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【 #ヒトシネマ 】小説家と歌うたいのセッション

こんにちは、ヒトシです。
本当に久しぶりのヒトシネマになりました。……1ヵ月ぶりのようです。

さて、中高生の頃に栞がちぎれ、カバーが破けるまで読んだ作品や好きな作家が誰しもいるかと思います(当社調べ)。私の場合は伊坂幸太郎さんでした。伊坂作品を読み過ぎてその後の人生にちょっと影響したくらいには好きな作家、と言って差し支えありません。そんな伊坂先生と歌手の斉藤和義さんによる「10年越しのセッション」が産んだのが今回の作品です。

今回の作品
「アイネクライネナハトムジーク」(令和元年・ギャガ)

そもそもこの映画のルーツになったのが『ベリーベリーストロング』という1曲。物理CDが入手困難なこの曲、「伊坂先生が斉藤さんのただならぬファンだった」ということを起点に実現したコラボ楽曲です。駅前の街頭アンケートに駆り出された主人公を取り巻く人々の悲喜こもごもを描いた(ちょっと長い)楽曲は伊坂先生のハートに更に火をつけ、連作小説『アイネクライネナハトムジーク』を刊行。更に映画化に際し斉藤さんが「ベリーベリーストロング」のアンサーソングとして今回の映画主題歌「小さな夜」を発表する……という、10年以上に渡る異業種間ラリーの到達点が今回の映画になります。

この物語の起点は2008年。「先輩の事情を聞いて動揺した結果会社のサーバーを一部ダメにした」ちょっとならず残念な若手社員・佐藤は、仙台駅前で街頭アンケートに駆り出されます。折しも世は日本人初のボクシングヘビー級王者タイトルマッチの最中、アンケートに答えてくれる人など誰もいません。ストリートミュージシャンの曲を聴きながら立ち続ける佐藤に声をかけたのは就活中の本間さん。手に「シャンプー」とメモしていた本間さんに惹かれた佐藤は、それから『出会い』とはなんなのかを少しずつ考えるようになります。妻子に逃げられた先輩、上から目線気味の同級生、常連客の弟と奇妙な関係になった美容師、日本人初のボクシングヘビー級王者になった男。繋がるような、繋がらないような物語は10年後の2018年に舞台を移す後半でさらに加速し、ゆっくりと収斂していきます。佐藤と本間さんの恋は成就するのか。同級生は10年後も家庭を守れたのか。先輩の家庭は修復できたのか。ヘビー級王者は王座を守れたのか、美容師と常連客はその後どうなったのか。これは、少しビターで、暖かく、「いいぞもっとやれ!」と快哉を叫びたくなる人々の物語……。

そしてこの映画は「伊坂先生第2の故郷」仙台市がロケ地となり、「劇中ロケ地の過半を歩いて回れる」仙台ローカルムービーにもなっています(このため9/13から宮城県のみ先行上映となっていました)。全国的に有名なあの場所から地元住民お馴染みのスポット、更にはマニア好みの通りまで。宮城が全国に誇る「あの二人」もこっそり(?)出るローカル日常タペストリー、是非劇場でご覧ください。

【まとめ】
地元愛:4.2/5.0(もうちょっと目立たずに出れないんですかお二人とも)
音楽:3.9/5.0(逆に斉藤さんが監修しないと落ち着かないまである)
ラスト:3.8/5.0(最高に柔らかい着地点)


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