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コンサルタントは大きな図書館の司書だと思う

このnoteを読み始める前に、イメージして欲しいものがあります。

巨大な、美しい図書館。世界中のあらゆる蔵書が揃っていて、きっとそこにあなたの知りたい情報も眠っている。あなたは何かを知りたくてここにやってきました。自分で本を買い集めるにはお金が足りず、適切な本もわからず、途方に暮れてしまって、この図書館を訪れたのです。でも、図書館はあまりに広く、本はあまりに多く、あなたはその図書館をどう歩いて、どうやって欲しい本を見つけたらいいのかもわからない――。

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※画像は私が通っていた大学の図書館です。


コンサルタント。私にとっては、小さい頃からなじみ深い言葉でした。母は経営コンサルタント、という冠を持って私が幼い頃から仕事をしています。横文字なんてちんぷんかんぷんだった時代に「ママの仕事ってどういうこと?」と聞いたことがあり、母はこう答えました。「会社をやってお金稼ぎたい人の先生」。

世間のコンサルタントへのイメージってどんな感じなのでしょうか。

高給取り、専門職、世界を飛び回っていそう、忙しそう、激務、なんか胡散臭い、頭いい人がなるもの。

残念ながら私の母は世界中は飛び回っていないし(日本中は飛び回っていて「もうすぐ47都道府県コンプリート♡」とは言っていたけど)、フリーランスで結構自由にやっているのを見て育ったので、世間のコンサルのイメージと私にとってのコンサルタントのイメージは乖離していると思います。

そんな私も、齢24にして初めて”コンサルタント”という職業に就きました。実際自分がやってみて、コンサルという職業が本質的にどんなものなのかを考え、まとめてみました。「コンサルってなにするの?」という人に読んでいただけたら幸いです。

「コンサル」と一口で言ってもいろいろある

これは私のステレオタイプですが、コンサルタントと聞くとこんなイメージが浮かびます。

バシッとスーツを着た背の高いお兄さん・お姉さんが、会社の重役がぐるっと囲む円卓の前に立ち、作り込まれたプレゼン資料について熱く語る。時にヒートアップして机を叩きながら、「これが御社の状況を救う唯一の手段なのです!」と声を張る。ドラマの見過ぎですね。

コンサルタントと名乗っている私は、時にジーパンとTシャツでクライアント様と打ち合わせをしますし、スーツなんて社会人になってから数えるほどしか着ていません。でも私は「コンサル」です。

コンサルと一口に言っても、私が持つステレオタイプのような働き方をしている人もいれば、そうでない人もいます。世の中には多くの「〇〇コンサルタント」がいますが、代表されるのは以下のようなもの。

・総合系
・戦略系
・IT系
・人事系
・財務アドバイザリー系
・シンクタンク系
・監査法人系
・国内独立系
・企業・事業再生系

この他に、「イメージコンサルタント」「カラーコンサルタント」「ファッションコンサルタント」などなど、いろいろな”〇〇コンサル”を目にします。

ちょっと調べて見たのですが、コンサルタントの語源は「共に座る」という意味のラテン語、「consiliarius」から来ているそうです。一緒に座って、一緒に考えましょう、ということでしょうか。つまり、一緒に座って一緒に考えればあなたはもうコンサルタント。

コーチングは人生コンサルタントだし、カウンセラーはメンタルコンサルタントだし、バーのマスターはたぶんアルコールコンサルタント。居酒屋で一緒に酒を飲みながらなぜ私に彼氏ができないのか一緒に考えてくれた友達は恋愛コンサルタントです。

ちなみに、私は「採用コンサルタント」です。確かにクライアント様と一緒の席について膝を突き合わせ、どうやって採用を成功させようかと頭をひねるのが私の仕事なので、間違ってはいないでしょう。よかった、どうやら私は「コンサルタント」と名乗って差し支えないようですね。

なぜコンサルは「お金をもらえる」のか

共に座ればもうコンサルタント。ではなぜそこにお金が発生するのか。なぜコンサルタントの給与は高いのか。不思議ですよね、だって居酒屋で「彼氏に振られたああ」と号泣する私の問題点を一緒に考えてくれたあの子だってコンサルっちゃあコンサルなんですから。

大手コンサル会社の経営コンサルティングフィーは当たり前のように月額ウン百万円。これも、とても不思議でした。

経営のコンサルティングをするのは、経営コンサルティング会社の社員。彼らは一度も”経営”なんてしたことがないのです。なのになんでコンサルティングができるのか?

なぜなら、そこに専門性があるからです。経営コンサルタントは経営に対して専門的な知識を持っている。専門的な知識を分解すると以下のようになります。

1. 業界の流行に関する知識
2. 業界における”勝ち筋”のケーススタディ
3. 業界の人が知っておくべき基礎知識
4. それらの知識を必要に応じて引っ張り出し、結びつけ、目の前のケースに適応する能力

「経営者」と「経営コンサルタント」の大きな違いはこの専門性の差です。もちろん経営者は、経営を生業としている人ですから経営に関してはプロフェッショナルなはずです。ただ、そのプロフェッショナル性はあくまでも「自分が経営している会社」に対してのプロフェッショナル性であり、より抽象的な「経営」そのものに対するプロフェッショナル性ではありません

コンサルティングに高いお金が支払われる理由は、圧倒的”ケース”の差。コンサルティング会社は、業界を俯瞰して見た上で多くの”ケース”を持っています。一社の知識だけではなく、何百何千何万という会社のトライ&エラーをデータとして持っているため、それと照らし合わせながら適切なコンサルティングができているのです。さらに、それらのデータをもとに「コンサルティング会社独自の」勝ち方を幾パターンも持っている。

たった一人の経営者が、何百何千何万というケースを集め、それを分析し、自社のケースに当てはめる……というのは本当に骨が折れる作業です。もちろん時間をかければできるでしょう。でも時間は有限です。だから、たくさんの知識を持っているコンサルタントに相談する。共に席に着き、一緒に考えてもらうのです。

たとえば、私は採用コンサルタントをやっているHeaR株式会社の場合。

私たちはスタートアップなので、創業当初そうたくさんの事例を持っているわけではありませんでした。それをカバーするため、私たちの会社は世界中からありったけの情報を集め、時間をかけ、それらを採用に応用する方法を頭をひねって考え出しました。たくさんの人の頭と時間を使って。

私たちに採用コンサルをお願いした場合、その企業の勝ち筋がコンサルの立場から提示されます。それはおそらく、会社の人事の人が膨大な時間をかけ、調べてまとめてデータ化すれば出てくるものです。その時間を短縮し、最短距離で成功に導くことができるからコンサルティング会社は価値を生むことができています。

コンサルティングフィーはつまり、「膨大な時間や人手を費やしたくさんのデータを集め、そのデータを分析した上で自社のケースに当てはめる」という作業を代行してもらうことに発生するお金なのです。

会社は「図書館」、コンサルタントは「司書」である。

ところでみなさん、図書館は好きですか? 私はとても好きです。図書館には私が一生かけても読みきれないほどの知識が集まっています。そしてそれらの本はルールに従って理路整然と並んでおり、図書館で適切な検索をかけることで何万冊の中からたった一冊の必要な本にたどり着くことができるシステムになっている。あんなに素晴らしい空間はありません。

図書館の格は蔵書数で決まるそうです。どれだけ多くの本を所有しているか。本の数で単純に勝負が決まらないケースもあります。それは、”徹底的に”専門書のみを集めた場合。発行部数100冊の本だとしても、専門性が高く素晴らしい内容が書いてあればそれを所有している図書館は格が高い。

冒頭で「図書館をイメージしてほしい」といったことを聡明なみなさんは多分覚えていらっしゃると思います。

私はこう考えています。

コンサルティング会社は図書館です。世界中から集めた蔵書が揃っている。あるいは、圧倒的に専門的な、誰も知らないような本を揃えている。一人の人間が読みきれないほどの本が置いてある場所なのです。

言うなれば、コンサルティング会社にコンサルを依頼する人は図書館を訪れた人、でしょうか。何かの知識や打開策を求めて、図書館にやってきた。たくさんの本を自分で買い集めることもできたけれど、本は読んで見なければ自分が欲しい情報があったのかはわからない。まさにシュレディンガーの猫、開けて見なければわからないことに人生の貴重な時間を割くことはそうそうできません。

そして、コンサルタント。コンサルタントは、図書館の司書です。どこにどんな本があるかを把握しており訪れた人の話を聞くことで「あなたにはこの本がオススメですよ」というものをたくさん持ってくることができる。……司書さんは必ずしも図書館の本を全て知って、読んでいるわけではありません。ただ、圧倒的に”どこになにがあるのか”探す力に優れている必要があります。

コンサルティング会社の格は蔵書数、つまりその会社が所有している知識のデータ数で決まります(もしくは、その専門性。小さなことまで拾い上げる徹底した専門領域の”蔵書数”)。そして、そのデータを理路整然と収納しておく必要がある。コンサルタントの格は、いかにその図書館にどんな本があるのかを知り尽くし、適切な本がどこにあるのかを見つけ出せるかにかかっています。

だから経営コンサルが経営経験者である必要は必ずしもないのです。

これはどんなコンサルティング会社でも変わらないと思います。コンサルティング会社は世界中のあらゆる場所から本を集め、あるいは出会ったお客さんとのことを本として保管する。コンサルタントは、必要な情報をいつでもどこでも持ってこれるようにする。

これが”コンサルタント”という職業の解説です。

少し興味が湧いたでしょうか。少しイメージがついたでしょうか。

ところでこれを読んでくれている方、採用コンサルのお仕事に興味はありませんか? 私のいるHeaR株式会社は採用コンサルティングファームです。現在、一緒に働いてくれる採用コンサルを探しています。ぜひ一緒に、HeaRという図書館をより大きくし、図書館を縦横無尽に歩き回り、訪れたお客さんに運命の一冊を手渡すお仕事をしましょう。




スタートアップでがんばっております。ぜひ翼をさずけてください。