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Xデザイン学校 2024年度マスターコース振り返り #3(ビジョンとパーパス)

Xデザイン学校のマスターコース3回目のテーマは「ビジョンとパーパス」。前回は提案先企業のビジネスリサーチに取り組んだが、今回は自身のビジョンリサーチを行い、そして来月は顧客のユーザーリサーチと、3つの視点から未来の行き先と行き方を探索している。

前回と今回は(企業や自身への問いから)未来のことを見つめて、次回は(顧客への探索から)現在のことを見つめる。そのギャップを見つけることで今後少しずつ「ビジネスの輪郭」が見えてくることになりそうだ。一般的なビジネススクールではデスクリサーチだけでKey Success Factorを定義しがちだけど、それでは他人事なコンサルで終わってしまうし、何より絵に描いた餅でドライブしないのだと思う。やっぱりそこに「自分ごと」になる思いを重ねてこそ、共感が生まれて「一緒に船に乗ろう」という話になるのだと思う。

転職とビジョンデザインは似てるのかも

ところで自分は過去何度か転職をしているのだけど、転職活動を重ねるうちに、転職ってこの2つを伝えられるようになり、それが企業の思いとハマっているかを大事にするといいのかなと思うようになった。

  • (人生観やキャリア観を踏まえて)自身が実現したい世界・社会とは何なのか

  • そのことと企業のビジョンやパーパスを重ねたとき、自身がその企業でできることは何なのか

でもこれって前回と今回やったビジネスリサーチとビジョンリサーチそのものだよなぁということに気づく。言ってしまえばビジョンリサーチとは自身の履歴書を書いてるようなもので、今回のXデザイン学校での課題にしても、最終的に提案するものが自身にも相手にもハマり本気でドライブできるのなら、転職すら考えてもいいんだろうな、そういう気持ちで取り組んだ方がきっと楽しいよなと、うっすら思いながら今回のワークを取り組んでいた。

そう捉えると、自分自身が実現したいこと・企業でできることをきちんと言語化できている人って、きっとコンサルとして強いのだろうし、ハマる限りどんな所でも仕事できるんだろう。ある人が「職務経歴書とポートフォリオは定期的にアップデートするのがよい」と言っていたけど、今日のワークを受けて、ちゃんとそれはやっておこうと思った。

スパーリングによって解釈・洞察を深めあっていく

なお、今回はもちろん転職ではなく企業に対する提案がゴールであり、自分の思いだけではなくチームとしての「将来ありたい世界」をみんなで描きあう必要がある。自身の志だけでなく、チームメンバーの志を知り、共感しあい、一緒に実現したい!という未来の姿を「ビジョン」に乗せていく。そのためのワークとして、まず各々が描いた「将来ありたい世界」を深め、強くするための「スパーリング」を行った。

講義終了後、講義で取り上げられていたロベルト・ベルガンティの「突破するデザイン」(2年ぐらい積ん読してた)を読んだのだけど、このスパーリングについて色々考えさせられた。

ベルガンティは、意味のイノベーションの原則である「内から外へ」と「批判精神」に至るプロセスの一つとして、スパーリングを紹介している。講義のなかでも「大事なのは、スパーリングは相手を倒すことが目的ではなく、互いの(仮説の)弱さを見つけてに強くしあうことが目的であるということだ」と山崎先生は話していたが、もう一つ大事だなと思ったのは「似たような方向を向いた」者をスパーリングパートナーにするということだ。

考えてみればこれって何かしらプロジェクトを立ち上げる時にもよく似たことをやっている気がする。いまとあるプロジェクトにデザイナー的関与をしているのだけど、それもやりたいと思い立った人がそのコンセプトの壁打ちを自分に依頼してきたことから始まった。壁打ちでは本人を否定するとかはせず、本人が本当にやりたいことを一緒に言語化するのを手伝い、その言葉を共有しあう人たちの数が少しずつ増えていって、一つのプロジェクトになった。

というかうまくいくプロジェクトって大抵そんな感じだよな。あまり意識してなかったけど、もっといろんなプロジェクト立ち上げ期の壁打ちをベルガンティのいう批判精神(解釈・洞察を共創的・創造的に深めていくというイメージの方が合ってる気がする)を意識しながらやりあえるといいのかもしれない。ただし当然相手にも同様のマインドが求められるので、最低限の心理的安全性を確保しあえる相手じゃないと難しそうだ。

ちなみに今回のワークでは、まだ他メンバーのモチベーションや思いを知るところで頭がいっぱいになり、「批判精神としてのスパーリング」には殆ど至らなかったのだけど、それでもチームメンバーとの心理的安全性の構築を最優先にしてよかったと思っている。

今回のワークではあくまでチームメンバーどうしが大切にしていることを尊重しあうこと、そして思いに対する共通ベクトルを朧げながら見出すこと、この2つを達成することの方が大事だとポジティブに捉えることにしたw

来週またチームでラップアップをすることになったのと、8月のフィールドワークではどうやら全員と都内で出会えそうなので、そこで色々とチームメンバーどうしの相互理解を深めながら、しっかりスパーリングしあえる関係を作っていきたい。

「遊んでる」と思われるぐらいがちょうどいいのかも

で、この心理的安全性について、講義を聴いていて面白いなぁと思ったのは、そこに「クリエイティブ・マインド」と「プレイフル・シンキング」が加わることで、クリエイティブなチーミングができるという山崎先生の話だった。クリエイティブ・マインドやプレイフル・シンキングというのは、つまるところ仕事の仕方・姿勢なんだろうな。

自分が心地よくて上手くいってるなーと感じる仕事って、大前提としてチームがフラットな関係で、何かしらチームとして明確な目標を共有できていて、そのために各々が指示を受けるまでもなく役割を持ち、その役割を尊重し合いながら、よいやり方について話し合って進め、一緒に試行錯誤しあい、成果に向かっていることを実感しあってる、そういう状態であることが多い。

そういう仕事のほうが、徹底的に数字や期日を管理されている仕事よりも確実にクリエイティブの質が高く、自律的になれるからチームの成果が自身のポートフォリオとなる。自律的だからちゃんと振り返れて次のアクションを考えることができる。

で、そういう仕事って「管理される」という概念とは縁遠い位置にあるからか、大抵周囲から「遊んでる」と思われる。人によってはやっかんでくることもあるのだけど、でも「遊んでる」と思われるくらいがちょうどよいと思っている。

でも余裕のない職場ってそういうプレイフルでクリエイティブな余白を心理的に許してくれない。前職時代、働き方改革といいながら残業規制が超絶厳しくなって、とにかく時間内に詰め込んで仕事をしなきゃいけないみたいなカルチャーが蔓延したことがあって、ものすごく酷い息苦しさを感じたことがあった。ああなってしまうと退職者も増えるだろうし、却っていろんな事故や事件も起きやすくなる。いま世間で騒ぎになっている不祥事とかって、まさにプレイフルでクリエイティブな余白のなさに起因しているところが大きいんじゃないかと思う。

クリエイティブ・マインドとして山崎先生が示した5つの「みらいを想うことを楽しむ」「人の笑顔を楽しむ」「視点を変えて本質の追求を楽しむ」「あいまいと探索を楽しむ」「すぐに形にすることを楽しむ」、これらが誰かに言われずとも自然とできているというのは、つまり心理的安全性が保てているということなんだと想う。そういう仕事をデザイナーとして大事にしていきたいし、自分も潰してしまう側にならないように気をつけたい。

志を高く持つこと

最後に。「将来ありたい世界」を描いていくうえで大事だなと思ったのは、レビューでいただいた「志を高く持てていると、付いていきたいなという気持ちになる」という日野さんの言葉だった。志を高く持った自覚は正直なかったのだけど(いや、他のメンバーはあったのかもしれない)、個人の問題意識を国境をこえた話として拡張させたことで、そう捉えてもらえたのかもしれない。

実際に「将来ありたい世界」を描く過程で思ったのだけど、自身の原体験の範囲だけでありたい姿を捉えようとすると、どうしても世界観が小さくなりがちというか、山口周氏が「クリティカル・ビジネス・パラダイム」でいう「小さな個人的問題」のままに留まるのだろうなと思った。

山口周氏の言葉を借りれば、志を高く持つというのは、自身が持つ強い動機を「遠くの他者」や「未来の他者」も持ちうる動機へと拡張させることで「大きな個人的問題」へと転換させるということなのだろう。そして、その解決に至るまでにのし掛かる途轍もなく大きなハードル(バリア)をこえていくことが、ベルガンティのいう「意味のイノベーション」に繋がり、それが文化的な共創によることでマンズィーニのいう「ソーシャルイノベーション」にも繋がっていくのだろうと捉えている。

でも、これを書いていて自分自身がフワフワしているように、「志を高く持とう高く持とう持とう・・・」と意識していると、なんとなく地獄のミサワみたいな感じになってしまいそうなのでw、あまり意識しすぎることはしたくないのだけど、でもビジョンをサービスのソリューションと勘違いしないことぐらいは、意識しといた方がいいなと思った。

山崎先生が「ビジョンとは出来る・出来ないじゃなくて、北極星のようにみんなで目指していく方向を決めるもの」と言っていた。チームの北極星をみんなで決めていく。今回のワークである程度の輪郭は掴んだと思うので、次回の講義までにみんなで(スパーリングしながら)言語化しあえたらいいな。

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