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若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間(集英社インターナショナル)

今まで読んできた利己的な遺伝子(ドーキンス)とかとは別の視点が加わる感じがして面白かった。かなり内容の濃い本なので、引用がたくさんになった。

第1章 「あなたは車ではない」

生物の自己修復機能や、さまざまな実験結果について

通常、パンジーは花が咲いたあとで枯れてしまう。「全力を出しきったんだ」というものもいるだろう。
(中略)
しかし、園芸家は知っている。花の部分をハサミで切っておけば、その場所に新しい花が咲くのである。新しい花をさらに切ると、さらに花が咲く。一夏じゅう、ずっとパンジーを楽しむことができるのだ。

P-76「生物の寿命」

何十年ものあいだ、コエンザイムQ10はアンチエイジング・サプリとして宣伝されてきた(同時に、これは心臓病患者にも一定の効果がある)。しかし、驚くことに、コエンザイムQ10が遺伝的に不足している動物は長生きする傾向があるのだ。

P-72「フリーラジカル説」

第2章 「肉体の遍歴」

ゾウは生きているあいだ大量の茎や葉をムシャムシャ食べてすりつぶし、歯が6回生え替わる。しかし、6回目の歯がだめになると、もう生えてくることはなく、そのまま死んでしまう。

P-98「タコの無食欲」

 産卵したあとのサケでも、ホルモンを調整してやると突然死はなくなり、タコも内分泌腺を手術することによって寿命がのびる。プログラムされた死について色々紹介されている。
 

第3章 「拘束衣を着せられたダーウィン」

 ダーウィンが「種の起源」を書いてたのと同じ時期にメンデルはエンドウマメの実験をしていた。メンデルは修道士だったので、生活の雑事が少なく実験するのに最適な環境だった。

1854年から1863年にかけて、メンデルは2万3000本のエンドウマメを栽培し、分類し、表にまとめ、計算から推定される比率と確率を計算し、さらにまた計算し直した。

P-119「ダーウィンはセックスを恐れていた」

第7章 「自然のバランス」

 2種類の微生物をガラス瓶に入れて実験すると、捕食者と非捕食者どちらかの種が絶滅するという2パターンの結果しか生まれなかったという話(P-269)
 実際の生態系では、捕食者にも天敵がおり、気候や環境に多様性があるためどちらの種もバランスよく生き残っている。
 

第8章 「全員が一気に死ぬことがなくなる」

 なぜ老化が存在するか?という疑問に焦点に当てた章

老化がなければ、動物は飢饉や病気以外で命を落とすことがなくなり、死ぬときには全個体が同時に死んでしまう。

P-286「全員が一気に死ぬことがなくなる」

大人のウサギが力とスピードを維持し続け、いつまでも最盛期のままだと想像しよう。ウサギを捕食するキツネは、狩るのがいちばん簡単な未熟なウサギばかりを狩ることになる。

P-301「被捕食種の老化」

増えすぎたウサギの話が面白かった(P-297)

 1940年ごろ、オーストラリア政府は増えすぎたウサギ(外来種)を駆除するためフランク・フェナーが作った粘液腫ウイルスをばらまいた。6億羽いたと推定されるウサギは、最初の半年で90%が死に絶えたが、残りの個体は免疫を身につけウイルスは変異し致死性が下がった。
 60年後の今もオーストラリアはウサギに悩まされ、粘液腫ウイルスは広がり、ヨーロッパでは家畜へのワクチン接種が必要になっている。
 

第9章 「長生きをするには」 

ヴァルター・ロンゴによる実験など。4日の断食の研究結果、1日おきの断食について本書に詳しく書いてある。癌治療についても

化学療法の3日前から断食すると、治療にともなう吐き気、疲労、頭痛などからほとんど解放されるだけでなく、治療自体にも何倍もの効果が期待できる。食物に飢えると、正常な細胞は防御メカニズムのスイッチが入る。そのため、化学療法の攻撃にも傷つきにくくなる。しかし、癌細胞はその反対に、飢えによって死の準備を始める

P-329「断食」

効果的な運動について

心拍数が最大になるようなワークアウトを4分間やるほうが、ジョギングを1時間するよりも心臓血管の拡張に効果がある

P-333「運動」

抗炎症性物質として紹介されているもの
アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン

そのほか言及されている物質
メラトニン、ビタミンD

体が老化するにつれ、炎症は無差別に展開し、あらゆる老人病を発症させる引き金となる。炎症が間違いなく”自殺適応”だと考えられる理由は、炎症と自己破壊の区別がまったくつかない抗炎症性物質にも、寿命を伸ばす効果がはっきりとあるからだ。

P-338「抗炎症性プログラム」

 生殖能力が高い=寿命を犠牲にして繁殖している、と考えてしまいがちだが、実際は生殖能力が高かったグループほど長寿(人間も動物も)

その他

 著者のジョシュ・ミッテルドルフは天文物理学者から理論生物学者になった人物で、共著者のドリオン・セーガンは「コンタクト」「コスモス」などで有名なカール・セーガンの息子さん(彼も生物学者)

 ある微生物と天敵の2種類のみを実験室で育てた場合、必ずどちらか片方が絶滅してしまったけれども、実際の生育環境では両者は共存しているというエピソードもよかった。
 つまり、天敵にも天敵が居るし、池の温度、岩などの地形による水流にも違いがあり、移動の自由がある。環境が複雑であることで生き物同士はバランスをとっている。

 本書の中で、カート・ヴォネガットの短編「2BRO2B」(トゥー・ビー・オア・トゥー・ビー)が紹介されていたので後日読んでみた。老化のない世界を描いてある

追記

老化の話、こちらも読んでみたい
「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦(著)


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