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クリエイターに必要なパッションの話

はじめまして。イラストレーターをやっている者です。
といってもろくすっぽ収入は無く、ほぼほぼ無職です。日々練習したりぼんやりしたりしています。
よく、「表現者には情熱が必要なんだよ」みたいな系統の話を、(勉強中の身の方は特に)聞くんじゃないかなぁと思います。
中にはそれがピンとこない方も居るんじゃないでしょうか。というか僕がまさにそうでした。そういった方向けの話ができればと思います。

作品、作ってますか?
僕は描いたり描かなかったりの日々です。描いてない時も何かしら考えてはいます。
2年と半年ほど前、あ。仕事辞めよう、と。で、どうせ転職するならやりたい職業目指すかってことで描き始めました。
とりあえず画力上げるかってことで既にその道に行っている友人2名に教えを乞い、模写練習とかクロッキーやらとりあえず描いてみるとか色々やってきたのですが、そんな中でその師匠たる友人にも、そのまた別の絵を描かない友人などにも、ちょくちょく言われた言葉がありました。

絵に性癖を詰めろ。恥ずかしがるな。うちにある想いをぶつけろ。
表現者はとかく自身の内面をうんたらかんたら…

そう言われ続けてきたし、そうでなくとも色んなところで目にする言葉でしたが、どうにもピンと来ずに月日は流れました。
とりあえず画力画力と絵の繊細さとか色の美しさとか美麗さをひたすら追い求めましたが、なんだかいまいち世間のウケが悪い。
有り体な言い方をしてしまえば、”いいね”や”リツイート”が少ない。
さすがにプロを目指す以上、人に受け入れてもらえるような作品を描くべきだろうと色々考えたり人の話を聞いたりしていくうちに、段々と見えてきたことがありました。

人が魅力を感じるものは、どうやら感情である。
イラストですから、それがわかりやすければわかりやすいほど、伝わりやすいほど良い。
例えば美しい絵を見たとき、美しさとは別のものも受け取っているようなのです。例えばそれは儚げでとか、神秘的でとか、主観によって多少ブレはありますが何かしらは感じているようです。エモいってやつですね。
「どうやら」と言いました。というのも、僕はそれを感じるセンサーが弱いようなのです。
いわゆるエモい絵を見ても、色の組み合わせが綺麗だなぁ、青から紫へのグラデーションがそう感じさせるのだろうかみたいな、数字して見てないのかこいつって感じの感想しか出てきません。
エロにしたってそうです。
女体などは好きですが、脚や腰に見える曲線がいいよねとか、大きな乳房の丸さや重さがいいよねとか、世界をベジェ曲線で見てます?みたいな感想ばかりが出る始末です。
特にその架空の女性をどうこうしたい、どうこうしてもらいたいといった欲望は持ち合わせておらず、ただただ視覚情報を冷静に受け取って「良い…」とか言っているのだから共感もなにもあったものではありません。そんな状態でもしっかり女体に反応自体はしているあたり、本能ってすごいですね(?)。

つまり僕はそれまで、世間に言わせれば感情のない、何をどう感じたらいいのかわかりにくい、パッションの感じにくいつまらない絵を描いていたわけです。正直今でもそこから抜け出たわけではないんですが。
例えるなら上手に描かれた背景や料理の模写のようなものです。この手の絵は工夫しないと伝えたいものが非常に伝わりづらいジャンルだと思っています。
あるいは吉田誠治先生の言葉を借りるなら「真面目過ぎる絵」です。物理法則の域を出ないような、絵でなくとも写真で事足りうる絵。
これではいかに上手く描いたとて、人の心を打つのは難しいというわけです。いや、その画力の域に僕が到達しているかどうかは別の話ですが、まぁ描いてる絵の系統として。

さて、どうやら人は感情に魅力を感じるようです。
感情とは喜怒哀楽に限らず多岐にわたりますが、いずれにしても何かしらの方向がわかりやすく見えている作品ならば、一定の評価をいただけるのではないか、という考えに至りました。
感情をもっとわかりやすく書くならば、”欲望”や”願望”に言い換えることも可能かと思います。ざっくばらんに言えば「こういうの良いよね」、です。こういうシチュエーション良いよね、とか。
しかしどうも、人は自分の内面をさらけ出すことを恥ずかしく感じるようです。特に慣れていないうちは。
わかりやすく感情が描かれた作品ほど魅力を受け取られやすく、人気が出ます(他にも色々ありますが、とりあえずそれはさておき)。しかし初めのうちはそれが恥ずかしい。だから恥ずかしがらずにさらけ出せ、と友人達や、世の講座動画などなどが口を酸っぱくして言ってきたわけです。
マジかよ世の連中はそんなわかりやすい欲を抱えて生きてんのかよとビビったものです。
繰り返しますが、そういう先輩諸氏の言葉はいずれもピンと来ていませんでした。いや、恥ずかしがってないが?そもそも何を描けばいいか、毎回あまり思いつかない中なんとかやっているのだが?と。
こちとらシチュエーションうんぬんとかよりも、ブラシを重ねて思ったとおりに色や線を置けたことに快感を覚えるような奴で、そんな理由で絵を描き始めているわけです。

さて、どうしよう?

僕はとにかく自己肯定感が低いです。
思い返せば…まぁおそらく世間と比較して…ちょっと厳し目に育てられました。
なにをしても親に叱られ、僕はとことんダメな奴なんだと思い込まされたものです。
その中で比較的成功体験を得ていたのが絵でした。絵ならできる。今はまだ下手だけど、それは練習すれば良い。
欲が無いとか、恥ずかしさが無いとか、そういったことも大体親の教育の影響です。自分は何をやってもダメなへっぽこ人間だ、と本気で思っていれば今更恥ずかしさも何も無いというものです。まぁ代わりに欲も失ってしまいましたが。
欲というのは、ちょっと手が届く範囲のものに対して生まれるものだと感じています。
今の自分のような実質無職の状態で、世界旅行に行きたいだとか高級車が欲しいだとかタワーマンションに住みたいだとかそういった欲は生まれにくいと思っています。そもそもまぁ、親から受けた教育も小遣い無しとかゲーム禁止とか色々縛られるものが多かったですしね。
でも、ちょっと外の空気吸いたいとか、ジュース飲みたいとか、手が届く範囲のものなら持てうるな、と思いました。

また、親の関係で家に強い居心地の悪さを感じていた僕は心の拠り所を友人に求めたところがありました。
ゆえに、友達同士の和気あいあいとした空気感とか、(友達とじゃなく独りだとしても)のんびりとした平和な時間とか、そういったものなら「こういうのって良いよね」と、人に伝わるように表現することができるのではないか、と。

なんだかんだ感情を失い気味の人間にも、なにかしらの「好き」は存在するものだと思っています。それが当たり前すぎて見えていないだとか、なんらかの理由で気づきにくいだけで。
それをイラストの題材にすれば、あるいは。
二次創作にしても、好きなシチュエーションとキャラクターを無理のない合致のさせかたをすれば、あるいは。
試しにその方向で描いたものがありますが、過去の作品を完全に凌駕する勢いの反応をいただけました。いやまぁ、Twitterはその辺運もありますから、それをやれば確実にいいねがもらえるってわけじゃないんですが。実際ここ最近の絵はいまいち伸びが悪いんですが。
ともかくまぁ、僕がまだ完全にモノにでてきてないだけで、可能性を大きくすることができる考え方であると思っています。

感情という視点は面白いものでした。
今までの僕は、まぁこの有様ですからあまり作品に感情移入とか、感動とかをすることはほぼありませんでした。
世間の人々はもっと感情的に生きていて、自分はその辺がどうやら死んでいる、そしておそらく平均よりは友達を大事に感じていると知ってから見る作品はなんというか、見える範囲みたいなものがぐっと広がったように感じます。
僕と同じようなタイプの方は、小林さんちのメイドラゴンとか、ルリドラゴンあたりは「わかる…」って言いながら読めるんじゃないかなと思ったりします。なんかドラゴンが被ってしまいましたがたまたまです。
ワンパンマンとかモブサイコでおなじみ、ONE先生の作品も近いところにある気がします。

自分の好きを見つける。
これが最大のハードル、という方も居ると思っています。
これが誰かの、最後の1ピースになったら幸いです。


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