若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間(集英社インターナショナル)
今まで読んできた利己的な遺伝子(ドーキンス)とかとは別の視点が加わる感じがして面白かった。かなり内容の濃い本なので、引用がたくさんになった。
第1章 「あなたは車ではない」
生物の自己修復機能や、さまざまな実験結果について
第2章 「肉体の遍歴」
産卵したあとのサケでも、ホルモンを調整してやると突然死はなくなり、タコも内分泌腺を手術することによって寿命がのびる。プログラムされた死について色々紹介されている。
第3章 「拘束衣を着せられたダーウィン」
ダーウィンが「種の起源」を書いてたのと同じ時期にメンデルはエンドウマメの実験をしていた。メンデルは修道士だったので、生活の雑事が少なく実験するのに最適な環境だった。
第7章 「自然のバランス」
2種類の微生物をガラス瓶に入れて実験すると、捕食者と非捕食者どちらかの種が絶滅するという2パターンの結果しか生まれなかったという話(P-269)
実際の生態系では、捕食者にも天敵がおり、気候や環境に多様性があるためどちらの種もバランスよく生き残っている。
第8章 「全員が一気に死ぬことがなくなる」
なぜ老化が存在するか?という疑問に焦点に当てた章
増えすぎたウサギの話が面白かった(P-297)
1940年ごろ、オーストラリア政府は増えすぎたウサギ(外来種)を駆除するためフランク・フェナーが作った粘液腫ウイルスをばらまいた。6億羽いたと推定されるウサギは、最初の半年で90%が死に絶えたが、残りの個体は免疫を身につけウイルスは変異し致死性が下がった。
60年後の今もオーストラリアはウサギに悩まされ、粘液腫ウイルスは広がり、ヨーロッパでは家畜へのワクチン接種が必要になっている。
第9章 「長生きをするには」
ヴァルター・ロンゴによる実験など。4日の断食の研究結果、1日おきの断食について本書に詳しく書いてある。癌治療についても
効果的な運動について
抗炎症性物質として紹介されているもの
アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン
そのほか言及されている物質
メラトニン、ビタミンD
生殖能力が高い=寿命を犠牲にして繁殖している、と考えてしまいがちだが、実際は生殖能力が高かったグループほど長寿(人間も動物も)
その他
著者のジョシュ・ミッテルドルフは天文物理学者から理論生物学者になった人物で、共著者のドリオン・セーガンは「コンタクト」「コスモス」などで有名なカール・セーガンの息子さん(彼も生物学者)
ある微生物と天敵の2種類のみを実験室で育てた場合、必ずどちらか片方が絶滅してしまったけれども、実際の生育環境では両者は共存しているというエピソードもよかった。
つまり、天敵にも天敵が居るし、池の温度、岩などの地形による水流にも違いがあり、移動の自由がある。環境が複雑であることで生き物同士はバランスをとっている。
本書の中で、カート・ヴォネガットの短編「2BRO2B」(トゥー・ビー・オア・トゥー・ビー)が紹介されていたので後日読んでみた。老化のない世界を描いてある
追記
老化の話、こちらも読んでみたい
「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦(著)
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