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クリニックはそのうち、コンビニの「ATM」になる

新興国と医療AI

タイトルの写真、一見変わった自販機に見えますがこれ、実は中国の「クリニック」なんです。

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このプリクラみたいな機械の中で症状を伝え、診断、右隣にある自動販売機で薬を購入。日本の医療文化から考えると「えっ…あり得ない…」という感じですよね。

中国は貧困層の多さや、その国土の広さから、医療を国民全体に提供することが難しい側面があります。特に、平安保険と言う保険会社、このような全く新しい医療サービスが提供を行なっています。(以下記事参照)

対してアフリカでは。

Novartis FoundationとMicrosoftが支援する新しいレポート“Reimagining Global Health through Artificial Intelligence: The Roadmap to AI Maturity”では、低所得国が人工知能(AI)を強力に活用して、パンデミックの最中および発生後に医療システムを強化していることがわかりました。また、低所得国の特にアフリカ諸国が、AI対応の医療技術で先進国よりも勝るパフォーマンスをする可能性があることを示唆しています。
アフリカの医療従事者の不足は深刻であり、人口1,000人当たり医師数が0.1に満たない国が多くあります。ルワンダではこの課題に対して、機械学習を使用して音声やフリーテキストを使用して患者と対話する人工知能チャットボットのソリューションを導入し、1人の医師が最大60,000人にサービスを提供することができたということです。(以下記事参照)

「AI医療技術で先進国よりも勝るパフォーマンスをする可能性」
「1人の医師が6万人にサービスを提供することができる」

日本でクリニックの医師が1日に診れる患者数は100人程度です。1ヶ月20営業日でも2000人。(もちろん質的評価を抜きにしているので、apple to appleな比較ではないが、参考までに)

上記の2例の通り、医療先進国である日本と比較し、世界の新興国では様々な理由から医療分野にAIが参入しています。

先進国のようにインフラが整備されていないからこそ新しい技術が浸透していきやすい、これをLeap Frogと言います。

日本の医療費って何に使われているの?

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少し古いデータになりますが、一番右の棒グラフを見て見てください。医療費、基本的に50%が人件費、20%が薬剤費です。日本では医療費の半分は人件費に消えています。このお金を使って得られている効果は?(費用対効果)

医療費を使ってどんな効果が生まれているか?

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ちょっとわかりづらいグラフですが、実際に病院(外来)を受診する人がどのような病気にかかっているかということがわかります。

特に「循環器」「呼吸器」「消化器」などを見てもらうと、いわゆる風邪だとか、高血圧、胃腸炎などその多くは重症度が低いが8割な訳なんですね。

最近、「効率化によって、医療者と患者のコミュニケーション」という言葉を聞きますが、ここで疑問があります。

医療の本質とは、以下の二つが重要かと思うんですが、

①身体負担の軽減
②上記に伴う精神負担の軽減

もちろん風邪でも胃腸炎でも①身体負担は感じます。しかし、特に年を経れば経るほど、風邪はすぐに治る、胃腸炎もそのうち治ることが経験的に理解している。

そう考えると、②精神負担ってそんなにないのではないか?というのが最近の僕の考え。すなわち、AIでも、機械でも全然いいのでは?

(もちろん、ただの風邪、と思っていた中に本当に重症な病態が隠れていることもあると思います)

加えて、安静にして治る症状なのであれば、薬って欲しいですか?

ただの風邪、の時に薬出されるの、(自信こそ医療者ですが)本当にいやです。90%は寝てれば治るんだし、例えば風邪をひいた時に熱が出るのは、ウイルス、細菌を殺すため。それなのに、解熱薬処方して、そんなことしたら風邪が長引いてしまうだけ。(40度など高熱でない限り)不必要な処方というのが日本ではあり得ないくらい常識になっている。

コンビニにプリクラ病院を作るのはどうだろうか?

そこで考えたのが、プリクラ病院です。(一番最初の中国の事例を元に)

そこには一通り検査機器は揃っていて、症状がAIによって(場合によってその場でオンラインに医師につながり)問診、診断が行われる。

「98%の確率で風邪です。安静にしていれば、1週間で治ります。」

と診断された場合、あなたは隣の自販機で薬を買いますか?

そう考えると、「病院で診断され、処方箋をわざわざ先生が出して」くれた上で、少し歩くと薬局が立っており、自動的に足を運び、薬をもらう。
(そう考えると、いいマーケティング、CXですね)

よって、コンビニ病院によって世の中の8割方が罹患している軽い疾患はそちらに任せ、重症度の高いものをしっかりケアする、ということが可能になる。

不必要な内服も減って薬剤費も落ちる、医療者の負担もある程度重症度の高い病態のみ、人件費も削減され、圧倒的に低コストを実現できるような気がします。

医療と競争原理

もちろん、言うは易し、なんですが、日本では医療というある種のサービスと捉えた場合、そのサプライヤーは誰でしょう?厚労省、医師会ですね。

例えていうのであれば、一般診療所、クリニックは厚労省や医師会の子会社と扱うこともできます。

すなわち、医療の業界では市場システムの中でその根本的な役割を担う競争原理が働かないわけです。競争がなければもちろん「もっと安く、もっと早く走りたい!」という欲求は生まれないわけで、医療の効率化に対してあまり危機感を感じられないわけですね。

そして、開業医の数は年々増えています。対して、今後外来患者数は低減、2030年には医師需給はバランス、以後医師は過剰になることがわかっています。

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人間一人が正確に疾患を診断できるレベルなどたかが知れていると思います。それなら1日数百万のデータを吸収し、24時間寝ることなく学習し続けるAIに任せる方が(そのうち)よっぽど精度が高くなることは明らかです。

しかし、イノベーションによってそれまで必要であったものは必ず不要になります。馬車は必要ですか?印鑑必要ですか?そろばん必要ですか?(もちろんこれは、感情論や「頭の体操」などを抜きに、合理性のみ前提としています)

現在日本では、イノベーションのジレンマがずるずると許されている環境ということができるかもしれません。

ゆっくりと忍び寄る新しい医療

一つの解決策として、上記の通り既得権益の中では破壊的イノベーションを一気に起こすことが難しいからこそ、全方良しのサービスによって大胆な反逆ではなく、静かなハッキングによるシステムの再構築が行われていきます。

時間はまだまだかかりますし、冒頭で説明した新興国の方が究極的には医療インフラが整う速度が早いかもしれません。(世界でスタンダードとなっている、ガイドラインに基づいた非個別化医療は良く考えると乱暴なもので、今後は一人ひとりに合わせたテーラーメード医療が普及する)


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