新型インフルエンザ等対策特別措置法と新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症が諸外国で猛威を奮っています。国内でも「クラスター(集団感染)」「オーバーシュート(患者の爆発的な増加)」「ロックダウン(封鎖)」などという新しい横文字が世の中を席巻しています。
中国・武漢から初めて報告されたこのウイルス感染症、日本はその輸入例(国外から日本に来た人が感染していた事例)を見つけた世界で二番目の国でした。その後も、(日本国内ではまだそれほど陽性者が報告されていないのに)渡航歴が無い感染者も早くに見つかりました。2月の初めには、横浜港に着岸したクルーズ船ダイアモンド・プリンセス号で、大規模な船内流行が発生し、東京周辺の病院の感染症病床が新型コロナ患者でいっぱいになるという未曾有の事態が起こりました。
2月の末には、札幌雪まつりを契機にして感染者が増加していた北海道で、北海道知事が「緊急事態宣言」を出し、道内の週末外出自粛や学校休校を呼びかけました。時を同じくして、政府は、基本方針を発表し、大規模イベントの自粛と学校休校を呼びかけました。一方で「クラスター対策」を看板に掲げ、集団感染を早期に見つけ、徹底した感染源と接触者の調査を行い、クラスターを封じ込めるという戦略を併せてとってきました。また、そのような集団感染が起きやすい場所の「3要素」を周知し、注意を呼びかけてきました。その効果もあってか、国内の新型コロナウイルス感染症患者は、全国的に(諸外国に比べれば)ゆっくりと増加している状態です。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」2020 年3月9日より
そうしている間に、イラン、韓国、イタリア、フランス、ドイツ、スペイン、英国など欧州諸国、米国と先進国を含む諸外国で、「オーバーシュート」と呼ばれる患者の爆発的な増加が起こりました。オーバーシュートが起きた都市では、「ロックダウン」と呼ばれる、外出禁止などによる都市の封鎖政策をを行うという事態に追い込まれています。これは非常に社会的・経済的な影響が大きい施策です。いまや、「日本はなぜまだオーバーシュートしていないの?」と不思議に思われているのが実情です。
各国の患者数増加状況等の図→ https://www.ft.com/coronavirus-latest
新型コロナは薬もワクチンも無い、人から人に感染する感染症です。さらに、人々も免疫を持っていない。何らかの感染対策を行わなければ感染は簡単に拡大します。しかしながらこの感染症は、無症状の人や軽症の人が多いことも知られています。そういった方は医療機関を受診しません。しかしながら、感染性がある人もいます。病院や医療機関にも訪れない感染者により、見えないところでも感染が広がります。感染しても8割の方は次に感染させることなく終わると考えられていますが、まん延が進むと、感染連鎖を止めるには、人と人の接触機会をできるだけ少なくするしかありません。
この新型コロナウイルス のパンデミック(汎世界流行)に立ち向かうため、国家の危機管理のための法律「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が改正され、3月14日から施行されています。一体どんな法律なのか、この法律によって何が起こるのかを解説していきたいと思います。