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【Partner Business × Sales Enablement】Partner Sales Enablement「売り方開発」:Value Propositionとターゲティングの重要性

パートナーサクセスの村田です
パートナービジネス(パートナーセールス/代理店販売)で業績を拡大するための重要な戦略の一つとしてPartner Sales Enablementを提唱しています

前回のnoteでは、Partner Sales Enablementの重要アクション:キーマン特定→クイックウィン→モメンタムの創出の後編を解説させて頂きました。

今回からは、Partner Sales Enablementの核となる、売り方開発について説明していきたいと思います


改めて重要なPartner Sales Enablementのスコープ

どこにフォーカスするべきなのか

以前の投稿で直販とパートナーセールスとの違いから、スコープの重要性を説明させて頂きました。

パートナービジネスというチャネル戦略において、パートナー側のミッションは、まさに「売ること」にあります。
つまり、顧客との会話をどう弾ませて、提案を経てクロージングするという、セールスにおける一連のプロセスは、パートナーサイドが担保すべき能力と言えます。

パートナーサイドから考えれば、営業代行というサービスに対して、マージンという対価を貰うのが、パートナービジネスにおける価値提供であり、契約になるので当然です。

シビアなことを言ってしまえば、ベンダー/メーカー側からすれば、営業力のないパートナーよりも、営業力の高いパートナーとの関係性を深耕をした方が良い言え、「売ってもらうこと」と「売ること」の、相互のパワーバランスの上に成り立っている、とも言えます。

つまり、ベンダー/メーカー側には、パートナーの営業力を育成する義務はないことになり、ここが通常のSales Enablementとの大きな違いになります。

では、Partner Sales Enablementにおいて最も重要なスコープは何かというと、ズバリ、営業企画力になります。
言い換えると、"売り方も含めた商材開発"です。

売り方開発の重要要素①:Value Proposition(バリュープロポジション)

どんな商材でも売れる顧客と売れない顧客がいる

Value Propositionとは、自社の商材が顧客の課題をどう解決しているのか?を言語化するためのもので、Value Proposition Canvasというフレームワークを用いて、自社の商材と顧客のニーズのズレを解消するために活用します。アレックス・オスターワルダー氏の著作、『バリュー・プロポジション・デザイン』で紹介されてから、多くの企業が取り入れています

The Value Proposition Canvas

今では多くの方がその存在自体は認知されていると思います。
一方で、Value Propositonがしっかりと言語化されており、かつ的確に戦略に落とし込めているケースは、意外と少ないのではないでしょうか?

特に日本においては、ものづくりの力や人海戦術を活用した昔ながらの営業力は強みを持つ一方で、欧米に比べてマーケティングが弱いというのは有名な話です。

また、スタートアップや新規事業の場合、商材・サービスを作ることよりも、市場を見つけることの方がハードルが高いケースが多いので、Value Propositionはフレームワークでありながら、その精度を上げることは難易度が高く、むしろ、この精度が事業の成功を決定すると言っても過言ではありません。

少し余談ですが、新規事業の成功要因で最もランクの高いものは、顧客ニーズとの適合性であり、

日経クロステック

少し古いですが、スタートアップスタジオとして有名な米Idealab社のビル・グロース氏もTEDのスピーチで、最も重要な成功要因として、タイミングをあげています。

www.ted.com

タイミングとはつまり、市場が出来つつあるかどうか、ということであり、顧客ニーズとも同意ですので、前述の通り市場を見つけられているかどうかが、事業成功の鍵であると言えます。

実際に、下記のような事例があります。

「自宅玄関用スマートロック」
スマートフォンの専用アプリで自宅の玄関の鍵を開閉できるプロダクトを開発。後から簡単に取り付けができるもだったため、中級層以上のマンションや一軒家の住民をターゲットにしていたが、全然売れませんでした。
なぜ売れなかったのかというと、全く快適な体験ではなかったからです。
アイデア自体は面白いと、最初は興味を持ってもらいましたが、スマートフォンを取り出す→アプリを開く→本人認証を済ませる→開閉ボタンを押す、という動作が、物理的な鍵を取り出してドアを開閉するよりも圧倒的に面倒だったからです。
さらには、通信の状況によっては、すぐにアプリが立ち上がらない・認証が終わらない、などかえって時間を要してしまう状態でした。

プロダクト自体を変えることは困難だったため途方に暮れましたが、あるきっかけから、違う顧客がターゲットになることが判明しました。
それは、賃貸住宅の不動産仲介業者や、その家主でした。
彼らは、賃貸を希望するユーザーが内覧を申し込む度に、日程を調整し、現地に赴き、鍵を管理しなければなりません。鍵の受け取り方法も、内覧の都度、不動産屋と家主とで調整をする必要がありました。
スマートロックを使うことで、ユーザーは、事前に受け取った専用のコードとアプリを使って、不動産屋の営業プレッシャーを一切受けることなく内覧ができ、不動産屋は都度発生する調整作業にとらわれることなく、タイミングよくセールスだけに集中できるようになりました。家主は、データから、いつどのユーザーが内覧をしたのかを把握できるため、内覧時の物損トラブルにも容易に対応できるようになり、三方よしの価値を届けるに至ったのです。

パートナービジネスからは少し離れてしまいましたが、セールスにおいても同様の要素があります。

セールスの本質は「売れる顧客にだけ売る」

セールスという仕事、ないしはスキルは、「お客様に、その商品を買いたいと思ってもらうようにすること」に焦点があたりがちです。
これはこれで間違っていませんが、成果を決定づける要因のうち、多くても5割、少なく見積もって2割程度だと考えています。

何故なら売れない顧客には、どれだけ魅力的な提案をしても、売れないからです。例えば、1ヶ月前にスマホを機種変更した人に、最新機種の高性能スマホを激安価格で提案しても売れないでしょう。

実例に、継続的に高い実績を叩き出すトップセールスの方々は、そのコミュニケーションスキルや提案スキルも素晴らしいですが、一番の要因は"熱い見込み客を大量に抱えている"ことが殆どです

組織的にはこれがボトルネックになることも多いですが、実際に周囲のトップセールスの方達の抱えている顧客リストを見てみてください。おそらく、誰もが提案したくなるようなお客様の名前がズラリと並んでいるはずです。

また余談になりますが、以前こんな方がいました。

宝石商のトップセールスマンのお話しです

彼は常に両手の全ての指に、ド派手な宝石のついた指輪を付けていました。彼は、必ずその状態でお客様とも商談するそうです。正直、いやらしいくらいのド派手さで、つい印象だけに引っ張られた私が、「お客様に嫌がられることはないんですか?」と尋ねると、彼は自慢げな顔でこう言いました。
「私は宝石商ですよ?しかも扱っている宝石は安価ではありません。私がお客様にしているお相手は、その価値をよく分かっていらっしゃる方々です。商談をしている際、この指輪を見て引いてしまうような方であれば、その時点で私は商談をやめてしまいます。何故ならその方は、まだ私の本当のお客様ではないからです。本当のお客様は、私の指輪を見て、目をキラキラさせて「素敵ですね」と言ってくれます。そういう方だけに、私は提案をしているんです。」

うーん。天晴れですね。

自社商材のターゲットと、案件のターゲットは合致しているか?

余談が過ぎましたが、まず自社商材における顧客ターゲットと、パートナーが保有している案件のターゲットが一致しているかどうか、を見極めることが非常に重要です。

そもそもそのパートナー企業の抱える顧客層が、自社のターゲットと合致しているかどうかは調査した上で、パートナーシップを締結していると思います。(パートナービジネスはチャネル戦略ですので、マーケットのPoCとして、新たな顧客群へのアプローチを試みているケースも当然あると思いますが、それはパートナー開拓の文脈に近い話ですので、パートナー担当者のアクティブ率を向上させるターゲットではないはずです)

ただし、この文脈におけるターゲットは、市場規模を表すような広義のマーケットであるため、全ての顧客がクイックウィンにつながるターゲットになるとは限りません。

重要なのは、前述したValue Propositionに、その案件のターゲットがマッチしているかどうか?ということです。

再掲:The Value Proposition Canvas

案件ヒアリングで、まず顧客の解像度を高める

5W1Hで整理する

パートナーセールスでの事例が望ましいですが、難しい場合は直販の事例も踏まえて、これまでの販売実績から見えてくる顧客像と顧客のストーリーは、どのようなものでしょうか?

Whoの違いによって、顧客の課題解決ストーリーは異なると思いますので、複数準備するのが望ましいです。

誰がその商材を扱いたいかによって変わりますが、例えばソフトウェアなどのITツールであれば、実際に活用するのは現場メンバーだが、役職者としてはレポートのみ知りたい、というように、立場によってもニーズが異なるでしょうし、対象者が一人でも十分に価値発揮できるものなのか、あるいは、複数人でないと価値発揮が難しいのか、という論点もあると思います。

セキュリティツールなどであれば、実際に使用するのは少数のエンジニアのみだが影響としては会社全体に及ぶもの、管理ツールであれば、一人であればスプレッドシートなどの無料アプリケーションで十分だが、人数が増えるほど管理が煩雑になるためコストが削減できるもの、など様々あると思います。

この時に注意が必要なことは、事例を営業プロセスではなく、顧客が実際に問題を解決しているストーリーを抽出することです。

セールスにおいて、誰に話をすれば最も契約率が高まるのか?という要素は非常に重要ですが、自社の商材によって顧客が課題解決できている状態を言語化できなければ、その答えは見つかりません。
あるいは、「この役職者に、こういう話をしている時に成約率が高い」という確率論になってしまうため、十分なヒアリングをすることが困難になります。

パートナービジネスで扱う商材は、既に直販での実績があるものですので、直販とパートナーセールスでは、売り方は違えど、顧客の課題解決ストーリーは一致、あるいは類似するはずです。

Value Propositionとターゲット像を伝える

パートナーの保有する案件をヒアリングした際、まずは前述のValue Propositionが発揮できる顧客ターゲットなのかどうか、を確認することが重要です。

顧客ターゲットが合致しているのであれば、次はどのようにセールスを進めるべきかをサポートしましょう。

顧客ターゲットが完全合致していないからといって、必ずしも成果につながらないとは限りません。
また、パートナービジネスにおいては、パートナーとの関係性を構築することが非常に重要(これが全てと言っても過言ではないくらい)ですので、案件のヒアリングをきっかけに、関係を深耕していくため、顧客ターゲットが合致していなくとも、セールスサポートを諦めてはいけません。

ここで重要なのは、Value Propositionに合致した顧客ターゲット像を、パートナー担当者にしっかりとレクチャーすることです。
今回の案件は、営業同席をしても、残念ながら結果に結びつかないかもしれませんが、継続的に案件を獲得していただくために、どういった顧客を連れてこれば売れるのか、を伝えることは、パートナー担当者にとっても非常に価値のある情報です。

むしろ、適切な顧客から案件を獲得してくれさえすれば、あとは営業同席でクロージングする、という手段の方が、クイックウィンに繋げやすいので、効果が高いと言えます。

まとめ

Value Propositionを言語化して顧客ターゲットの解像度を高める

今回はクイックウィンに必要な要素として、顧客ターゲットの重要性を説明させていただきました。
顧客の解像度を高めるのはビジネスの肝ですが、改めて考えてみると、まだまだ解像度が粗い状態のまま、というケースは少なくないのではないでしょうか?

これは自戒も込めて、改めて取り組みたいと思います。

最後にまた余談:問題と課題

「顧客の問題・課題」というキーワードが出ましたが、問題と課題の意味を間違って使っているケースは、とても多いですね。
言葉や発言に最も厳しいはずの某テレビ局の報道でも、間違って使われているのを見たことがあります。

■問題
目標(ToBe)と現実(AsIs)との差分(GAP)のことであり、発生している・または認識している、解決したい現象・事象
■課題
問題を解決するために、取り組むこと・タスク

学校では、「夏休みの課題」が出ますが、夏休みの問題とは言わないですね。取り組むものは「問題集」だったりしますが、問題は「これを解きなさい」という解く対象を指しており、問題集を解くことで学力を向上させるという取り組み = 課題、という意味ですね。

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