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ブックレビュー「影響力の法則-現代組織を生き抜くバイブル」

(通常ブックレビューは私のプライベートnoteであるKeith Kakehashi名義に掲載していますが、本レビューはHIRAKUコンサルタンシーサービシズの業務にも関連しますので重複して掲載しました。)

冒頭の写真が色あせているため、古書の紹介かと思われた方もいるだろうが、本書の日本での初版は2007年と15年ほど前に出版されている。

ちょうどその頃から、どこのMBAも人材開発会社も言い始めたのが影響力(”Influencing”)。組織がフラット化し、専門化が分化し、Project単位でAd-hocに短期的なPurposeを持って集まるチームで仕事をするようになると、それまでの階層別組織やCommand & Control型のLeadershipでは人は動かない。その際に必要とされるのが影響力だ、とどこでも言い始めた。

本書のOriginal Titleは”Influence without Authority”。権威で人を動かすのでは無い、いやむしろ権限を持たなくても影響力は発揮できる、という日本語タイトルよりも強いメッセージを感じる。

影響力を発揮しようとしてもうまく行かないことはある。相手が非協力的だ、信頼関係ができていない、相手との関係が良好で無い、相手とのパワーバランスが不均衡等。しかし、多くの場合人を動かそうとしている自分の側に障壁があることが多い。

影響力を発揮する術を知らない、相手側に落ち度があると決めつける、相手からの反応が不安、何のために働きかけているかが曖昧…

本書ではこういった障壁を乗り越えようとするためのガイドラインを紹介しているが、そこではレシプロシティ(互恵性)の原則、すなわち「人にして欲しいことがあるのなら、自分から先にしてあげなさい。そうすれば人は動いてくれる」というギブ・アンド・テイク、「よい行動には見返りが、悪い行動には報復が戻ってくる」というほとんどあらゆる文化にある社会通念がある。

そしてそのガイドライン=法則として次のようなものが挙げられている。

1. 相手が味方になると考える
2. 相手に影響を及ぼす目標を明確にする
3. 相手の世界を理解する
4. 相手とのカレンシー(交換可能な価値)を見つける
5. 関係に配慮する(対人関係とワークスタイル)
6. 目的を見失わない

影響力の法則-現代組織を生き抜くバイブル

本書ではこの法則について事例を挙げながら、本来とるべき行動が語られている。

あらゆる文化にある社会通念のレシプロシティに「法則」が必要なのは何故だろうか。それはそれだけ実社会での実現が難しいからだろう。モデルで考えられるほど人間関係はシンプルでは無いし、色々なノイズもある。一時的にはWin-Winの関係だったものが、長期的には破綻することもあるだろう。

「持ちつ持たれつ」のバランスは決して常に50:50では無い中、アンバランスを放置しているとどこかで歪が生じる。成熟した人間としてレシプロシティを実現するには上記のような技術的にも見える法則の遵守の前に、人間関係を維持するのに不可欠なAuthenticity(真正さ)を発揮するためのVulnerability(開かれた弱さ)とCompassion(共感)が必要なのではないかと思われてならない。


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