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1.序論 1-3.研究の範囲

研究の範囲はこんな感じです。

1-3.研究の範囲
本研究における「近代和風建築」の定義と「室内装飾織物」の範囲については次の通りである。
まず「近代和風建築」についてであるが、「近代」と「和風」という言葉はその視点により各種の考え方がある。例えば初田は「幕末・明治以降、近代に建設された和風建築を指して近代和風建築と呼んでいる」(初田、2001、4)という。「和風」という言葉は、明治以降に日本に新しい建築様式が入ってきたことにより、新しい様式を洋風と呼ぶ相対の言葉として誕生した言葉である。吉田は次のように述べている(吉田、2017、004)

新しいものが入ってくる以前なら、それと区別する言葉は必要でない。在来構法という呼び名がそうであったように、和風もまた、同様の状況のなかで誕生した言葉なのであろう。そう考えると明らかに明治以降のことになる。

文化庁では近代の建築のうち、伝統的手法・技法によるものを「近代和風建築」と称している。1992(平成4)年より「近代和風建築総合調査」に着手しており、その調査対象は次の通りである(文化庁文化財部建造物課、2001、40-41)。時期は近代(1968年から1945年まで)に建設された諸建築のうち、次の条件をもつものを対象にしている。特色は次の通りである。
(1)伝統的様式や技法で建てられた木造建造物
(2)一部洋風の様式や技法が用いられているが、主に伝統的様式や技法で建てられた木造建造物
種類は次の通りである。
(1)住宅等/住宅、民家、旅館、料亭、商店、別荘等
(2)公共建築等/役場、学校、病院、銀行、劇場、裁判所、駅舎、公衆浴場、事務所、倉庫等
(3)宗教建築等/寺院の本堂・庫裏・客殿・寺務所、神社の本殿・拝殿
(4)社務所等
(5)その他/以上のものと一体となって保存されるべき門、塀、蔵等を含む

本研究では文化庁の「近代和風建築総合調査」の調査対象を「近代和風建築」の定義とする。ただし、各都道府県教育委員会が刊行した「近代和風建築総合調査」には昭和20年以降の調査対象が含まれている場合もある。その場合は県の調査対象範囲を優先することとする。
また、本研究で取り扱う「室内装飾織物」については次のとおりである。室内を装飾する構成要素のうち、襖、地袋および天袋等の小襖、天井、壁面、その他の表面に使用されているものとする。織物は、織、染、刺繍といった染織技法によってつくられたもので、画布として使われているものは除くこととする。

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