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よせぎれのお話

祖母や母が大切に保管している古い着物の裂(きれ)があります。昔は布が貴重品で着なくなったからといって簡単に捨てたりはしなかったようです。様々な染織技法を駆使した貴重な布は権力の象徴であった時代もあるようです。そんなわけで、古い人たちは着なくなった着物をほどいて裂として大切に保管し、活用してきました。まさに現代のファストファッションと対極にある価値観だと思います。

活用例としては、穴のあいた着物に裂で繕い物をしたり、裂を寄せ集めて新たな着物を作ったり、額装、表装などに使用したり、また現代では小物や洋服にリメイクしたりとさまざまです。中でも私は、裂を寄せ集めた「寄せ裂」作品に心をわしづかみにされました。心わしづかみ作品の一つに岐阜県にある旧川上貞奴別荘の田舎家棟の藁葺きの洋間にある天袋の小襖があります。これについては、またゆっくりと書いていくつもりでいます。

私も祖母や母から譲り受けた古い裂を大切に保管しています。それらの裂を母の記憶があるうちに聞き取り調査しまとめておこうと考え、裂の見本帳「こぎれ」にまとめてみました。そして、これらの裂を活用して書や画と組み合わせた作品を制作中。さらに、2021年4月より日本中の箪笥の中に眠っている着なくなった着物たちと、腕ききの表具師さんなどの職人さんたちを繋いでアップサイクルデザインする「よせぎれ工房」の活動をスタートしたいと考えています。

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