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握られたコイン


ある晴れた日曜日、以前勤めていた
和雑貨屋にとっても可愛いお客様が
来店した。

女の子の姉妹で、姉が小学校1年生、
妹が5歳だと話してくれた。

「駄菓子ありますか」

「ごめんね。前まで置いていたのだけ
ど、今は売ってないの」

「そうなんだ……」

2人は手のひらサイズのジッパーに
100円玉が1個入っている袋を
握りしめていた。

「お店の中、いろいろあるから見ていってね」

声を掛けてレジに戻った。

「わぁかわいい。これ欲しい」


姉が高さ2センチほどのガラスの犬を
見て言った。

250円だ。あと消費税もかかる。

「少しお金が足りないね。500円玉だったらおつりも渡せるよ。お母さんに相談してみたらどうかな」と言うと、

「分かった。また戻ってくるね」

そう言い残して2人は自宅へと
帰って行った。

30分ほど過ぎた時点で、もう戻ってこないかなと思った。


その数分後、予想に反して2人は
全速力で戻ってきた。

手には500円玉が握られている。


「約束通り帰って来たよ。お母さんは自分のお金で買うのだから、好きな物を買っていいよって言ったよ」

姉は犬の置物、妹は200円で駒を
買った。


帰り際、2人は振り返ってこう言った。

「絶対大切にするよ。ありがとう」


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