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せっかちな社会

私はよく人にせっかちだと言われる。

子供の頃から何事も早くしたいという
気持ちは強かった記憶があるが、
この10年ぐらいで人からせっかちと
言われる機会が増えた気がする。

せっかちな性質故に失敗することは
時々あるのだが、
基本的には速く前に進むという意味で
私はこの性質が気に入ってる。

しかし、時々私以上のせっかちを見ると
さすがにどうなんだろうと思うことがある。

まさに昨日こんなエピソードがあった。

昨日はクリスマス本番の25日である。
イブの24日が土曜日だったので
こちらのほうが盛り上がる雰囲気はあったが、
あくまでクリスマス本番は25日。

我が家でもケーキをいつ食べるかと
家族で議論になったのだが、
イブにケーキまで食べてしまうと
25日は全く普通の日曜日になってしまうということで
25日ケーキを食べることになった。

私が住む田舎町にはケーキ屋は実質一軒しかない。

ケーキはどうしても作って時間を置くと
美味しくなくなるので、
昨日近くのケーキ屋に買いに行くことにした。

ネットで開店時間を調べて
その時間に娘と二人で店に向かったのだが、
なんと日曜日休業と張り紙が貼られていた。

昨日はクリスマスである。
ケーキ屋が稼ぐべき日であるにも関わらず
定期休業は揺るがなかったようである。

ショーケースに並ぶケーキを見たかったらしく
しょんぼりする娘。

仕方がないので、近くのスーパーで
ケーキを買うことにした。

一応妻に了承を取るために電話をかけると、
娘にクリスマスのお菓子の入った詰め合わせを
買ってあげてほしいと言われた。

娘が好きなプリキュアのお菓子詰め合わせが
お店の入り口付近に置かれているらしい。

そこから移動してスーパーに着き、
早速ケーキコーナーに向かうと、
驚いたことにケーキは通常仕様のものしか
(ヤマザキのカットケーキ)
置かれていなかったのだ。

妻曰く、間違いなく24日には置かれていたらしいが
昨日は既に無くなっていた。

背に腹は変えられないので、
ヤマザキのカットケーキをカゴに入れ、
娘のプリキュアのお菓子詰め合わせを
買いに行くことにした。

すると、その棚の前で店員さんが
何やらセッセと作業しているではないか。

何をしているのかとのぞき込むと
なんとクリスマスのお菓子詰め合わせを
箱に片付けているところであった。

ケーキ屋の開店時間の話なので
これは午前10時の話である。

12月25日の午前10時といえば
これからまだ多くのお客さんが店に来て
買い物をするはずである。

ところが、既に店はクリスマス仕様のものを
撤去し始め、お正月仕様に変えていたのだ。

店員さんに声をかけて既に箱に入れられた
お菓子詰め合わせを出してもらい、
娘は無事狙いのモノをゲットしたのだが、
これはあまりにせっかちすぎはしないだろうか。

確かにクリスマス仕様からお正月仕様に
切り替える労力は大変である。

それは十分に理解はするが、
それにしてもあんまりである。

ではなぜこんなことが起こってしまうのだろうか。

それは、ビジネスの世界では
せっかちが基本になっているからではないかと
私は思うのだ。

これはマーケティングを少し勉強してみても
わかることだが、
顧客のニーズが見える形で顕在化してから
対応しても遅いのだ。

顧客ニーズが見えない状態から
いかにそれを予想し、
そのニーズを満たすものをタイミングよく
提供するかが大事なのだ。

人を魚に例えるようではあるが、
釣りに似ているともいえる。

釣りは魚が食べたいと思うタイミングで
的確にエサを目の前に落とさなくては
決して魚を釣ることはできない。

そのタイミングを適切に予測し、
魚に的確にエサを食べさせるように
誘導するのがマーケティングなのである。

今世の中にある多くの企業は
このようなことを当たり前にやっている。

つまり、これは言い方を変えれば
ビジネスの世界では皆がせっかちに
なっているということなのだ。

子供がのどがかわいたと言う前に
お茶を差し出すような文化が、
ビジネスの世界では当たり前になっている。

果たしてそれが自然かと言われれば
私には答えはわからないが、
私たちが自分でモノを選んで
買おうとすることは
実は誰かの思惑でそう誘導されただけかもしれない。

そう思うと、なんとも不気味だとは思わないだろうか。

気づかないうちに私たちは
せっかちな環境に放り込まれ、
その中を泳いでいるのだ。

私はその中で少しだけ人よりも
早く行きたがるだけに過ぎない。

日ごろあまり意識はしなかったが、
今回のエピソードは改めて
私たちが生きる社会のせっかちさを
教えてくれた。

ちなみにヤマザキのカットケーキを
買って帰ると妻は不満そうであったが、
夜に食べてみると想像していたよりも
何倍も美味しかったらしく、驚いていた。

次からはヤマザキのカットケーキで
いいのではないかと来年のことを思う私は、
やはりせっかちなのであろう。

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