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八勝館のキラーコンテンツ 大襖のこと

名古屋に八勝館という老舗料亭があります。
そのキラーコンテンツは御幸の間の更紗が貼られた大襖です。これがもう素敵すぎてたまりません。御幸の間は堀口捨己により設計された近代の和室で、大襖の意匠も堀口が大変こだわったものです。

以前に調査した建物の内容は次のとおりです。
八勝館は創業1925(大正14)年の老舗料亭です。先先代が旅館兼料理店を開業しました。八勝館の名の由来は丘陵であるこの地から八つの佳景を遠望できたためといわ言われています。愛知県近代和風建築調査報告書には、「もと材木商による建物だけに、すべての用材を吟味してつくられるが、加えて、ほぼ室名に応じて、欄間・引手金物・釘隠などに趣向を凝らした意匠が多様にうかがえ、個性的な各空間を形成しており、まさに近代和風建築の博物館である」と記載されています。
所在地は名古屋市昭和区広路町石坂29。構造概要は木造平屋建入母屋造と切妻造・桟瓦葺と藁葺。建築年は1877(明治10)年〜1887(明治20)年頃で、1937(昭和12)年、1950(昭和25)年、1958(昭和33)年に一部改修を行っています。設計者は、御幸の間と桜の間は堀口捨己、大広間は城戸武男建築事務所・城戸久です。大工は、残月の間・御幸の間は森春吉。なお、1951(昭和26)年に御幸の間は日本建築学会賞を受賞し、さらに1999(平成11)年にはDOCOMOMO 20選に選定されています。愛知県近代和風建築調査報告書には、「「堀口好み」の座敷で、同時に桂離宮の雅を漂わせて、和風を近代的に昇華させた画期的作品」とあります。

参考文献
・愛知県教育委員会、2007、112、愛知県近代和風建築調査報告書

御幸の間の大襖は八勝館のキラーコンテンツですから、八勝館が雑誌の特集などで紹介される際には大襖の写真はマストアイテムです。写真を見るうちに私はどうしても実物が見たくて見たくて、個人的に見学をお願いしたのですが叶わず、ランチ付き見学会に参加しました。実物を観察しますとそれは藍と紫の絞染のある唐草模様の印金(截金)更紗で、写真では伝わらない圧倒的な存在感がありました。堀口がどんな意図でこの裂を選んで貼ったのか、その裂にはどんなストーリーがあったのか、私はもう知りたくて知りたくて・・・。その後、「近代和風建築にみる室内装飾織物についての研究〜地袋・天袋・襖を中心に〜」という論文にしてみました。大襖が私を室内装飾織物という世界の旅に招待してくれた建物がたりです。

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