大入荘の彩子さん

私のアパートね、「出る」のよ。
そういうと大概引かれるのだが、本当に出るものは出る。噂が先行し入居者は減り、とうとう4月から私だけになった。それでも大家さんは健気に入居者を探してる。駅から10分、風呂トイレ別。悪い立地じゃないのだけれど。

まぁ、私も最初はびっくりした。大学1年だから、5年前の話。引越しそば持って隣の203号室に行って、ひっくり返ったっけ。

ぬもっ、たぱぁん。

どぉーもぉー。
透明でたぷたぷした巨体が、部屋を半分満たしていた。どっから声出てんのこの……人?巨体の一部を器用に変えて腕を作り、握手を求めてくる。

は……はぁ、はじめまして。
よぉーろしくねーぇ。
もちもちぷにぷにの腕に振り回される、ちょっとハードな握手だ。
そう、203号室の菅井さんはスライム。逆隣の蛍さんはポータル、即ち床に空いた大穴。

私以外全員、「こんな感じ」だ。

【1年目春 蛍さんvs花見客 に続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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