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ネオサイタマではIRCが有力である背景の考察

ネオサイタマではIRCなど、1990年以前あたりの技術が主流になっている描写がある。このせいでネオサイタマはレトロフューチャーな趣があるのだが、こうなった問題の根源はY2K、2000年にUNIXが爆発するようになったところに遡るだろう(このエントリは下記自由研究に触発されて書きました)。

UNIXが爆発したらまともな開発はできない

ネオサイタマではUNIXが桁あふれや過負荷により爆発する。プログラマ視点で見た場合これは深刻である。なぜなら、デバッグ行為中には桁あふれや過負荷が起きる事はほとんど当たり前のことであり、そのたびにいちいちUNIXが爆発するとなると、デバッグ行為=開発自体がほとんど不可能になるからである。バグが一つ出るたびにUNIXが吹き飛んでいてはコスト的にまず合わないし、最悪人が死ぬ。このような状況でまともな開発はできはしまい。

Y2Kは2000年に起きた。その頃はプログラミング言語と言えばC言語かC++といった時代であり、ポインタを理解したプログラマでなければ大規模なプログラムを書くのは難しく、初心者はもちろん中級者や上級者でも、メモリ管理ミスといったUNIXの爆発につながるバグは(少なくとも開発過程で)普通に作っていた。かく言う私も、2010年頃までレガシーシステムのメンテをしていたことがあり、慣れないmacOS Classic上でCやPascalのプログラムをCodeWarriorで書いてSIGBUSやSIGSEGVと戦ったことを覚えている。あれがネオサイタマなら私は1000回は死んでいただろう。

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UNIX爆発時代のシステム開発

UNIXが爆発するようになったことで、それまでの方式によるシステム開発は困難になった。Y2K以降のシステム開発は、ダサくても遅くてもいいから確実に爆発せず確実に動くシステムの上だけで新しいシステムを組んでいくことになるだろう。言い換えれば、ネオサイタマのコンピューターは2000年を境にかれた安全なプログラムをつぎはぎすることでしか動かせなくなったのだと考えられる。

ここで2000年頃のインターネットの状況を振り返ろう。当時はWWWやHTMLブラウザは黎明期でセキュリティホールは空き放題であった。OSとアプリの分離も不十分で、アプリがOSを巻き込んで落ちるなど日常茶飯事だっだ。我々の世界ではエンドユーザはセキュリティホールがあってもせいぜいエッチ・ピクチャーの閲覧歴が晒されて社会的オナーを失う程度で済むが、ネオサイタマではブルースクリーンの代わりにUNIXが爆発することになる。言い換えればウェブブラウザはY2Kの直後からいつ爆発してもおかしくない危険なプログラムになり、デバッグしようにもそもそもデバッグすることすらUNIXの爆発で困難、そういった時代になっているわけである。

そうなった以上、ネオサイタマの住人たちはその中で枯れた技術であるIRCを引っ張り出して来ざるを得ないと言う状況になったと想像される。シンプルでメンテナンスも容易なIRCをベースとして、その上でBASIC言語のような爆発しにくいシステムのマクロ組む、これがUNIXが爆発時代におけるまともなインターネットの唯一の方法であっただろうと想像できる。

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UNIX爆発時代の魔法使いたち

もちろん、ポストY2Kの時代においても、アセンブラ等より深い層を基盤としたシステム開発は完全に停止したと言うわけではない。ウィッチあるいはコードロジストと呼ばれる特殊な開発者がそれに取り組んでいた。彼・彼女らがポインタと言う概念を理解していたと言うだけで魔法使いとして認識されていた事は想像に難くない。

そしてもともと我々のプログラミング業界でも技術者は魔法使いに例えられがちである。偉大なエンジニアはしばしばウィザードと呼ばれる。またC++言語のテンプレートメタプログラミングと呼ばれる分野は、普通のプログラムと同じように見えて、実は内部の挙動をガラッと変えてしまうと言う行為をするため、界隈では黒魔術と呼ばれる。黒魔術と呼ばれる意味合いは、すごいと言う称賛の意味と、最初の作者以外に挙動が分かりにくくなりメンテナンスが困難になるからやめろと言う非難の意味の両方が含まれているのだが、ネオサイタマのウィッチがそう呼ばれる理由におそらく似たようなものではないだろうか。

普通の人は理解しているレイヤーの1つ下のレイヤーに潜り、上のレイヤーの通常の挙動自体を書き換えてしまう行為はプログラマの間では(邪悪な)魔術と呼ばれるが、そもそも我々の「魔術」に対する認識も同じようなものではなかろうか。おそらくニンジャの使うジツも、現実世界から1つ下のレイヤーに潜り、現実世界を作る法則性自体を書き換える行為ではないかと考えられる。そしておそらくそれは、ハンカバやコルヴェットら魔術師も、ホリイらウィッチ/コードロジストも、ニンジャたちも、実のところ同じ根源を有しているのではなかろうかと想像する。

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※これはニンジャ自由研究っぽいですが、そこまで深く考えて書いているわけではないのでコンペからは外します




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