いが不快でないと感じ、昔飼っていた愛しい子犬を思い出しました。
彼は何かを察したのか、僕の方を向き、明るい表情ととても柔らかい笑顔で愛情を注ぎ、僕の膝を優しく慈しむように握ってくれました。
そのとき僕は、愛が、存在を隔てるあらゆる外的・幻想的な障壁を克服することを、改めて理解しました。
「すべての存在は愛の創造物であり、その現れなのです、ペドロ。
私たちは皆、同じ起源を持っているのです。」
「テリでさえも。」とテリが笑いました。
そこでクラトはふざけるチャンスを見つけました。
「神様はある日、飲み過ぎた時にテリを作ったんじゃよ。
それで、酔いがさめたところでスワマを作ったんじゃ!
ほー!ほー!ほー!」
「は?」と、アミはこの冗談が好みではないとアピールしました。
「そんなに笑うべきではありません、クラト。
人種差別は、我々がやろうとしていることとは正反対なのです。
存在を認め合い心を繋げる事が目的なのですから。」
「わかった、わかった…。
そうじゃの、もうこの手のジョークは言わんことにするよ...若い頃よく行った酒場でスワマたちを大いに笑わせたんじゃがの。
ホー、ホー、ホー。あ、悪い、悪い!」
ビンカにとっては、そのジョークは面白かったのですが、自分も言ってたけど、「外交上」もうやらない、と言って話題を変えようとしました。
僕の隣のテリは、「この街ではあまり活動をしていません 。ここの施設のほとんどは地下にあるのですが、実はここは正確には都市ではなく、ワークステーション、基地なのです。」と説明してくれました。
「ここに住んでいる人はみんな、ある特定の分野のプロフェッショナルなのです。」と。
「この基地は何のためにあるの?」
僕は、大きな飛行船の駐車場があるビルに降り立ちながら尋ねました。
「ここで、進化した世界の仲間たちは、この基地の住民によって行われるこの惑星の社会的発展を監督することを目的とした仕事を、他の文明の専門家の協力のもとで行っています。
しかし、この惑星と似た特徴を持つ惑星、つまり、同じような重力、酸素でできた大気、炭素と水に基づく有機構造を持つヒューマノイドの1つか複数を持つ惑星である、非常に多様で遠い場所から来ています。」
「すべての宇宙文明はそうじゃないの、アミ?」
「もちろん違います、ペドロ。
この世界の魚のように、水の中で暮らす知的種族もいるのです。」
「彼らは僕たちのような体を持ってるの?」
「いいえ。
私たちの体は、水の外、つまり陸上で生活するためのものなのです。
だから足があり、ヒレやエラはありません。
それに、私たちの肉体は水中を進むのに適していないのです。
多くの抵抗に反することになります。
魚の肉体とは違います。」
「じゃあ、奇妙な体をした知的生命体もいるってことなんだよね。」
「まあ、とても奇妙な体をしているのは、あなただと言われそうですが...。
はははははは!」
「でも、前に君は、人間のモデルは、頭、体幹、手足という普遍的なものだと言ったよね...。」
アミはまた思い出し笑いをしました。
「その時、あなたは "侵略してくるモンスター "のことを考え、恐怖でいっぱいだったでしょう?
だから、私は、あなたをあまり怖がらせたくなかったのです。
あなたの 視覚から入る人種差別と永遠の被害妄想癖を考慮して...。
私は、あなたやビンカやクラトの世界、私やオフィル、この辺りで見かける人々の世界の人間、または "人型 "のモデルについてお話ししただけです。
しかし、それとは別に、宇宙には実に多くのものが存在します。
一見、不利な条件でも生命は誕生し、物理的な形はその環境に最も適したものに対応するのです。
つまり、宇宙にはあらゆるものが存在するのですが、とりあえず身近なものを知るだけで十分なのです。」
僕たちは車から降り、近くのエレベーターに入りました。
テリの一人が口頭で指示を出すと、ドアが閉まり、僕たちが移動すると、またドアが開いて通路に出ました。
そこから、10脚の椅子に囲まれた長い楕円形のテーブルがある、小さな部屋に入りました。
表面はピンクの大理石のようで、各席の前には長方形のシートが何枚か置かれていました。
僕はそれらがビデオかコンピュータのモニターだと思ったのです。
背景には、美しい海の風景が見渡せる大きな窓がありました。
岩に打ち付ける波や沖合に浮かぶ漁船が見え、海の音も静かに聞こえてきています。
「ペドロ、その通りです。
カメラには映像も音も、そして必要に応じて香りも入っていて、それを一緒に再生することができるのです。」
「素晴らしいね!」
スクリーンの向こうには、小さな海岸の町が映し出されていました。
それは僕の世界の風景かもしれないけど、僕たちはその中にいません。
僕たちは、山の下にいて、海は遠く離れているのですから。
前回の旅で、僕の星への「援助計画」全体を指揮する司令官の船に、彼の故郷の映像を映し出す同様の窓を見たことがありました。
それはカラーテレビのようなシステムでしたが、あまりにもリアルで、普通の窓と区別がつかなかったのです。
ここでも同じで、船がこちらに向かって、つまり撮影場所のほうに近づいてくるのが見えました。
スクーナー船(帆船の一種)が近づいてくると、その乗組員がスワマの漁師であることがわかりました。
「さて、座りましょうか。」
とテリの一人が言ったので、僕たちが腰を下ろすと、「この少女の叔父たちは、彼女を誘拐した船の目撃情報との関連で捜査されているため、拘留されています。
そして、家族の友人である医師も尋問されることになるのですが、彼は何も覚えていないはずなのです。
彼は、もう、スワマと結婚した、彼と同じ人種である彼女の叔父ゴローという男を知らないのですから。
どうなるか、見てみましょう。
毛むくじゃらの指が、目の前のテレビモニターに触れると、他のすべてのモニターが光りました。
もはや僕にとっては、不思議でもなんでもないサインが現れ、フェローシップの言語の文字が認識できました。
メニューが表示されるのかと思いきや、巨人はボタンを押すのではなく、モニターに向かって音声で指示を出したのです。
スクリーンには、庭園に囲まれた大きな建物が映し出され、監視場所のある高く厚い壁に囲まれて、武装した警備員が立っていました。
「ここがPPの本部です。」
とテリが説明しました。
それから、映像は急降下し、僕たちはその建物の中に入っていきました。
ビデオゲームのように、進化したテリが画面上の矢印などに指を置くと、映像は右往左往しながら進んでいくのです。
こうして僕たちは、ビンカの国の 最高機密組織の内部で何が起こっているのか、堂々と観察しながら、PPの全容を把握できたのです。
最後に、スクリーンに映し出されたテリは、他のテリよりもずっと太っていて、おぞましく見えました。
毛並みは非常に濃いダーティーグリーンで、ブラシもかけず、艶もなく、少し油っぽくてベタベタしています。
きっと魔物のような匂いがするんだろうなと思うと、「直感が鋭いですね。」とアミが嬉しそうに笑いました。
「彼が、ディレクターのトンクです。
この1時間、彼がやっていたこと、話していたことを録画したものを見て、追いかけましょう。」
そこで、フェローシップの人々が、多くの人をスパイできることに気づいたのです...。
テリがスクロールを繰り返しながら、PPのディレクターが、この数分間で聞いたり話したりしたことに注意を配りながら、アミは「キアの進化にとって重要な領域でテリが下す決断をないがしろにすることはできません。」と説明しました。
しかし、このようなスパイ活動は、その世界の独立と自由を侵害するものだと僕には思えたのです。
僕が何を考えているかを察したアミは、複雑な問題を説明することにしました。
「忘れてはいけないのは、これらの世界には人がたくさんいる基地があり、油断すると影響を受けたり破壊されたりする可能性があるので、目を離さないようにしなければならないのです。
また、暴力的な文明が宇宙的な災害をもたらすような知識を手に入れることを許すことも出来ません。
前にも言ったはずです。 覚えていますか?」
「わかったよ、アミ、でも...、他人の領土に秘密基地を持つことは合法なの
?」
僕の問いに、テリ達は微笑みました。
アミは「もしこれらの基地が存在しなければ、あなた方の文明は、既に存在しないでしょう。」と言ったのです。
僕は、もし彼らが僕たちを監督してくれなかったら、今頃、僕たちの世界は滅びていただろう、という意味だと思いました。
アミが注意を払いながら言いました。
「ペドロ、繰り返しますが、あなたは被害妄想にもかかわらず、直感がするどいのです。」
モニターを操作していたテリは、
「トンクは囚人について何も決めていません。
彼は陸軍と大統領府に助言を求めただけなのです。
今は、キア外調査に最も関与している国であるアルテンジー政府からの指示を待っている状態です。」と説明しました。
映像はPPビル内を駆け巡っていました。
武装した2人の警備員が守るドアを見つけ出すと、テリは、「ここが拘束者の部屋です。さあ、仲間を探しに行きましょう。」と言いました。
僕たちは、太い鉄格子をくぐり抜け、警備員の鼻先を通り過ぎました。
彼らには僕たちが見えないのですからね。
さらに進むと、両側にいくつかのドアがある廊下に出たのです。
僕たちは、それぞれのドアの中に入ってみたのですが、ほとんどは空っぽでしたが、いくつかの扉の中には収容者がいました。
そのうちの1つには、非常に動揺したあざだらけになった精神科医が1人でいるのが見えました。
僕たちは廊下に戻り、隣接する部屋に入ると、そこにはビンカの叔母と叔父がいたのです。
彼女は彼らを見て安堵のため息をつきました。
どうやら、彼らは元気だったようです。
彼らはとても不安そうにアームチェアに座っていましたが、他には誰もいませんでした。
テリの一人が次のように説明しました。
「きっともうすぐ上層部がこの事件を優先順位最上位にすることを決めるだろうから、彼らが迎えに来て、装甲病棟に連れて行くだろうね。
そう簡単に出られるものではない......。
しかし、私たちが直接行かなくても、重装備のテリの群れに挑み、彼らを倒さなければならないのです。
私たちには不可能はありません。
装甲病棟に運ばれる前に、ここに移動させる絶好のチャンスです。」
「彼らをここに連れて来れるの?どうやって!?」
僕は驚きの声を上げました。
「そこからテレポーテーションするのは難しいことではありませんよ。」
テリの一人が、僕にあまり関心を示さず言いました。
「素晴らしいわ!!」
ビンカが嬉しそうに言いました。
「拘束部屋から彼らを連れてくるのは、難しいですが、不可能ではありません。
それでは直ぐにやりましょう。
その前に、彼らに何が起こるか指向性マイクで警告しておく必要があります。」とアミ。
「でも地下牢内にはカメラがあり、音も録音されています。」
「その通りです。
私たちが話すこともすべて記録されるから、彼らに何も説明は出来ません。
そして、それは彼らに手がかりを与えることになりますから。」
テリは僕たちの為に他のことも明らかにしました。
「この子の叔父さん達がここにいるとき、私たちの姿を見せてはいけません。
だから私たちはすぐに隠れます。
これは、フェローシップの進化作業に属さない者にとっては、不可侵のセキュリティ対策なのです。」
クラトは冗談好きではあるが、馬鹿ではないので、すぐに結論を出しました。
「そんなら、わしもその仕事をしとるんじゃな!
ほー!ほー!ほー!」
「そうです、クラト、そうじゃなければ、あなたをこんなところに連れてくることは出来ませんでした。
今はまだ、公益に奉仕する将来の仕事について何も知りませんが、やがてその時が来るでしょう。」
彼は面白い顔をして僕たちを見て、まるで「聞いたかい?わしは天才じゃよ。」と言いました。
クラトは、老いた農民で、酒好きで大食漢で、肉食で、かなりの嘘つきで、冗談好きで、彼が愛に奉仕?と考えていると、 アミは僕が考えていることを察知して、こう言ったのです。
「お互いの心の奥底にあるものなんて、誰も知りません。
ここにいる誰がそれぞれの将来の進化を知っているのですか?」
僕は顔を赤らめて、何も言えませんでした。
テリはこう続けたのです。
「宇宙計画以外の人々は、この地下基地の存在を知ってはなりません。
今はですがね。
だから、私たちの許可なしに、あの夫婦や他の人にシャヤサリムについて何も言わないでください。
約束だよ?」
彼はビンカ、クラト、そして僕に向かって言いました。
「わしは思慮深いから、戦争では "墓場 "と呼ばれとったんじゃよ。
ほ、ほ、ほ!約束だ、心配するな。」
「約束します。」
とビンカと僕も言いました。
「さて、まず彼らを眠らせてから、ここに移動させなければなりません。
テレポーテーションルームに行きましょう。」
とテリが言いました。
「この素晴らしい技術は、キアで発明されたの?」
と僕は尋ねましが、彼らがイエスと答えるとは思っていなかったのです。「いやペドロ、星からもたらされたものです。
しかし、それを知り、操作できるのは、よく訓練された宇宙ミッションのメンバーだけなのです。」
「それは、ネクタイの中にも...?」
「そう、そこにも密かに存在しているのです。」
僕が質問を終える前に、アミが答えました。
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