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子供の頃好きだったこと

我役者外出自粛中。部屋にいる時間が長いのでまず自分の気分があがる好きなことをしようと思い、一番先に浮かんだのが絵を描くことだったのでipadで女の子の絵を描いた。ポーズが決まらなくて一瞬手が止まってしまったが、誰に頼まれた訳でもないのでいいや今は思うままに好きな部分を描くんだーと思って女の子の顔だけを丁寧に描いた。私は子供の頃暇があれば女の子の顔ばかり描いていて、特に左向きの顔のアップは数えきれないほど描いた。その反復を手が覚えていて、何にも考えずに黙々と目の光や睫毛を描き込んだりしているうちに子供の頃好きだったことが芋づる式に思い出されて、どこに着地するかわからないままこれを書いてます。

九歳になるまで住んでいたのは都会に近い田舎で緑も多く、その頃の私は四つ葉のクローバーを見つけるのが趣味だった。近所によく四つ葉が生える株があったようで、じっくり探すともはやありがたみが無いほど大量に四つ葉が見つかり、時には五つ葉や六つ葉も発見し、なんと七つ葉まで手に入れた。今見つけたら絶対Twitterにアップすると思う。摘んで帰って部屋で愛でているとすぐ萎れるので困っていると母が押し花にするといいと教えてくれ、私の植物図鑑にはあらゆるページにちょっと葉が多めのクローバーが挟んであった。私はクローバーに限らずとにかく家の周りの雑草に興味があって、いろんな種類の草を詰んで持って帰っては図鑑で名前を調べた。あの家の周りにはオオイヌノフグリやオオバコがたくさん生えていた。近所の草が図鑑に載っているのが嬉しかった。草が好きだった。正確には草の名前を調べるのが好きだった。

アリも好きだった。暮れるまで行列を見ていた。ある日アリを追いかけたら自分の家の玄関にたどり着いて、玄関前の鉄の敷物をどかすとアリの巣が表面に全部丸見えになった時には驚いて感動して打ち震えた。卵の部屋も見た。足がチクッとして見るとアリが噛んでいた。アリは噛む。アリのことも図鑑で調べた。何かっていうと図鑑で調べた。インターネットが無いので図鑑が世界だった。調べて分かったことを親や近所の大人に得意げに説明して「よく知ってるね」と言われるのが嬉しかった。親が買ってくれたあの図鑑はどこの出版社のものだっただろう。虫のことから風俗史から宇宙のことまで何巻もセットで揃っていた。

「チャイクロ」というおしゃれな知育絵本と、ブックローンの「ファランドールえほん」というキレイな絵本も好きだった。この本たちについては別で書きたい。私はおおいに知育され影響を受けた。

折り紙も好きで本を見ながら黙々と折った。こうやって思い返すとあらためて、私はひとり遊びが好きな子供だった。近所の自然と本があれば元気だった。

なので、まさかお芝居をして暮らす大人になるとは全く思ってなかった。演劇はひとり遊びと対極だ。人との濃厚接触だ。それが出来なさそうなこれからしばらくの状況をこんなに寂しいと思う自分を予想してなかったし、この文章がここに辿り着くことも予想してなかった。どうかまた劇場で。

女の子は可愛く描けました。また!






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