「菌」との共生ー人間はヒトの細胞と細菌から成る「超有機体」




人間はヒトの細胞と細菌から成る「超有機体」


ヒトの 体は約 60 兆個の細胞より成るが、一方、我々の腸管、口腔、体表などには 100〜1000兆個 もの共生微生物が生息し、我々に利益を与えてくれている。数の上では共生微生物の数がヒトの細胞数を圧倒してい る。人間をヒトと共生微生物から構成されている超生物と見なせば、この超生物、即ち、 人間の体は 9 割が細菌ということになる。

私たちが菌との「共生」という時には、本来は、自分たちも「菌の一部」と考えるべきであるが、この国では「菌」と「人間」それぞれが並び立っている。人間も菌の一部として、統合されて1つの生命システムを構築することの論理の秩序を転換する必要がある。

共生関係というのは状況によって「相利」的になったり「寄生」的になったりすることがあり、「共生」と「寄生」は決して対立概念ではなくて、前者が後者を含むものである。
一般的には、「共生」概念は、お互いが利益を得ているような関係をイメージしている。だが、その概念とはもっと広く、文字通り「共に生きている」関係をあらわす言葉であり、「共生」とは、統合されて1つの生命システムを構築することなのである。



「免疫力」

「菌」との共生ー「免疫」概念の獲得


先進国で見られる過剰なまでの消毒対策や、抗生物質や抗菌剤の多用は子供の細菌への接触を減らしてしまい、正常な細胞にまで過剰に反応する「自己免疫疾患」に陥りやすいとことを意味している。 現代日本社会が抱えるパラドクスは、『洗いすぎ』による炎症によるものである。例えば手には常在菌という菌がいるが、これは皮脂をエサにして皮膚を中性に保ち、病原菌などの外敵が入ってこないように守ってくれる。ところが、1日に何回もハンドソープで手を洗ったり、除菌シートで手を拭いたりしていると常在菌がゼロになり、皮脂も失われてカサカサに。結果、皮膚炎やアトピーの原因にもなるにだ。シャワー付きトイレも同じで、1日に何度もシャワーでおしりを洗っていたら、おしりを守る菌まで洗い流してしまい、逆に雑菌が繁殖しやすい状態になる。つまり、『キレイ』を意識した行動が、逆に『キタナイ』を招いている。反対に、キタナイと嫌う菌が、体をキレイ=健康な状態に保ってくれている。無菌=キレイという論理の秩序を転換する必要がある。

人体を構成する細胞の数は数十兆程度だが、体内に生息する細菌の細胞数は100兆を超える。こうした体内微生物が、免疫系など人体の仕組みと密接な相互作用をしていることを考えると、人間とは、ヒトの細胞と微生物とが高度に絡み合った集合的有機体とみるのが適切だ。人間の体内に存在する細胞のかなりの部分は、人間自身のものではない。それどころか、それは細菌(バクテリア)の細胞なのだ。人間は歩く「超有機体」であり、ヒトの細胞と菌類、細菌、ウイルスが高度に絡み合った存在とみるのが、最も適切なとらえ方と言える。

人体には500種を超える細菌が存在し、その細胞の数は合計で100兆以上になるという。人体を構成する細胞の数が数十兆程度であることを考えると、われわれ人間の身体は、数の上でよそ者にかなり劣っている。結果として、われわれの身体内に存在する遺伝子も、大部分が細菌のものだということになる。
体内細菌は総じて共生生物と呼ばれるもので、人間の食べたものをエネルギー源にしているものの、人体に実害を及ぼすものではない。それどころか、細菌には有益なものも多い。共生している細菌は、人体の免疫システムと緊密に連携し、人に危害をもたらす可能性がある感染症からわれわれを守ってくれるのだ。

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