町内会戦

北口商店街　月曜　05:30

時計屋がラッパを吹き、一斉に老人達が構える。
手にはゴルフクラブ。足元にはパター用のティー。
原田“将軍”の号令で、総勢75球×10回のゴルフボールが南口を襲う。
完全に傷害罪だが、やるしかない。
「一斉砲撃」の用意は万端である。

半減した市からの補助金を巡り北口と南口が交渉決裂したのは半月前。南北の商店街長が喧嘩の末入院し、開戦の機運は高まった。
各入口にバリケードを張り、義勇軍が徴兵を開始。
和平工作の計画は崩れ、スパイは吊し上げられた。
駐在は武装解除の上監禁済み。
ルビコンの河は既に過ぎたのだ。

メガホンを握る手に汗が滲む。
将軍は叫ぶ。
「全軍ッ、う」
「敵襲ーッ！軽トラ突貫！」
爆発。ついで轟音。民間人を顧みぬ凶行か。
「ぅう、撃てエーッ！」
てんでばらばらに“砲丸”が飛ぶ。
あまりに惨めな、開戦の朝であった。

【寸断作戦　へ続く】