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われら新天星開発公団

泥7節から10節ころのボルスは俗に「新人殺し」と呼ばれる。岩泥混質の滑らかな挙動に目測を狂わされたパイロットが操作を誤り、大概は張り手を横から浴びて爆散する。5建高の巨躯と相反する反応速度から、8期公団までは泥節中の「整地」が禁止された程だ。
今は違う。爆炸弾頭に燃束、何より新型の機体がある。ボルスの挙動をサイトに捉えつつ、飛んでくる熱誘導ミサイルも……え?
ミサイル

「モリタ!3番機!」
「大丈夫ですよ、燃束がやられただけです」
斥候隊ですら見抜けなかった。左腿のミサイルポッド。2発躱して2発被弾。弾頭と機体に傷がなかったのが救いだ。
「残距離10径、照準誤差10半度!継戦できます!」
「……生きて帰って来い!」
「重酒、樽で用意しててくださいよ!」
新天地開発公団の意地を見せてやる。
通信終了。操縦桿と照準に意識を全集約。
距離8径、ボルス全高を目視。5加半建高か。
6径9、ミサイル飛来。躱しつつ右掌側へ。
4径3、右掌に沿って外旋回。核体下方に照準。
3径7、極短距離加速解禁。単径に詰める。
内径9、トリガカバー解除。
「当たれぇぇっ!」

ゴパアッ。


低空に泥の花火が上がった。
ボルス胴部の6割が飛散し、土気色の胎児が地表に落下する。核体だ。
俺は機体を飛び降り、スラスタを展開。
武装選択。粒子形成銛でカマす。
ゴプッ、プグッ。
這い回りながら核体は外体構築を再開。
右手を伸ばしてくる。
「その手は乗らねぇぞ!」
俺の放った銛は、新人殺しの額に吸い込まれていった。

―――
「副団長!被験6号が」
「見えてたよ」
灰髪の男は振り返らずに応えた。
「三混質としては上手く行ってたんだよな、彼」
モニタには崩壊するボルス、もとい被験6号の姿。左脚に公団輸送船の残骸を組み入れた新型だった。
「だがまぁ、分かったこともある」
「と申しますと」
「彼我の実力差は確実に縮んだ」
副団長の口角は僅かに上がった。
「公団壊滅の日は、近いよ」

【続く】

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