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どんぐりを食べる自由研究

 お米づくりを自分でやってみて、その大変さがよくわかったからでしょうか、もっと簡単に主食を得られないものだろうかと考えるようになりましたた。

 そういえば、昔の人はどんぐりを食べてたんだっけ。どんぐりなら、稲みたいに毎年種まきして、田植えして、何度も草刈りして…ということも必要ない! 一度木が育ってくれたら、あとはどんぐりを拾うだけ? やってみたことはないけれど、お米よりずっと簡単そう! と思い立ったら、早速実験にとりかかりました。

 まずは、どんぐりの木を探すところから。

 そうだ、どんぐりの木ならうちの庭にも生えている。あれは何のどんぐりだろう? どんぐりといっても、小さいのや大きいの、かぶっている帽子(「殻斗」というらしい)もいろんなのがあります。食べるにはどれが向いているのだろう?

 調べてみると、どんぐりにもアクの強いのとそうでもないのがあって、アクが比較的少なくて食べやすいのはマテバシイやスダジイあたりらしい。そういえば、小学生の頃にシイの実を食べたことがありました。神社かどこかで、そこに居合わせたおじさんが「シイの実食べれるで」と教えてくれて、拾って生のまま食べてみたら、たしかに食べても大丈夫そうな味がして、お腹をこわすこともありませんでした。

 というわけで、自転車で出かけるとき、ついでにシイの木を探し回りました。ところが、どんぐりの木はあちこちに生えているものの、カシ類やクヌギが多く、なかなかシイの木には出会えませんでした。神社にも、どんぐりの成る木がたいてい育っていますが、ぼくが訪れたなかではカシの木が多く、シイの木にはなかなか出会えませんでした。

 あちこち探し回り、やっと何カ所か、マテバシイやスダジイの木が生えている場所を見つけました。マテバシイのどんぐりは、表面に白いロウのようなものがついていて、弾丸のような形をしています。スダジイのどんぐりは殻斗の形がひらひらしたスカートのような独特な形状で、すぐに見分けがつきます。マテバシイやスダジイのどんぐりを見つけ、嬉々としてどんぐりを拾い集める横を通行人が不思議そうに、もしくはいぶかしげに通り過ぎていきましたが、なるべく気にせずにどんぐりを集め続けました。

 拾い集めてきたどんぐりをどうやって食べるか、ネットや本で調べてみました。アク抜きの方法や手順はいろいろあるようです。縄文時代は、川で流れる水にさらしてアク抜きしていたという説もあるようだけど、うちの近所の汚れた川水に浸けておく気にはなれません。アクの強いどんぐりは水に何日も浸けておく必要があるのだろうけれど、それはアクの強い上級編のどんぐりの場合です。スダジイは生のまま食べてもほとんど苦味を感じないし、マテバシイも、ただフライパンで炒っただけで食べることができました。スダジイは比較的甘みが強くて、どちらかというと主食というよりもおやつ感覚。主食としてのどんぐり、という観点からすると、一粒のサイズも大きくて食べごたえがあるマテバシイのほうが適しているように思いました。

 どんぐりの下ごしらえは、いろいろ試してみた結果、次のような方法に落ち着きました。まず、拾い集めてきたどんぐりを水に入れ、浮いてきたものを除外します(中身が虫に喰われていたり熟していなかったりしてスカスカなので)。次に沸騰したお湯で五~十分ほど茹でてから、天日干し。それから土鍋で炒ると、パチパチとひび割れてきます(割れないものもある)。炒ったどんぐりの殻をペンチで割って、中身を取り出します。ここまでで、基本的な下ごしらえ完了! これを粒のままクッキーなどのお菓子に入れたり、ご飯と一緒に炊いてどんぐりご飯にしたり。

 ただ、炒ったどんぐりは、あったかいうちはそれなりに柔らかいのですが、冷めると固くなります(温め直すとまた柔らかくなるけれど)。そこで、粒のままではなくて粉にしておいたほうが食べやすいことがわかってきました。炒ったどんぐりを、少し冷ましてから電動ミルにかけると簡単に粉末になります。これをクッキーやパンケーキなどの粉もののおやつに混ぜると簡単に使えて、滋味深いどんぐり風味が楽しめます。ぐんぐりのグラッセが乗ったどんぐりクリームのパフェ、どんぐり豆腐、どんぐり甘酒、どんぐりの黒焼きパンなど、いろいろなどんぐり料理をつくってみました。

どんぐりパフェ

 どんぐりを食べることに、なんだか不思議な魅力を感じます。お米や野菜のように、自分で育てて食べるのもうれしいけれど、拾ってきたどんぐりで自分の身体を養えるというのは、天の恵みをもっとダイレクトなルートでいただいている感じがするのです。今の世の中、お金がないと食べものを得にくいけれど、どんぐりはあちこちに落ちています。自分の体を動かして、ちょっと手間をかけ、工夫すればお金をかけずに身体の栄養を得られる、というのは面白いことです。

 ところで、どんぐりやいろんなナッツ類や果物など、食べられる実が成る木を公園の木や街路樹としてあちこちに植えるのはどうでしょう? 食べられるものがたくさん実っていて、食うに困らない街があったら素敵だなぁと想像します。

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