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腰部・骨盤帯 第13回 《腰椎椎間板ヘルニア》

腰椎の過剰な屈曲により腰椎椎間板内の髄核が後外側へ脱出し、神経根を圧迫することにより、下肢への痺れ・疼痛・筋力低下が生じる。

これが腰椎椎間板ヘルニアの病態ですが、

一体どのくらいの屈曲負荷でヘルニアは形成されるのでしょうか?

"260Nの圧縮負荷で 85,000同まで屈曲を行つてもヘルニアは生じなかったが,867Nの負荷では22,000~28,000回の屈曲動作の繰り返しでヘルニアが形成され, さらに1,472Nの負荷ではわずか 5,000~ 9,500回しか必要なかった. "(Callaghan and McGill, 2001)

力学的な研究によると、

26kg程度の圧縮負荷8万5千回、屈曲運動を行ってもヘルニアは生じなかった。

86kg程度の負荷で2万2千~8千回の屈曲動作の繰り返しでヘルニアは形成された。

147kg程度の負荷ではわずか5千~9千回で、ヘルニアが形成された。

この研究からわかることは、

重量物を扱う労働者などで、尚且つ、屈曲回数が多ければヘルニアは形成されやすい。

重量物が重ければ重いほど、少ない屈曲回数でヘルニアは形成されてしまう。

ということです。

※セラピストや介護職の方は、頻回に、介助で患者さんを持ち上げているので、重たい患者さんを介助する場合は注意して下さい。

また

年齢が若い人ほど、ヘルニアは形成されやすいといわれています。

"ヘルニアの形成は若年者の脊柱で起こる傾向があり,より多く水分を合み,より静水圧的な挙動を示す脊柱に起こりやすい."(Adams and Hutton, 1985)(Adams and Muir, 1976)

まとめると

『負荷量』『屈曲回数』『年齢の若さ』この危険因子の掛け合わせで、ヘルニアが形成されるかが決定されます。

また髄核の脱出方向は後外側ですが、

真後ろには、靭帯があるので、その方向へは脱出しにくいです。

ヘルニアが右外側後方に形成されるか、

左外側後方に形成されるかは

屈曲する運動軸に依存します。(Aultman,Scannell,and McGill, 2005)
※たとえば左回旋を伴う屈曲であれば、左後方へ髄核が脱出します。

そして、椎間板の形が

"楕円形であればより外側よりへ、

蝸牛形であれば、真後ろよりへ

髄核が脱出します"(Yates,Giangregorlo and McGill, 2010)

もし、画像所見で、右外側後方へ髄核の脱出があれば、

日常的に、右回旋しながら屈曲動作をしている

また

アライメント上、腰椎が右回旋位である

ということが想定できます。

このように髄核の脱出方向を把握するだけでも、

ADL指導やリハビリの訓練内容にも影響してくるでしょう。

引用

Callaghan, J.P., and McGill, S.M. 2001 : Intervertebral disc herniation: Studies on a porcine model expose to highly repetitive flexion/extension motion with compressive force. Clinical Biomechanics,16(1):28-37.

Adams, M.A., and Hutton, W.C. 1985 : Gradual disc prolapse. Spine,10:524.

Adams, P., and Muir, H. 1976 : Qualitive changes with age of proteoglycans of human lumber disc. Annals of the Rheumatic Diseases,35:289.

Aultman, C.D., Scannell, J., and McGill, S.M. 2005:Predicting the direction of nucleus tracking in porcine spine motion segments subjected to repetitive flexion and simultaneous lateral band. Clinical Biomechanics,20; 126-129.

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