赤黄色の金木犀

フジファブリックも、アジカンのラジオで知ったんだったっけ。好きな曲はたくさんあるのだけれど、赤黄色の金木犀は特に思い入れがある。実家に植えられているそれの匂いが強くなるにつれて、冷たくなる空気。通学路に散るオレンジ色。なんだか生活のそこかしこに、そっといつもそこにいる花だよね。

noteに書いたかどうか忘れてしまったけれど、志村が亡くなった年のCDJに行くつもりでチケットを取っていた。そして奇しくも志村急逝のニュースが流れた日は友人たちと我が家で宅飲みする予定になっていて、一番乗りで我が家に来た友人のイヤフォンから爆音で流れていたのも、赤黄色の金木犀。
CDJでは誰もいないステージに志村のギターが置かれて、マイクスタンドに彼が良く被っていた帽子が置いてあったように思う。照明はたぶん、本番でやるはずだった色彩やタイミングがそのまま使われたんだろうな。映像だけ過去のライブ映像で、画面の中には志村もフジファブリックもみんないるのに、がらんどうのステージを見ているうちに泣いてしまった。あんなにフェスで悲しい気持ちになったのは、あれが初めてだった。

フジファブリックはそれまでにライブで見たことはあったけれど、まさかこんな形でもう二度と志村の歌う姿を観られなくなるなんて思ってもいなかった。そのあとのお別れ会に中野サンプラザまで行ったりもして、たぶんご家族の方もいらして、やっと志村のいるフジファブリックがこの世から失われたことを実感したんだったなぁ。

そこからずっとずっと、フジファブリックというバンドを守ってきてくれたメンバーにはありがとうという気持ちしかないけれど、今はまださみしいな。誰かが言っていたけれど、メンバーの病気とか急逝とかでなくて本当に良かったけれど。また何年も経った頃、またやろうぜ！ってなって、やってくれたら嬉しい。やってくれなくても、元気でいてくれたら嬉しい。

もしも過ぎ去りしあなたに、すべて伝えられるのならば。そう思ったことが何度もあった。冷夏なんてもうこの世にはないのかもしれないけれど、時が進むのは早いね。これからも人生のそこかしこにフジファブリックの曲があって、季節が移ろっていくんだろう。何回かの金木犀に出会ったあとにでも、またフジファブリックに会えることをほんの少しだけ、期待している。