ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来[抜書き]

「イーエストニア」と呼ばれる、政府の電子化。国民にデジタルIDカードを配布し、行政サービスを全て電子化。具体的に何が出来るのかというと、例えば、住民票の変更や確定申告、選挙の投票がスマホで出来る。さらに、子育て支援に関する制度への申し込みは全て自動で行われる。国民が出生届を提出したり、出産育児一時金のような申請をする必要もない。これは子供が誕生すると、病院側がオンラインで国民登録手続きを行うことで、その子供に国民IDが割り振られるので、国民の年齢は電子上で管理されている。したがって、適齢期になれば自動で政府の方からアクションがあるということだと思う。また、政府の議事録は全て公開され、紙の書類は使わない。車などの所有権の移転も短時間で行うことができる。カルテは電子化されており、既往症や電子画像、薬の服用歴などのデータが一元化されている。この政府のデータベースが民間のデータベースと繋がっているので、預金残高を元にして納税額を自動で計算することが可能。

課税が適切にスムーズになるだけでなく、日本で言う生活保護も自動的に振り込まれるということになる。ただし、資力調査をいかに正確に行えるかという課題はある。国民の方が申請しないで、政府が自ら支援するという在り方は行政の一つの理想だと感じた。日本にはまだまだ伸びしろがある。

孫泰蔵は、スマートコントラクトにより、「これまで不確定要素を織り込めなかったために動かせなかった案件」がうまく進むようになるという。初めは条件式を変数にしておき、後から変数の部分を判明した時に記述することで、完成したスマートコントラクトが発動して、全てが自動的に動くという。

孫の、今まで紙の書類で契約書を作成していた際には「さまざまな場合分けをして、とことん詰めましょう」と言う話になるので、スマートコントラクトなら大丈夫という説明はよく分からない。なぜなら、結局プログラミングでも何通りもの条件式を書く必要があるのではないかと思うから。変数に人の名前が入るくらいなら、意味は分かるが、実際にビジネスする時にスマートコントラクトはより複雑な内容を記述したりするのではないかと思う。ただ、私自身スマートコントラクトは耳学問なので、的外れなこと言っている可能性はある。

もしサイバー攻撃を受けて、最も危惧するべきことは何か。エストニアの答えは、データの「完全性」がなくなること。例えば、医療機関で患者の血液型データを書き換えられるとする。これは、それまでの患者のデータが失われるばかりか、本当のデータが何なのかも分からなくなる。それが誰も知らないところで密かに行われていたとしたら、人命に関わることになる。医療に限らず、インフラの設定情報や重要機密公文書など、重要なデータが書き換えられ、本当のデータと整合性がつかなくなれば、復元できなくなるだけでなく、運用もできない。それが最も深刻な問題に繋がるとエストニアは考えたという。これがデータの「完全性」で、セキュリティ上、最重要視されている。このデータの完全性を担保するため、エストニアの技術では、データが書き換えられることを「防止」するのではなく、データが書き換えられたならば即発見できるよう「追跡」する仕組みをブロックチェーンのマークルツリーで築いた。

小島健志 「つまらなくない未来」 ダイヤモンド社.2018


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